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3話
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小学5年生の冬―――――――――
テレビをつける。すると、前つけた人が大音量でテレビを見ていたのか、すごく馬鹿デカい音がテレビから流れてきた。
「うぁ!!」
「ちょっと~カルホ何でそんなに大きくするの~? 」
母もすぐさま反応する。
すぐにボリュームを10下げる。
「ごっごめんなさい。で、でもカルがしたんじゃないんだよ。今テレビつけたらこんなに大きくなってて……」
未だに右手は片耳を覆ったまま。そして、左の手のひらを横に振りながら、目で母に訴えかけている。
「あら、じゃあ誰がしたのかしらね……。はぁ~、もう~ビックリした!」
「ふ……はははっ。ははははは!お母さんの目、ギョってなってる!ギョって!!(笑)」
「ちょ……ははははっ。じゃあ、魚みたいになってたかしら?(笑)お兄ちゃんがよく真似するような」
「あはははは!!うん、ちょっとなってた!こんな感じに!」
「ちょっ……それはやりすぎよ~!はははっ……こら!(笑)」
ガッガチャッ
兄の部屋のドアが開いた。
母と私はすぐさま会話をとめた。兄のドアの開け方に驚いたのだ。すごく荒々しくて、怒りをドアにぶつけてるみたいだった。
「あ、洋一、もういいの?勉強は」
「……飯」
「ん?何??」
「……飯食いたいんだけど」
「あ……あぁ!ご飯か!もう出来てるから、ちょっと待っててね」
「………」
兄を一言で言うと冷血人間。私はそう思っていた。
兄は今年、有名私立中学校の受験をする。兄自身が決めたことでもあるけれど、それを最初に勧めたのは父だった。高度な問題を難なくこなす兄は、きっと家族の期待の星だ。でも、きっと私も来年この受験を勧められるに違いない。
自分で言うのもおかしいが、元々出来のいい子を2人も持つと、親は先行きのために上質な援助がしたくなるのかもしれない。そう思うと親の愛情が身にしみる。
でも、兄と張り合えるほどバカ天才ではないから、出来るだけ避けたいところだ。
受験のせいで作られた人間味のない兄の最近の言動は、私にとってすごく不快感を与え、そのことが兄への印象を悪いものへと変えているからだ。でも、その印象とは別に、尊敬もしていた。
「洋一、この前の塾のテスト1番だったって?」
「……あぁ」
「よかったじゃない!何で内緒にするの??昨日カルホから聞いて、お母さんびっくりしたのよ?」
「すごいよね!お母さん♪」
「ふっ。カルホまたお兄ちゃんのこと自慢してる。自分のことみたいに(笑)」
「いいじゃん。だってすごいんだから!お兄ちゃんは自慢だよ、カルの!」
「はははははっ(笑)あ!洋一もうご飯いいの??おかわりは?」
「いらない。もう腹いっぱい」
「そう?」
母がそう返事すると、兄は箸を置き、部屋へさっさと戻っていった。
ガチャ……バタンッ
「お兄ちゃん、勉強ばっかりだね……」
「うーん……あんなに張り詰めなくていいのにね……。ま、洋一っぽいと言えば洋一っぽいけどね!」
そう言って母は、食器を洗い始めた。
お母さんはお兄ちゃんが変わったことに気づかないのかな……。
受験前の兄はあんなにもだんまりとしてなかったのに。冷血人間と思うような人でもなかった。
そう思いはしたけれど、私は言わなかった。
「ん?カルホは勉強しなくていいの……?」
食器を洗いながら話しかけてきた母は、どこか悲しげだった。
「うん!さっき終わった」
「そっか。じゃあもう終わりなの??」
「え?まだしてた方がいいの……??」
「違う違う。何か……正直、カルホにはあそこまで頑張ってほしくないなって思って……」
「???……頑張ったら何かいけないことあるの??」
「ううん。頑張るのはいいことだって思ってるのよ。でもね、お父さんみたいに洋一がなってる気がしてね……。それはいい意味もあるんだけれど、お母さんとしてはすごく寂しいところがあるのよね」
「お父さんは悪い人じゃないよ、お母さん!仕事いっぱいして、お金だっていっぱいもらってて、会えたときはカルにいろいろお話してくれるよ?だから、お兄ちゃんもお父さんみたいになって、すごい出世してすごいえらい人になるよ!」
「……カルホ」
母は私のいる方に振り向いて、こっちを見ている。
「だってそうでしょ?今お兄ちゃん頑張ってるのは、大事なその一歩なんだよ。それに、寂しいって言うのはおかしいよ!今、お兄ちゃんは家にいるんだから」
「……はははっ。ははははは……。よかった」
「?」
「カルホがバカで」
「えええ!?何で!!??カルホだってテストで1番とるのに!?」
「え……いや、違う!そういう意味じゃなくてね!!」
「ひどい……」
「あははっ。あ!だから、違うって言ってるじゃないの」
「………」
お母さんの言ってる意味がわからない。お兄ちゃんのこと自慢してただけなのに。カルの考え方がおかしいの?お母さんの……お母さんの……。
「うっ……」
「あーー、んもう!泣かないの!(笑)」
「バカぁああああああ!!!!」
「はははははっ!!ちょっと……もう!泣かないで、カルホ(笑)」
なだめながらも母が私の方を見て笑っているので、それからさらに大泣きしてしまった。
テレビをつける。すると、前つけた人が大音量でテレビを見ていたのか、すごく馬鹿デカい音がテレビから流れてきた。
「うぁ!!」
「ちょっと~カルホ何でそんなに大きくするの~? 」
母もすぐさま反応する。
すぐにボリュームを10下げる。
「ごっごめんなさい。で、でもカルがしたんじゃないんだよ。今テレビつけたらこんなに大きくなってて……」
未だに右手は片耳を覆ったまま。そして、左の手のひらを横に振りながら、目で母に訴えかけている。
「あら、じゃあ誰がしたのかしらね……。はぁ~、もう~ビックリした!」
「ふ……はははっ。ははははは!お母さんの目、ギョってなってる!ギョって!!(笑)」
「ちょ……ははははっ。じゃあ、魚みたいになってたかしら?(笑)お兄ちゃんがよく真似するような」
「あはははは!!うん、ちょっとなってた!こんな感じに!」
「ちょっ……それはやりすぎよ~!はははっ……こら!(笑)」
ガッガチャッ
兄の部屋のドアが開いた。
母と私はすぐさま会話をとめた。兄のドアの開け方に驚いたのだ。すごく荒々しくて、怒りをドアにぶつけてるみたいだった。
「あ、洋一、もういいの?勉強は」
「……飯」
「ん?何??」
「……飯食いたいんだけど」
「あ……あぁ!ご飯か!もう出来てるから、ちょっと待っててね」
「………」
兄を一言で言うと冷血人間。私はそう思っていた。
兄は今年、有名私立中学校の受験をする。兄自身が決めたことでもあるけれど、それを最初に勧めたのは父だった。高度な問題を難なくこなす兄は、きっと家族の期待の星だ。でも、きっと私も来年この受験を勧められるに違いない。
自分で言うのもおかしいが、元々出来のいい子を2人も持つと、親は先行きのために上質な援助がしたくなるのかもしれない。そう思うと親の愛情が身にしみる。
でも、兄と張り合えるほどバカ天才ではないから、出来るだけ避けたいところだ。
受験のせいで作られた人間味のない兄の最近の言動は、私にとってすごく不快感を与え、そのことが兄への印象を悪いものへと変えているからだ。でも、その印象とは別に、尊敬もしていた。
「洋一、この前の塾のテスト1番だったって?」
「……あぁ」
「よかったじゃない!何で内緒にするの??昨日カルホから聞いて、お母さんびっくりしたのよ?」
「すごいよね!お母さん♪」
「ふっ。カルホまたお兄ちゃんのこと自慢してる。自分のことみたいに(笑)」
「いいじゃん。だってすごいんだから!お兄ちゃんは自慢だよ、カルの!」
「はははははっ(笑)あ!洋一もうご飯いいの??おかわりは?」
「いらない。もう腹いっぱい」
「そう?」
母がそう返事すると、兄は箸を置き、部屋へさっさと戻っていった。
ガチャ……バタンッ
「お兄ちゃん、勉強ばっかりだね……」
「うーん……あんなに張り詰めなくていいのにね……。ま、洋一っぽいと言えば洋一っぽいけどね!」
そう言って母は、食器を洗い始めた。
お母さんはお兄ちゃんが変わったことに気づかないのかな……。
受験前の兄はあんなにもだんまりとしてなかったのに。冷血人間と思うような人でもなかった。
そう思いはしたけれど、私は言わなかった。
「ん?カルホは勉強しなくていいの……?」
食器を洗いながら話しかけてきた母は、どこか悲しげだった。
「うん!さっき終わった」
「そっか。じゃあもう終わりなの??」
「え?まだしてた方がいいの……??」
「違う違う。何か……正直、カルホにはあそこまで頑張ってほしくないなって思って……」
「???……頑張ったら何かいけないことあるの??」
「ううん。頑張るのはいいことだって思ってるのよ。でもね、お父さんみたいに洋一がなってる気がしてね……。それはいい意味もあるんだけれど、お母さんとしてはすごく寂しいところがあるのよね」
「お父さんは悪い人じゃないよ、お母さん!仕事いっぱいして、お金だっていっぱいもらってて、会えたときはカルにいろいろお話してくれるよ?だから、お兄ちゃんもお父さんみたいになって、すごい出世してすごいえらい人になるよ!」
「……カルホ」
母は私のいる方に振り向いて、こっちを見ている。
「だってそうでしょ?今お兄ちゃん頑張ってるのは、大事なその一歩なんだよ。それに、寂しいって言うのはおかしいよ!今、お兄ちゃんは家にいるんだから」
「……はははっ。ははははは……。よかった」
「?」
「カルホがバカで」
「えええ!?何で!!??カルホだってテストで1番とるのに!?」
「え……いや、違う!そういう意味じゃなくてね!!」
「ひどい……」
「あははっ。あ!だから、違うって言ってるじゃないの」
「………」
お母さんの言ってる意味がわからない。お兄ちゃんのこと自慢してただけなのに。カルの考え方がおかしいの?お母さんの……お母さんの……。
「うっ……」
「あーー、んもう!泣かないの!(笑)」
「バカぁああああああ!!!!」
「はははははっ!!ちょっと……もう!泣かないで、カルホ(笑)」
なだめながらも母が私の方を見て笑っているので、それからさらに大泣きしてしまった。
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