悪魔の誓い

遠月 詩葉

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カネール

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ディルから魔法陣理論を教えてもらった後、タイミング良くセインとディラン君が帰ってきた。どうやら魔毒水晶が投げ入れられた箇所と経路を調査してきたようだ。街と、その地下にある通路の地図だろうか?二枚の紙を広げてセインはある一箇所をトントンと指で叩く。

「ディランさんが目撃したのは、ここ…街の北側にある地下水路の貯水庫だそうです。」
「人間に見つかると厄介だから、人気のない場所に隠れてたんだ。それが仇となって、あんな奴らに捕まっちゃった訳だけど…。」

そう言って苦虫を噛み潰したような顔をする。相当な屈辱と苦悩を味わっただろう。それがありありと表情に出ていた。

「でも、ディラン君がそこに居たから対処法も分かった。結果オーライって言葉はちょっと不謹慎ではあるけど…ありがとね。」
「う、うん…。」

そう言って彼は少し俯いて顔を赤くする。感謝の言葉を言われ慣れてないのかなと思いつつ、それには触れないでおいた。

「そしてここに侵入するための経路ですが…。厄介な事に、入口に見張りがいます。もしかしたら中にも…。」
「うーん…やっぱ警戒はされてるよねぇ。でも、それならまた眠らせれば…。」
『いや、ディランを助けた時と同じ手段を取るのはリスクがある。それ用の対策がされている事を前提に進めた方が良いよ。』
「そ、そうかな…?でも、流石にオークションで魔法を使った人物がそこに行くなんて予想しないんじゃ…。」
「ううん…このお兄ちゃん…セインさんと行動してる時に詳しい事情を聞いたんだけど、多分その貴族と奴隷商人は繋がってる。だって、水晶を投げ入れてる男に気を取られてる隙に奴隷商人に後ろから羽交い締めにされて薬を嗅がされたから…。気を失う直前、その二人親しげに会話してたし。」

それは初耳だった。それに、謎の男はともかく奴隷商人もこの事件に関わっている…?一体何故?

「…奴隷商が狙うのは主に孤児です。水は一般人や自衛隊、戦闘を生業にしている人達も等しく消費するもの。あくまで憶測に過ぎませんが…もし、この街を拠点にしている戦力となる人間が、全員魔力を失っていたら、襲撃を受ければひとたまりもないでしょうね…。」
「え…それって…っ!」

まさか、リベートの時みたいな…いや、もしかしたらそれ以上の何かが待ち受けている…?

「あくまで憶測です。でも、最悪の事態は念頭に置いといた方が良いでしょう。」
「ただでさえ問題が多いのに…一体、何が起きてるの…?」

何か、とんでもない事が蠢いている気がする。悪魔の中の派閥争い、不可解な事件、それに伴うリュセの影。今立っている何の変哲もない床が、腐りかけた木片の様に感じた。何か少しでもズレれば、真っ逆さまに落ちていきそうな、そんな感覚。

(リュセ…あなたは、何に巻き込まれているの…?)
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