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香奈が葛城 弘人と出会ったのは、美術部の見学をしている時だった。
彼は一つ上の先輩で、顔が綺麗で、絵が上手くて…おまけに優しい。
柔らかく微笑んで、丁寧に色々教えてくれる姿に胸がときめいた。
だけど、そんな先輩は当たり前に人気者で…。影ながら彼に恋をしている女子生徒も多かった。
最初は香奈も、そのうちの一人に過ぎなかったのだ。
当時の自分は、義父の魔の手に怯え、心のよりどころとして絵を嗜んでいた。
ほんの僅かだけ。自分の手で彩られていくキャンバスを見ていれば、心が安らいでいく。
周りからしたら熱心に打ち込んでいるように感じたことだろう。
彼も例に漏れず、真剣に絵を描いている自分を見て、嬉しそうに話しかけてきた。
『絵、好きなの?』
『このタッチは、もう少しこういう風にした方が…』
『へえ、君ってそういう漫画をよく読むんだね。』
『もし良かったら、またオススメ教えてよ。』
そんな他愛もない会話を積み重ね、いつしか“好き”という気持ちが抑えられなくなった。
ほとんど、衝動だったと思う。その感情が口から飛び出したのは。
彼は、目をまんまるにして驚いた顔をして、そのあと頬を赤く染めて…。
『…嬉しい。実は僕も…。』
奇跡だった。想いが通じたのだ。一生分の幸運を使い果たしたんじゃないかって気分だった。
同時に。こんな汚い自分を知られるのがとても恐ろしくなって。
弘人の中では綺麗なままの私でいてほしくて、必死に隠し通している。
そして彼は卒業した。もちろん、恋人関係は良好なままだ。
しかし、彼の目がなくなった途端、嫉妬に駆られた女子生徒からのいじめが勃発した。
殴られて、蹴られて、バケツの水をかけられたこともあるし、ボールの的にされて痣が出来たこともある。
机や下駄箱には、いつもゴミが詰められていた。
それでも、弘人には言えない。家庭のことも、いじめのことも。心配なんてかけたくない。幻滅されたくない。
その一心で、彼の前では笑顔で居続けた。
『…何か、隠してることない?最近、元気ないし…。』
そう言って心配してくれる彼の言葉にも首を振って、何もないと嘘を吐き続けた。
その度、彼の表情は曇って、そして寂しそうに『…そっか』と言うだけだった。
そうやって彼の手を拒んできたから、嘘を重ね続けたから。
罰が当たったのだろうか。
彼は一つ上の先輩で、顔が綺麗で、絵が上手くて…おまけに優しい。
柔らかく微笑んで、丁寧に色々教えてくれる姿に胸がときめいた。
だけど、そんな先輩は当たり前に人気者で…。影ながら彼に恋をしている女子生徒も多かった。
最初は香奈も、そのうちの一人に過ぎなかったのだ。
当時の自分は、義父の魔の手に怯え、心のよりどころとして絵を嗜んでいた。
ほんの僅かだけ。自分の手で彩られていくキャンバスを見ていれば、心が安らいでいく。
周りからしたら熱心に打ち込んでいるように感じたことだろう。
彼も例に漏れず、真剣に絵を描いている自分を見て、嬉しそうに話しかけてきた。
『絵、好きなの?』
『このタッチは、もう少しこういう風にした方が…』
『へえ、君ってそういう漫画をよく読むんだね。』
『もし良かったら、またオススメ教えてよ。』
そんな他愛もない会話を積み重ね、いつしか“好き”という気持ちが抑えられなくなった。
ほとんど、衝動だったと思う。その感情が口から飛び出したのは。
彼は、目をまんまるにして驚いた顔をして、そのあと頬を赤く染めて…。
『…嬉しい。実は僕も…。』
奇跡だった。想いが通じたのだ。一生分の幸運を使い果たしたんじゃないかって気分だった。
同時に。こんな汚い自分を知られるのがとても恐ろしくなって。
弘人の中では綺麗なままの私でいてほしくて、必死に隠し通している。
そして彼は卒業した。もちろん、恋人関係は良好なままだ。
しかし、彼の目がなくなった途端、嫉妬に駆られた女子生徒からのいじめが勃発した。
殴られて、蹴られて、バケツの水をかけられたこともあるし、ボールの的にされて痣が出来たこともある。
机や下駄箱には、いつもゴミが詰められていた。
それでも、弘人には言えない。家庭のことも、いじめのことも。心配なんてかけたくない。幻滅されたくない。
その一心で、彼の前では笑顔で居続けた。
『…何か、隠してることない?最近、元気ないし…。』
そう言って心配してくれる彼の言葉にも首を振って、何もないと嘘を吐き続けた。
その度、彼の表情は曇って、そして寂しそうに『…そっか』と言うだけだった。
そうやって彼の手を拒んできたから、嘘を重ね続けたから。
罰が当たったのだろうか。
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