地獄の続き

遠月 詩葉

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宵咲 香奈よいさき かなの人生は、不幸に染まっていた。

「あんたのせいでっ!どうしてくれるのよ!?返して!返せっ!!」

噎び泣きながら、実の娘を殴る母親。馬乗りになって、首を絞められる。
その手には、底知れぬ怨嗟が宿っていた。

香奈のか弱い力では、それを振りほどく事すら困難だった。

(あ…死ぬ…。)

頭の端でそう考えていた時だ。一人の男が「やめろ!」と思い切り母親を突き飛ばした。

「ゲホッ!ゴホッ!」
「香奈を殺そうとしたのかお前は!」
「うるさいうるさいうるさい!こいつがいるから貴方は私を見てくれないんでしょう!?こんなやつ、連れてくるんじゃなかった!産むんじゃなかった!」
「おい、そんな言い方…。」
「貴方も貴方よ!血が繋がってないとはいえ、自分の娘に手を出すなんて…!」
「う…。」

苦しそうに咳き込む香奈を置き去りに、母親は夫を責め始めた。
一応は助けてくれた男も、香奈からすれば汚らわしい、欲にまみれた獣と大差ない。

(ああ、まだ地獄は続くんだね…。)

力なく、言い争う二人を見上げて思う。いっそのこと、このまま殺されていた方が幸せだったのではないか。

(ううん、私には弘人がいる…!)

ギリギリのところで、闇に沈みそうな思考を引き上げる。かけがえのない、最愛の人。
未だ鼓膜を劈く罵声に耳を塞ぎながら、香奈は彼との出会いを思い出していたーー。
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