つぎはぎ人形の僕は、魔法学校で夢を叶えます

まいるん

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魔法学校

第4話 ありのままの面接

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魔法学校の門は、思っていたよりもずっと大きかった。

高い塔。
広い石畳。

たくさんの人形が集まっている。
俺はその端に立っていた。

……帰りたい。

「入学試験は面接だけ」

母さんはそう言っていた。

でも。

「魔法を与えるかどうかを決める試験」

とも言っていた。

魔法は危険にも使える。
だから、この子に魔法を与えてもいいのか。
それを学校が判断するのだと。

そもそも俺、無愛想だし。
取り繕うのとか無理だぞ。

……俺、大丈夫か?

「……はぁ」

思わずため息が漏れる。
その時だった。

「ねえ!」

元気な声が横から飛んできた。

振り向くと、そこにはぬいぐるみの人形が立っていた。

柔らかそうな布の身体。
大きな丸い目。
チェック柄のワンピース。

「緊張してる?」

俺は顔を逸らした。

「……別に」

「してる顔だよ!」

その人形はにこっと笑う。

「私リリ!よろしくね!」

……元気だ。

「……ノエル」

小さく名乗る。

「ノエルかぁ!いい名前だね!」

距離が近い。
苦手なタイプかもしれない。

その時、近くでひそひそ声が聞こえた。

「……あいつ」

「腕と脚、親のだろ」

「奪ったって話」

「怖いよな」

やっぱりここでも、聞こえてきた。

聞こえないふりをする。
今までだってそうやってやり過ごしてきた。

するとリリが俺を見た。

「ねえ」

「なに」

「あの人たちが言ってるの、本当?」

俺は少し黙った。

「……知らない」

それだけ言う。

「そっかぁ」

リリはうーん、と考え込んでこちらを見てきた。

「でもさ」

そして、ぱっとした笑顔で言った。

「ノエルってそんな人に見えないけどな!」

俺は思わずリリを見る。

「……なんで」

「なんとなく!」

なんだそれ。
でも、不思議と悪い気はしなかった。

「次の方ー!」

「あ、俺……じゃあ」

「うん、頑張って!」

うるさくて空気の読めないやつだったが、緊張が解けたような気がした。

よし、頑張るか。



意を決して面接室の扉を開ける。
中には三人の先生が座っていた。

「座ってください」

言われた通り椅子に座る。
先生の一人が言った。

「緊張していますか?」

「……少し」

先生は微笑む。

「大丈夫ですよ。難しいことは聞きませんから」

そしてさらににっこり微笑む。

の自分をお話しして下さいね。」

その完璧な微笑みは不気味にさえ感じた。

先生は机の上の紙に目を落とした。

「では、いくつか質問をしますね。」

俺は小さくうなずく。

「ノエルくんは魔法が使えたら何をしたいですか?」

「……えっ……それは、」

言葉に詰まった。上手く答えられない。

世界を救う?世界一強くなる?
そんな大層な目標なんて無い。

「……特にありません」

俺が答えると、穏やかな表情は崩さないまま、1人の先生が鋭く言った。

「いえ、それは嘘ですね。」

……は。なんだ、この先生。

俺は嘘はついていない、と思う。

「ノエルくん、君はちゃんと考えています。」

まるで俺の全てを見透かされているような感じがした。

「何で、そんなこと」

「大丈夫です。ここにいる先生達はノエルくんの全てを受け止めます。」

分からない。
この先生達が何を考えてるのか。
俺が本当は何を考えてるのか。

「もう一度言いますね。」

先生は追い討ちをかけるように言う。

を曝け出して下さい。」


俺は言葉を探した。
逃げようと思えば、まだ逃げられる。

でも――

「……俺みたいな人形でも」

ゆっくり言う。

「壊れすぎても、生きていけるような」

少し息を吸う。

「そんな世界にしたい。」

一度言葉を発すると堰が切れたように俺は話し出した。

「俺は、本当は生きられない人形のはずだったんだ」

俺は何を言ってるんだろう。

「父さん達は何も言わないけど……」

喉が詰まる。

「俺の両腕と両脚は、本当は……父さんと母さんのものだったはずなんだ」

胸が苦しい。

「俺なんかのせいで」

声が震える。

「俺が壊れてたから」

言葉が止まらない。

「捨てられるはずだった俺を……」

息を吸う。

「それでも、2人は助けてくれた」

父さんの顔。
母さんの顔。

頭に浮かぶ。

「だから」

俺も――

「父さんや母さんみたいに」

なんとか呼吸を整えようと一呼吸する。

「捨てられる人形も」

無謀なことなのかもしれない。

「壊れた人形も」

馬鹿なことなのかもしれない。
だけど

「全部……」

少しだけ声が震えた。

「救いたい。」

これが本心だ。
気がつくと涙が出ていた。
俺、なんでこんな熱くなってんだろ。


部屋は静かだった。
少しの沈黙の後、先生の一人が小さく頷いた。

「教えてくれてありがとうございます。それは、素敵な夢ですね。」

はっとして先生達の顔を見ると、全員微笑んでいた。
さっきまで不気味だと感じていた笑顔は、今は素直に受け入れることができた。

「それでは、次の質問行きますね。」

それ以降、何を質問されたのか何と答えたのか分からない。



「以上で、質問を終わりますね。ありがとうございました。」

あっという間に終わっていた。

面接室を出て、我に返る。

俺、面接で感情むき出しにしちゃったよ。
後半何言ったか全然覚えてない。
最悪だ。完っ全に落ちた。



「あ、次は私だっ!」

リリが元気よく入っていく。

「え、魔法で?うーん。なんだろうな。」

廊下によく響く声。

「なんか楽しそうなことしたいっ!」



よし。

あいつも落ちたな。
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