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カネール
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(結局、ここまで誰にも出くわさなかったなぁ…。)
気づけば貯水庫はもう目の前だ。気が抜けかけたその時、ディラン君が振り返って、私の肩を二回ポンポンと叩いた。
ハッとして顔を上げれば、前に立つ彼が前方を指差している。すると淡い光がぼんやりと宙に浮いていた。
(そりゃそっか、流石にここの見張りを欠かしたりはしないよね。)
まぁそうは言っても警備ガバガバすぎるが。大量に用意した粉は殆ど減っていない。寧ろこんなに要らなかったまである。今持っている麻袋以外にも、ディラン君の亜空間にはストックが入っているのだ。
それはさておき、入口の時と同じやり方で粉を風に乗せ、見張りの男達を倒す。呆気なく地に伏した彼等を尻目に、貯水庫に入っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
音を遮断する魔法を解除し、思わずプハーッと息を吐く。拍子抜けする程アッサリ辿り着けて、何だか後が怖くなってくる。
「さて、この中から魔毒水晶を抜き取る訳ですが…。」
「ひ、広すぎない?」
だって、湖レベルで広い。こんな中から全て取り除けるのだろうか。途端に不安に押し潰されそうになる。
『大丈夫。メノウが水を飲もうとした時僕が気付いた様に、悪魔は魔毒の気配に敏感だからね。』
「うん、潜る時兄さんに交代しておけば、問題ないと思うよ。」
「あぁ、そういえば…。でも、何で悪魔だけ気配が分かるの?」
「そりゃ、悪魔の身体の半分は魔力で出来てるからだよ。」
「……ん?」
魔力?え、悪魔の身体って魔力で出来てるの!?初めて知った新事実に驚きを隠せない。チラリとセインの顔色を伺うと、彼も彼で目をシパシパさせていた。うん、やっぱり私が無知って訳では無いようだ。
「え、知らなかったの?」
「いや聞いたことないよ!?」
『人間の魔力は、既に完成している肉体の中を循環してるけど、僕達悪魔は半分魔力で身体そのものを構成しているんだよ。細胞の形を魔力によって保っているってイメージ。』
「悪魔にしか使えない能力がしばしばあるのはその影響だよ。魔眼なんかが良い例じゃない?」
魔眼…。確かに悪魔の中には、瞳に不可思議な力が宿っている者もいるらしい。つまり、半分魔力で形成されているからこそ、そう言った力が発現する事もあるという事か。
「魔眼…。」
「セイン?」
ポツリと零した彼は、何かを考え込んでいる様子だった。どうかしたのだろうかと声をかけたが、なんでも無いと誤魔化された。
「だから、悪魔は魔毒の気配に一際敏感なんだ。侵され続けたら身体そのものが崩れちゃうからね。」
「ひえ…。それって、触って大丈夫なの…?」
『少しの間なら問題ない。そもそも身体に宿してる魔力量が、人間の数倍は多いからね。数日肌身離さず持っていて支障が出るくらいのレベルだよ。』
ふむ…それなら大丈夫か。もしも私と意識を交代したディルが、触った途端に消えちゃうとかだったらショックの余り寝込んでしまう所だ。だって大事な仲間で、家族なのだから。まぁ私が勝手に思ってるだけなのだけど。
『それより、そろそろ始めるよ。』
「分かった。宜しくね。」
そうして私の意識は内に入り、ディルの意識と入れ替わった。
気づけば貯水庫はもう目の前だ。気が抜けかけたその時、ディラン君が振り返って、私の肩を二回ポンポンと叩いた。
ハッとして顔を上げれば、前に立つ彼が前方を指差している。すると淡い光がぼんやりと宙に浮いていた。
(そりゃそっか、流石にここの見張りを欠かしたりはしないよね。)
まぁそうは言っても警備ガバガバすぎるが。大量に用意した粉は殆ど減っていない。寧ろこんなに要らなかったまである。今持っている麻袋以外にも、ディラン君の亜空間にはストックが入っているのだ。
それはさておき、入口の時と同じやり方で粉を風に乗せ、見張りの男達を倒す。呆気なく地に伏した彼等を尻目に、貯水庫に入っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
音を遮断する魔法を解除し、思わずプハーッと息を吐く。拍子抜けする程アッサリ辿り着けて、何だか後が怖くなってくる。
「さて、この中から魔毒水晶を抜き取る訳ですが…。」
「ひ、広すぎない?」
だって、湖レベルで広い。こんな中から全て取り除けるのだろうか。途端に不安に押し潰されそうになる。
『大丈夫。メノウが水を飲もうとした時僕が気付いた様に、悪魔は魔毒の気配に敏感だからね。』
「うん、潜る時兄さんに交代しておけば、問題ないと思うよ。」
「あぁ、そういえば…。でも、何で悪魔だけ気配が分かるの?」
「そりゃ、悪魔の身体の半分は魔力で出来てるからだよ。」
「……ん?」
魔力?え、悪魔の身体って魔力で出来てるの!?初めて知った新事実に驚きを隠せない。チラリとセインの顔色を伺うと、彼も彼で目をシパシパさせていた。うん、やっぱり私が無知って訳では無いようだ。
「え、知らなかったの?」
「いや聞いたことないよ!?」
『人間の魔力は、既に完成している肉体の中を循環してるけど、僕達悪魔は半分魔力で身体そのものを構成しているんだよ。細胞の形を魔力によって保っているってイメージ。』
「悪魔にしか使えない能力がしばしばあるのはその影響だよ。魔眼なんかが良い例じゃない?」
魔眼…。確かに悪魔の中には、瞳に不可思議な力が宿っている者もいるらしい。つまり、半分魔力で形成されているからこそ、そう言った力が発現する事もあるという事か。
「魔眼…。」
「セイン?」
ポツリと零した彼は、何かを考え込んでいる様子だった。どうかしたのだろうかと声をかけたが、なんでも無いと誤魔化された。
「だから、悪魔は魔毒の気配に一際敏感なんだ。侵され続けたら身体そのものが崩れちゃうからね。」
「ひえ…。それって、触って大丈夫なの…?」
『少しの間なら問題ない。そもそも身体に宿してる魔力量が、人間の数倍は多いからね。数日肌身離さず持っていて支障が出るくらいのレベルだよ。』
ふむ…それなら大丈夫か。もしも私と意識を交代したディルが、触った途端に消えちゃうとかだったらショックの余り寝込んでしまう所だ。だって大事な仲間で、家族なのだから。まぁ私が勝手に思ってるだけなのだけど。
『それより、そろそろ始めるよ。』
「分かった。宜しくね。」
そうして私の意識は内に入り、ディルの意識と入れ替わった。
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