有り触れた悲劇に終止符を 1

遠月 詩葉

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27.前置き

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「さて、何から話そうかね。」

場所は変わって、ロキートの自室。机を挟んで向かい側に座り、互いの顔を見つめる。
サキは若干、肩をすぼめながら。反してロキートは腕と足を組み、余裕の態度だ。
涼しい顔している目の前の男が恨めしい。

(でも、昨日はちょっとアレだったけど…やっぱり怖くはないんだよね…。)

今までにないくらい、本気で怒鳴られた。父親と同じようなことを言って激高する彼を前に、心が竦みあがった。
それでも、。言葉は似ていても、その真意は別物だ。サキはその差を上手く表現出来ないながらも、何となく本能で嗅ぎ分けていた。

「まず、第一に。昨日もこれが原因で揉めたが、やはり譲れない。今までもこれからも、俺がお前に費やす負担はだ。他の誰にもやらん。」
「なんで!?負担って自分から背負いたいものじゃないでしょ!?」

なんで、そんな宝物みたいに言うのだ。意味が分からない。
開幕から既にサキの頭はショート寸前。

「そりゃ俺だって赤の他人にこんなことしねぇよ。」
「私も真っ赤っかなんですけどぉ!?」
「お前は違う。」

想定通りだと言わんばかりに、表情一つ変えずそう返す。あまりにも自信満々に言うもので、思わずたじろいだ。

「う…それは、一緒に旅をした仲だから?それとも…私が聖女だから?」
「きっかけはそうだな。でも、それが理由じゃない。」

むしろ、それだけの関係であったなら“仕事上の付き合い”で終わっていただろう。
ロキートは、自分が出来た人間じゃないと自覚している。だからこそ断言出来た。
もし、彼女を好きにならなければ。今までそうしてきたように、平気で見捨てていたのだろうと。
今となっては、そんな可能性を考えるだけで発狂しそうになる。何か一つでも掛け違えていたら、そんな未来になっていたのだから、尚更。
あの日、供として指名されなければ。箔付けのために何となく魔術師を目指さなければ。そもそも彼女と出会ってすらいなかったかもしれない。
だから、それらは“きっかけ”として決して無視できない経緯だった。

「じゃあ、なんで?ロキート君がそこまでしてくれるような理由、思いつかないんだけど…。」
「だろうな。」
「即答!」

当然ではないか、本人にだけはバレないように取り繕っていたのだから。

(お前も、超のつくような鈍感だし。)

本当は、もっと色々かたを付けて、外堀を埋め尽くしてからのつもりだった。正直なところ、まだ何にも終わっていない。
懸念点も、それこそサキ本人に距離を取られる可能性もゼロじゃない。
だけど。それではきっと進まない。彼女は色んな意味で、普通ではないのだから。
及び腰のままでは、いつまでも彼女の内側に触れられない。
自分の傷にすら無頓着で、気づかないようなサキの心には、届かない。

「はあ…いいか?一度しか言わないからよく聞けよ。」
「う、うん…?」

唐突すぎる。ゴゴゴゴと、迫真のオーラが後ろに見える気がする。
怖くないけど恐い。いつもと明らかに違うロキートの様子に、生唾を飲み込んだ。
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