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19.もっと地味がいい
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「サキ様?大丈夫ですか?」
声がする。…誰の?
遠すぎて、日の光が届かず陰っている扉。その前に、メイド服の女性が立っていた。
でも絶対学生くらいだと、サキは密かに確信を持っている。
そんな彼女は心配そうに眉を八の字に曲げながら、柔らかい声音を奏でた。
(…あ。確か、リリエさんだっけ?)
思い出した。こんな豪華な部屋に泊まったっけ?と一瞬不思議に感じたが、普通に泊まってたわと納得する。一人漫才終了。
「おはようございます…大丈夫って…何がです…?え、もしかして寝坊とかしちゃってたり…。」
「いえ、ゆっくりお休み頂くようにと仰せつかっておりますので!そうではなく、少々…魘されていたようでしたから…。」
「え?あ、すみませんうるさかったですか!?やだなあ恥ずかしい…。」
ちゃんと返してるようで、絶妙にズレている返答。
サキとしては至極真っ当に会話しているつもりなのだが、リリエはリリエで『あまり触れられたくない話題なのだな』と解釈した。
こうして流すことを決めた新人メイドは方向を変える。
「ふふ、大丈夫ですよ。それよりサキ様、本日の支度を整えさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「…ん?支度?え、今日なにか重要な予定とかあったり…?」
「違いますよ!着替えや髪のセッティングのお話です。」
「んんん??だから重要な予定でもあるのかな…って違うか。そういえば貴族の方々は他人に身支度を頼むのでしたっけ?」
この世界に召喚された翌日に、巡礼の旅に放り出されたサキ。それ故、貴族の暮らしを間近で体感する機会がなかったのだ。
そういえばロキートに軽く、こちらの世界の常識として教えてもらったような気がする。
既に虫に食われまくっている記憶をなんとか引っ張り出してきた。
「えっと、大丈夫です!自分の身支度は自分でしないと気が済まないタチというか…。せっかく親切に申し出てくれたのに、すみません…。」
親切も何も、それが彼女の仕事なのだが。日本人としての気質と考えが未だ抜けず、反射的に謝罪を述べる。
「ヒェッ…!あ、謝らないでください!では、用意が出来ましたらベルでお呼びください!」
「あ、はい。」
あたふたと慌てながら、必死に首をブンブンと振って謝罪を拒絶する。新鮮な感覚にサキはしぱしぱと瞬き。
バタンッと扉の向こうに消えた新人メイドを見送り、ハンガーにかけられている服を見た。
「うーん…動きやすいワンピースなのは有難いけど…ちょっとかわいすぎない…?」
昨夜のドレスに比べれば控え目だが、ヒラヒラがついてて胸元にバラのような装飾が施されている。しかも春先の野花を思い出させるような、明るい黄色。
「ええ…嘘ぉ…。」
実はロキート君ってセンスないのだろうか。物凄く失礼なことを思う。
確かに服自体はとても可愛い。が、こういうのは美人が着てこそ光るのだ。
「でも他になさそうだし…仕方ない…後で直談判しよう…。」
居候の分際で厚かましいが、そもそも生地からして上等すぎる。もっと安くて地味な、それこそ古着とかでいいのだ。
(うん、そうしよう。無駄なお金を使わせるわけにはいかない。…返済が怖いし。)
まだそんなことを言っているのか。本人が彼女の頭の中を覗いたら拳骨を食らわせそうである。
「…そういえば、どんな寝言言ってたんだろう?うーん…夢の内容思い出せないのは久しぶりだなあ。」
それほど疲れていたのだろうか。仕事の繁忙期、数日ぶりに家に帰って寝た時もそうだった。
きっと心労がたまっていたのだろう。悪夢を見なくてよかった。
覚えてないだけでバリバリ見ていたわけだが、サキはそう結論づける。
「…うん、早めに自立しないとね。」
覚えてないだけで、その影響は確かに現実にまで手を伸ばしていた。
声がする。…誰の?
遠すぎて、日の光が届かず陰っている扉。その前に、メイド服の女性が立っていた。
でも絶対学生くらいだと、サキは密かに確信を持っている。
そんな彼女は心配そうに眉を八の字に曲げながら、柔らかい声音を奏でた。
(…あ。確か、リリエさんだっけ?)
思い出した。こんな豪華な部屋に泊まったっけ?と一瞬不思議に感じたが、普通に泊まってたわと納得する。一人漫才終了。
「おはようございます…大丈夫って…何がです…?え、もしかして寝坊とかしちゃってたり…。」
「いえ、ゆっくりお休み頂くようにと仰せつかっておりますので!そうではなく、少々…魘されていたようでしたから…。」
「え?あ、すみませんうるさかったですか!?やだなあ恥ずかしい…。」
ちゃんと返してるようで、絶妙にズレている返答。
サキとしては至極真っ当に会話しているつもりなのだが、リリエはリリエで『あまり触れられたくない話題なのだな』と解釈した。
こうして流すことを決めた新人メイドは方向を変える。
「ふふ、大丈夫ですよ。それよりサキ様、本日の支度を整えさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「…ん?支度?え、今日なにか重要な予定とかあったり…?」
「違いますよ!着替えや髪のセッティングのお話です。」
「んんん??だから重要な予定でもあるのかな…って違うか。そういえば貴族の方々は他人に身支度を頼むのでしたっけ?」
この世界に召喚された翌日に、巡礼の旅に放り出されたサキ。それ故、貴族の暮らしを間近で体感する機会がなかったのだ。
そういえばロキートに軽く、こちらの世界の常識として教えてもらったような気がする。
既に虫に食われまくっている記憶をなんとか引っ張り出してきた。
「えっと、大丈夫です!自分の身支度は自分でしないと気が済まないタチというか…。せっかく親切に申し出てくれたのに、すみません…。」
親切も何も、それが彼女の仕事なのだが。日本人としての気質と考えが未だ抜けず、反射的に謝罪を述べる。
「ヒェッ…!あ、謝らないでください!では、用意が出来ましたらベルでお呼びください!」
「あ、はい。」
あたふたと慌てながら、必死に首をブンブンと振って謝罪を拒絶する。新鮮な感覚にサキはしぱしぱと瞬き。
バタンッと扉の向こうに消えた新人メイドを見送り、ハンガーにかけられている服を見た。
「うーん…動きやすいワンピースなのは有難いけど…ちょっとかわいすぎない…?」
昨夜のドレスに比べれば控え目だが、ヒラヒラがついてて胸元にバラのような装飾が施されている。しかも春先の野花を思い出させるような、明るい黄色。
「ええ…嘘ぉ…。」
実はロキート君ってセンスないのだろうか。物凄く失礼なことを思う。
確かに服自体はとても可愛い。が、こういうのは美人が着てこそ光るのだ。
「でも他になさそうだし…仕方ない…後で直談判しよう…。」
居候の分際で厚かましいが、そもそも生地からして上等すぎる。もっと安くて地味な、それこそ古着とかでいいのだ。
(うん、そうしよう。無駄なお金を使わせるわけにはいかない。…返済が怖いし。)
まだそんなことを言っているのか。本人が彼女の頭の中を覗いたら拳骨を食らわせそうである。
「…そういえば、どんな寝言言ってたんだろう?うーん…夢の内容思い出せないのは久しぶりだなあ。」
それほど疲れていたのだろうか。仕事の繁忙期、数日ぶりに家に帰って寝た時もそうだった。
きっと心労がたまっていたのだろう。悪夢を見なくてよかった。
覚えてないだけでバリバリ見ていたわけだが、サキはそう結論づける。
「…うん、早めに自立しないとね。」
覚えてないだけで、その影響は確かに現実にまで手を伸ばしていた。
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