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カネール
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「さてと…話とはなんですか?」
「うん…。私が、隠してる過去について。」
セインは驚かなかった。やはり、予想していたんだろう。
「前も言ったけど、ディルとは十年前からずっと一緒にいて、たまに彼と意識を交代してたりもしてたの。だって、ずっと私の中にいるだけなのも退屈だと思ったし。でも…それがまずかった。」
そう、彼と交代している間は、瞳の色が赤に変わる。シャーネさんから聞いて始めて知ったけど、リファリー家は悪魔根絶の指標を掲げていた。だからこそ、私の目を見てすぐに気付いたんだろう。
「…母が、私の目の色を見て直ぐに気が付いた。悪魔憑きだって、叫んでいた。父も駆け付けて、不穏な空気になってしまった。私はすぐさまディルと交代して、大丈夫だって訴えた。話せばわかってくれるはずだって。そう信じてディルを弁護した。でも……二人は、取り合わなかった。」
『悪魔憑きの言うことなんて信用できるか!』
『あなたは騙されているのよ!早くその悪魔を身体から追い出しなさい!』
そんな事出来ない。方法すら知らない。私はただ黙って泣きながら首を振るしか出来なかった。
「何を言っても無駄だと思ったんだろうね。両親は…悪魔憑きの私の前で、剣を抜いた。」
「え…。」
「母が私の身体を魔法で羽交い締めにして、父が私の前に立って、剣を振りかぶった。殺される…そう思った瞬間、ディルが出てきたの。「それが親のすることなのか」って叫びながら。」
あの時のディルの声は恐ろしいほど低かった。本気で怒っていると、本能的に察した。
「でも、彼の言葉を聞いた両親は、「悪魔憑きを生かす道理はない!」と言い放った。今ならわかる。あの二人は…悪魔根絶の思想に取り憑かれていた。そんな人間に言葉なんて通じない。本気で私を、ディルを殺そうと向かってきた両親に向かって、彼は…火の魔法を放って弾き飛ばした。それが運悪く家の木製家具に引火して…辺り一面火の海になった。両親は攻撃をもろに受け、殆ど即死だったと思う。ディルは家の外まで待避したあと、私の意識と交代して…。私は呆然とするしか無かった。」
「そんな、事が…。」
「…そんな時、リュセが帰ってきたの。家の惨状を見て、転がっている両親の残骸を見て、私がやったと当たりをつけた。だからリュセは…私を恨んでる。」
あの時の、リュセの絶望した顔は今でも脳裏に焼き付いている。
「でも、私が生まれてこの方攻撃魔法が使えない事は周知の事実。でも、焼け跡からは攻撃魔法の痕跡があった。だから、私は捕えられずに済んだ。」
「……。」
「ディルは、私を助けてくれただけ。悪魔にとって、自分を害する者は誰であろうと排除するのが常識。彼はその常識に則って行動しただけ。でもね…私は、心のどこかでずっとディルを恨んでた。」
「メノウ、それは…。」
「つい昨日まで笑い合いながら一緒にご飯を食べてた家族だった。だから、その家族である両親に殺されそうになったショックから抜け出したかったんだと思う。でも……それは間違ってるって、やっと頭と心、両方で理解出来たの。だから…これからは私も、ディルの事を信じる。」
ディルは何も言わない。でも、嫌がっているわけじゃない事は、何故か伝わった。
「ディル…。今まで、沢山傷付けて、本当にごめんなさい。」
『…僕達悪魔は傷付かない。』
「ううん、ディルは傷付いてるよ。だって、あの時…捕らえられている子供達を助けようとしたあの時、「人間の心なんて理解できないのかもね」って言ってたじゃない。」
『…それが何?』
「それって、裏を返せば人間の心を理解したいって聞こえるよ?それに…あの時のディルの声、とても悲しそうだった。」
『っ!?かな、しそう…?僕が?』
「確かに…あの時俺も一度だけ彼と話しましたが、後悔しているように感じました。後悔は、自分の心が傷付かないと出来ません。」
「だから、ディル…。悪魔だからって理由で逃げないで、ちゃんと悲しいって、傷付いてるって、自分を認めてあげて。」
『……。』
「ディル。」
『…善処はするよ。』
それで良い。それだけで大きな一歩なのだから。
そして、やはりと言うか、セインは離れていかなかった。受け入れてくれた。その事実が嬉しくて、その夜は気分が高揚していたのかなかなか寝付けなかった。
「うん…。私が、隠してる過去について。」
セインは驚かなかった。やはり、予想していたんだろう。
「前も言ったけど、ディルとは十年前からずっと一緒にいて、たまに彼と意識を交代してたりもしてたの。だって、ずっと私の中にいるだけなのも退屈だと思ったし。でも…それがまずかった。」
そう、彼と交代している間は、瞳の色が赤に変わる。シャーネさんから聞いて始めて知ったけど、リファリー家は悪魔根絶の指標を掲げていた。だからこそ、私の目を見てすぐに気付いたんだろう。
「…母が、私の目の色を見て直ぐに気が付いた。悪魔憑きだって、叫んでいた。父も駆け付けて、不穏な空気になってしまった。私はすぐさまディルと交代して、大丈夫だって訴えた。話せばわかってくれるはずだって。そう信じてディルを弁護した。でも……二人は、取り合わなかった。」
『悪魔憑きの言うことなんて信用できるか!』
『あなたは騙されているのよ!早くその悪魔を身体から追い出しなさい!』
そんな事出来ない。方法すら知らない。私はただ黙って泣きながら首を振るしか出来なかった。
「何を言っても無駄だと思ったんだろうね。両親は…悪魔憑きの私の前で、剣を抜いた。」
「え…。」
「母が私の身体を魔法で羽交い締めにして、父が私の前に立って、剣を振りかぶった。殺される…そう思った瞬間、ディルが出てきたの。「それが親のすることなのか」って叫びながら。」
あの時のディルの声は恐ろしいほど低かった。本気で怒っていると、本能的に察した。
「でも、彼の言葉を聞いた両親は、「悪魔憑きを生かす道理はない!」と言い放った。今ならわかる。あの二人は…悪魔根絶の思想に取り憑かれていた。そんな人間に言葉なんて通じない。本気で私を、ディルを殺そうと向かってきた両親に向かって、彼は…火の魔法を放って弾き飛ばした。それが運悪く家の木製家具に引火して…辺り一面火の海になった。両親は攻撃をもろに受け、殆ど即死だったと思う。ディルは家の外まで待避したあと、私の意識と交代して…。私は呆然とするしか無かった。」
「そんな、事が…。」
「…そんな時、リュセが帰ってきたの。家の惨状を見て、転がっている両親の残骸を見て、私がやったと当たりをつけた。だからリュセは…私を恨んでる。」
あの時の、リュセの絶望した顔は今でも脳裏に焼き付いている。
「でも、私が生まれてこの方攻撃魔法が使えない事は周知の事実。でも、焼け跡からは攻撃魔法の痕跡があった。だから、私は捕えられずに済んだ。」
「……。」
「ディルは、私を助けてくれただけ。悪魔にとって、自分を害する者は誰であろうと排除するのが常識。彼はその常識に則って行動しただけ。でもね…私は、心のどこかでずっとディルを恨んでた。」
「メノウ、それは…。」
「つい昨日まで笑い合いながら一緒にご飯を食べてた家族だった。だから、その家族である両親に殺されそうになったショックから抜け出したかったんだと思う。でも……それは間違ってるって、やっと頭と心、両方で理解出来たの。だから…これからは私も、ディルの事を信じる。」
ディルは何も言わない。でも、嫌がっているわけじゃない事は、何故か伝わった。
「ディル…。今まで、沢山傷付けて、本当にごめんなさい。」
『…僕達悪魔は傷付かない。』
「ううん、ディルは傷付いてるよ。だって、あの時…捕らえられている子供達を助けようとしたあの時、「人間の心なんて理解できないのかもね」って言ってたじゃない。」
『…それが何?』
「それって、裏を返せば人間の心を理解したいって聞こえるよ?それに…あの時のディルの声、とても悲しそうだった。」
『っ!?かな、しそう…?僕が?』
「確かに…あの時俺も一度だけ彼と話しましたが、後悔しているように感じました。後悔は、自分の心が傷付かないと出来ません。」
「だから、ディル…。悪魔だからって理由で逃げないで、ちゃんと悲しいって、傷付いてるって、自分を認めてあげて。」
『……。』
「ディル。」
『…善処はするよ。』
それで良い。それだけで大きな一歩なのだから。
そして、やはりと言うか、セインは離れていかなかった。受け入れてくれた。その事実が嬉しくて、その夜は気分が高揚していたのかなかなか寝付けなかった。
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