有り触れた悲劇に終止符を 1

遠月 詩葉

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20.リリエ、永眠す(?)

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「うう…。」

一方その頃。一目散に逃げたリリエは頭を抱えていた。

「ど、どうしよう…聖女様に謝らせたなんてバレたら…!」

ロキートの、悪魔のような笑みを思い出す。聖女の世話をこれからも任せたいと、呼び出されたのは今朝のこと。

『変に隠さず報告してくれたことは評価しよう。…が、これからは誰かを通さず、何かあれば直接言いに来てくれ。』
『ひゃ、ひゃい…!』

元々、腹に一物抱えてそうな黒いオーラを感じ取っていた。それでも表面上はにこやかに、柔らかな態度を貫いていたのに。
顔の下半分だけ、一切の綻びもない笑顔を形作っている彼は、怖さが3倍増しになっている。小心者なリリエは震えあがり、上擦りながらも返事をした。

『ああ、それと。知り得た情報は今後一切、俺以外には流さないように。同僚にもだ。』

賢い君なら、理解できるだろう?
全く褒められた気がしない脅し文句まで付け足された。黒い。黒すぎる。

『しょ、承知致しました!誠心誠意、仕えさせて頂きましゅっ!』

噛んだ。顔が青くなる。むしろ白い。

『…はあ。別に取って食うつもりはない。ただ、彼女を傷つけるようなことはしないでほしいとしてるだけだ。』

しかしそんなミスで怒るようなロキートではない。彼が真っ黒なのは別の理由からである。
が、威圧しすぎたのは否めない。努めて声音を和らげて、そう言いなおす。

(はい、わかっております。お願いという名の通告ですね。執行猶予つきの。)

二度目はないぞと言われてるのだ。はい、リリエは賢いので同じ轍を踏んだりはしません。肝に銘じます。
ーー彼女は小心者すぎて悪い方向に捉えていた。

『彼女は基本的に俺たちとは常識というか…考え方が違う。なるべく、希望を叶えてやってくれ。ただし、危険が及ぶようなものは遠ざけろ。』
『はい!お任せください!』

つい今までプルプルと震えていた割に、勢いの良い返事。
少々面食らうが、その気概にロキートは満足そうな表情で頷いた。

なのに。

「まずい、すごくまずい…!ここから何とか巻き返さないと…!」

グッと拳を握り、サキがいる部屋の扉を振り返って。…膝から崩れ落ちた。

(って、そのまま来ちゃったぁ!?)

何たる失態。何一つ手伝わず、突然の謝罪にテンパり、逃げてしまった。
もうだめだ。おしまいだ。ああ、田舎のお母さんにお父さん、ごめんなさい。リリエは墓に眠ることとなりそうです。
本人は大真面目だが、傍から見たら想像力豊かな彼女の面相はとてもおもしろ…いや、微笑ましい。

「どうした?」

ピシッ。魔王の声がする。ギギギギ…ッと壊れかけの玩具みたいな動きで後ろを振り向くと。やはり居た。

(あぁ…終わりました。これにてジ・エンドです。)

口の端から赤い何かを零し、真っ白い砂岩となりながら悟りを拓く。静かな笑みを携えた今の彼女に、怖いものはもう何も無い。無敵である。

「申し訳ありません、覚悟は出来ています。」
「は?」
「さぁ!どうぞひと思いに!出来れば痛くしないでくれると助かります!!」
「お前は何を言っているんだ!?」

真っ赤な目を深淵にして渦を巻く。笑いながらドバドバ涙を流し、人によっては誤解を招きそうな発言を喚きながら大の字に両手を広げた。
敢えて言おう。リリエの方がずっと怖い。

ガチャッ。
この世の混沌を集めたようなワンシーンを繰り広げている中、彼女の背にそびえ立つ扉が開かれた。

「なんか騒がしいと思ったら…ロキート君にリリエさん、何してるの?」

ヒョコ。訝しげに首だけ覗かせるサキ。その疑問は当然である。

「せ、聖女様ぁ~!」

覚悟を決めていたはずのリリエは、その顔を見た瞬間ブワッとウサギみたいな瞳を濡らして泣きついた。彼女に他意はない。ただ緊張の糸が切れてしまっただけなのだ。

「え、どうしたんですか!?ロキート君が何かした!?」
「俺のせいかよ!?」
「びぇええ~!!」

号泣しているリリエに説明を求められる状況ではなかった。

「ロキート君…。」
「俺は何もしてないからな??」

ジトーッと見られ慌てて無実を主張するが、全く信用されていない。
哀れなり、ロキート。
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