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7.巡礼
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その後、医務室に運ばれ目を覚ましたサキ。
何故か、あの場にいた者は『大丈夫か』の一言すら声をかけなかった。知らせを受け駆けつけた面々は、早速とばかりに聖女の巡礼について解説し始める。
「各地にあるスポットに赴き、浄化の力を解放して欲しい。全て周り終えれば、邪気を消すことが出来るはずだ。」
その力を試しに使った結果、倒れたばかりだと言うのに。悪気なんて一つもない様子で、そうのたまう。
「なるほど…。しかし、私一人では不安が大きいです。出来れば、付き添いの方がいれば心強いのですが…。」
しかも、そんな扱いをされている本人すらも、疑問を抱いていなかった。心配される経験がなかった人生。その観点がないと言えばそうなのかもしれない。
とはいえ、第三者には知る由もない過去。ずっと傍で控えていたロキートは、なんとも言えない不快感を覚える。
「ふむ、確かにその通り。この世界に不慣れでは、色々巡礼に障りがあろう。」
(いやいやいやいや、世界の危機とはいえ、本当にそれしか頭にないのかよ…。)
絶対、自分以外にもそう感じる人間は居るはずである。特に聖女本人とか。
しかし、辺りを見回しても、サキすらも、うんうん頷き肯定するばかり。
ロキートの予想は見事に、秒で裏切られた。
(嘘だろ…。)
愕然とする彼の心境を置き去りに、話は進む。
「では、そこの…。ヴァーマリー子爵を供につけよう。」
「は…。」
唐突に自分を名指しされ、素っ頓狂な声を漏らしかける。ぐっと堪え、何とか持ち直した。
(え、彼って貴族だったの!?)
一方、サキもその発言に別の意味で驚いていた。働いた分の殆どを貯金に回し、趣味も何もないまま23歳になってしまったサキ。
そんな彼女にとって、平民は姓がないという概念も、城務めの時点でそれなりの身分であるという常識も、存在しない。気づけるだけの下地が何も無かった。
「その命、謹んでお受け致します。」
「うむ。聖女殿もそれで良いか?」
「…あ、は、はい!謹んでお受け致します。」
見よう見まねで、ロキートの動作と言葉を繰り返す。満足気に頷いた王は、そのまま踵を返し、そのまま臣下にも命令した。
「旅に必要なものを揃えよ!聖女殿には、明日から巡礼に赴いてもらう。なに、案ずることは無い。今夜、最低限必要な知識を授ける。不足分はそこの、子爵に道中頼るがいい。」
(…マジかよこのジジイ。)
曲がりなりにも己が仕えている国王に対して、自然とそんな悪態が湧いてくる。だが反省はしない。自分の感覚がおかしいとは、どうしても思えなかったからだ。
(どんなスケジュールなんだろ…。あんまりタイトだと体力が心配なんだけどなぁ。)
ロキートとは対称的に、現実的な不安材料に目がいくサキ。自身の心配…というより、順調に巡礼を終えられるかにフォーカスしているのが目に見える。
(…この女大丈夫かよ…。)
己に無頓着な態度が透けて見える。彼女の背を見つめながら、ロキートは呆れ半分で毒が腹に沈殿した。
この際だからハッキリ言おう。ロキートは褒められた性格をしていない。
世渡り上手で、魔術の腕も確かではあるが、自他の境界線が明確に分かれている。自分が損益を被らないように、上手く立ち回る。最低限、己の安全が確保されるならば、多少周りに被害が出ても何も思わない。必要に駆られない限り、リスクを取って助ける事なんてしない。平気で見捨てる。
一言で表すならば、日常生活において。彼は冷たいのだ。
(流石に危なっかしいっつーか…先が思いやられるな…。)
ーーそのはずなのだが、その彼ですらサキのチグハグな態度を不安に思っていた。
逆に言えば、性格悪いと自分で認めているロキートしか、彼女の身を露ほども案じていない。
だから“異様”なのだ。
(嫌な予感がするな…何も無けりゃいいけど。)
もちろん、その予想は的中する。
ーー2年後、巡礼を終えここに戻ってきた時に。
何故か、あの場にいた者は『大丈夫か』の一言すら声をかけなかった。知らせを受け駆けつけた面々は、早速とばかりに聖女の巡礼について解説し始める。
「各地にあるスポットに赴き、浄化の力を解放して欲しい。全て周り終えれば、邪気を消すことが出来るはずだ。」
その力を試しに使った結果、倒れたばかりだと言うのに。悪気なんて一つもない様子で、そうのたまう。
「なるほど…。しかし、私一人では不安が大きいです。出来れば、付き添いの方がいれば心強いのですが…。」
しかも、そんな扱いをされている本人すらも、疑問を抱いていなかった。心配される経験がなかった人生。その観点がないと言えばそうなのかもしれない。
とはいえ、第三者には知る由もない過去。ずっと傍で控えていたロキートは、なんとも言えない不快感を覚える。
「ふむ、確かにその通り。この世界に不慣れでは、色々巡礼に障りがあろう。」
(いやいやいやいや、世界の危機とはいえ、本当にそれしか頭にないのかよ…。)
絶対、自分以外にもそう感じる人間は居るはずである。特に聖女本人とか。
しかし、辺りを見回しても、サキすらも、うんうん頷き肯定するばかり。
ロキートの予想は見事に、秒で裏切られた。
(嘘だろ…。)
愕然とする彼の心境を置き去りに、話は進む。
「では、そこの…。ヴァーマリー子爵を供につけよう。」
「は…。」
唐突に自分を名指しされ、素っ頓狂な声を漏らしかける。ぐっと堪え、何とか持ち直した。
(え、彼って貴族だったの!?)
一方、サキもその発言に別の意味で驚いていた。働いた分の殆どを貯金に回し、趣味も何もないまま23歳になってしまったサキ。
そんな彼女にとって、平民は姓がないという概念も、城務めの時点でそれなりの身分であるという常識も、存在しない。気づけるだけの下地が何も無かった。
「その命、謹んでお受け致します。」
「うむ。聖女殿もそれで良いか?」
「…あ、は、はい!謹んでお受け致します。」
見よう見まねで、ロキートの動作と言葉を繰り返す。満足気に頷いた王は、そのまま踵を返し、そのまま臣下にも命令した。
「旅に必要なものを揃えよ!聖女殿には、明日から巡礼に赴いてもらう。なに、案ずることは無い。今夜、最低限必要な知識を授ける。不足分はそこの、子爵に道中頼るがいい。」
(…マジかよこのジジイ。)
曲がりなりにも己が仕えている国王に対して、自然とそんな悪態が湧いてくる。だが反省はしない。自分の感覚がおかしいとは、どうしても思えなかったからだ。
(どんなスケジュールなんだろ…。あんまりタイトだと体力が心配なんだけどなぁ。)
ロキートとは対称的に、現実的な不安材料に目がいくサキ。自身の心配…というより、順調に巡礼を終えられるかにフォーカスしているのが目に見える。
(…この女大丈夫かよ…。)
己に無頓着な態度が透けて見える。彼女の背を見つめながら、ロキートは呆れ半分で毒が腹に沈殿した。
この際だからハッキリ言おう。ロキートは褒められた性格をしていない。
世渡り上手で、魔術の腕も確かではあるが、自他の境界線が明確に分かれている。自分が損益を被らないように、上手く立ち回る。最低限、己の安全が確保されるならば、多少周りに被害が出ても何も思わない。必要に駆られない限り、リスクを取って助ける事なんてしない。平気で見捨てる。
一言で表すならば、日常生活において。彼は冷たいのだ。
(流石に危なっかしいっつーか…先が思いやられるな…。)
ーーそのはずなのだが、その彼ですらサキのチグハグな態度を不安に思っていた。
逆に言えば、性格悪いと自分で認めているロキートしか、彼女の身を露ほども案じていない。
だから“異様”なのだ。
(嫌な予感がするな…何も無けりゃいいけど。)
もちろん、その予想は的中する。
ーー2年後、巡礼を終えここに戻ってきた時に。
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