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反逆の兆し
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「そりゃ、僕も警戒してたよ。だから、確かめた。」
わざわざ、錯覚の魔法を解いて。
後ろ手に、少女の心臓をいつでも撃ち抜ける銃を構えて。
「まあ、向こうは完全に女の子だと勘違いしてたけど。でも、不思議なほど髪について触れなかった。というか、そんな意識して見ていなかった。」
黒猫を世話している。その事実を周りに隠していることからして、黒の意味は知っているのだろう。
でも、どんなに一緒に過ごしても。手に触れても。嫌悪感、疑念、忌避。どこにも見つからない。
どんなに探しても、イーヴァの中に存在しない。
「…にわかには…。」
「信じられないって?知ってる。僕自身驚いてるからね。」
それでも、彼女は優等生。いつかは染まってしまうのかもしれない。
徐々に距離を取ることも考えた。特に、次の試験が刻一刻と迫っていたから。
でも…彼女の涙を見て。自分の感情の名前すら知らない、憐れな少女の姿を目の当たりにして。
(助けたい。僕がそう思ってしまった。)
元来、自由人気質なアム。自分の想いを自覚したのなら、それに従うまで。
「だから、計画を大幅に変更する。本当は次期生の時に反逆の芽を植えるつもりだったけど…。」
「…間に合うのか?数週間後だろう、タイムリミットは。」
彼女を救うならば、今を置いて他にない。黒猫を、タコを。ただの家族として見ているイーヴァに、あの試験を突破することは不可能だ。
ーーあんなに綺麗な涙を流す彼女が、耐えられるわけない。
「間に合うか、じゃない。間に合わせるのさ。」
傲慢にも思える発言。しかし、それに伴う実力を持っているのもまた、彼本人だ。
(念入りに…タコも協力させよう。)
これでもし、彼女が手を赤く染めるならば、その時はその時。自分の見る目がなかっただけのこと。
万が一、そんな事態になったのならば。自分自身の手でケリをつける。
(頼むから…そのままの君でいてね。)
風を操り水気を弾き飛ばしながら、物騒な願いを抱く。
傍らに置かれた拳銃。それが撃ち抜くのは、果たして神か。ーーそれとも彼女か。
「はあ…。わかった。こちらもその方向で準備しよう。」
「うん、よろしく。」
どこまでも歪で、誰よりも美しい少年。妖艶な笑みに惹きこまれないうちに、男は早々に立ち去った。
「…君を、解放してあげるからね。」
初めて、世界に抗う自分を誇りに思う。この道を選ばなければ、彼女と出会う今はなかったのだから。
反逆の銃口が、空を撃ち落とす。その未来は、そう遠くない。
わざわざ、錯覚の魔法を解いて。
後ろ手に、少女の心臓をいつでも撃ち抜ける銃を構えて。
「まあ、向こうは完全に女の子だと勘違いしてたけど。でも、不思議なほど髪について触れなかった。というか、そんな意識して見ていなかった。」
黒猫を世話している。その事実を周りに隠していることからして、黒の意味は知っているのだろう。
でも、どんなに一緒に過ごしても。手に触れても。嫌悪感、疑念、忌避。どこにも見つからない。
どんなに探しても、イーヴァの中に存在しない。
「…にわかには…。」
「信じられないって?知ってる。僕自身驚いてるからね。」
それでも、彼女は優等生。いつかは染まってしまうのかもしれない。
徐々に距離を取ることも考えた。特に、次の試験が刻一刻と迫っていたから。
でも…彼女の涙を見て。自分の感情の名前すら知らない、憐れな少女の姿を目の当たりにして。
(助けたい。僕がそう思ってしまった。)
元来、自由人気質なアム。自分の想いを自覚したのなら、それに従うまで。
「だから、計画を大幅に変更する。本当は次期生の時に反逆の芽を植えるつもりだったけど…。」
「…間に合うのか?数週間後だろう、タイムリミットは。」
彼女を救うならば、今を置いて他にない。黒猫を、タコを。ただの家族として見ているイーヴァに、あの試験を突破することは不可能だ。
ーーあんなに綺麗な涙を流す彼女が、耐えられるわけない。
「間に合うか、じゃない。間に合わせるのさ。」
傲慢にも思える発言。しかし、それに伴う実力を持っているのもまた、彼本人だ。
(念入りに…タコも協力させよう。)
これでもし、彼女が手を赤く染めるならば、その時はその時。自分の見る目がなかっただけのこと。
万が一、そんな事態になったのならば。自分自身の手でケリをつける。
(頼むから…そのままの君でいてね。)
風を操り水気を弾き飛ばしながら、物騒な願いを抱く。
傍らに置かれた拳銃。それが撃ち抜くのは、果たして神か。ーーそれとも彼女か。
「はあ…。わかった。こちらもその方向で準備しよう。」
「うん、よろしく。」
どこまでも歪で、誰よりも美しい少年。妖艶な笑みに惹きこまれないうちに、男は早々に立ち去った。
「…君を、解放してあげるからね。」
初めて、世界に抗う自分を誇りに思う。この道を選ばなければ、彼女と出会う今はなかったのだから。
反逆の銃口が、空を撃ち落とす。その未来は、そう遠くない。
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