19 / 43
2章: リンドウの花に、口づけを
2-6 思い出、紫煙と共に
しおりを挟む
一仕事終えたコウは家に戻り、無表情で薄暗い部屋に立ち尽くした。別に、何があったというわけではない。ただ、美優が死んでから彼はこうする時間が増えた。自分が何をしているのか、時々わからなくなるのだ。言い知れぬ虚無感が彼の心に抱えきれぬ穴を開けていた。
そうして暫く突っ立ったあと、思い出した様に力無くポケットから煙草を取り出し、口に咥えて火をつけた。その穴を埋める様に、彼は冷えた煙を体に流し込む。
彼が煙草を吸う度に思い出す光景がある。
彼女の長く影を落とした睫毛、陶器の様な白い肌、果肉の様な唇、傾げた首、はだけた肩に刻まれた青い痣。
部屋の窓から入り込む街の明かりで、彼女の顔の輪郭は幻の様にぼうっと浮かび上がっている。
そして、そこには咥えられた一本の白い煙草。果肉に添えられた一本の白百合。
静寂に満たされた部屋の中、彼は熱を帯びる花の先端を彼女の花弁にゆっくりと近づける。罪悪感と少しの背徳感を抱えながら、彼女の瞳を見つめ、汗ばんだ首筋に指を走らせ、彼女の花に熱を移していく。
彼が今も時々見る幻想。もう、熱に行き場は無い。
コウはゆっくりと煙を吐いた。腕の幻肢痛も、思い出の彼女も、紫煙と共にゆっくりと霧散していく。
燻らせた紫煙の行方には、帰らずの影がひとつ。
壁に寄りかかり、ずるずると床に座り込んだ。煙草から落ちる灰が床に落ちることも厭わない。コウはただ虚空を見つめて煙草を吸い続ける。彼女の後を追う様に増えた、散乱した空き缶と煙草の吸い殻だけが、彼のいる部屋を静かに満たしていた。
そうして暫く突っ立ったあと、思い出した様に力無くポケットから煙草を取り出し、口に咥えて火をつけた。その穴を埋める様に、彼は冷えた煙を体に流し込む。
彼が煙草を吸う度に思い出す光景がある。
彼女の長く影を落とした睫毛、陶器の様な白い肌、果肉の様な唇、傾げた首、はだけた肩に刻まれた青い痣。
部屋の窓から入り込む街の明かりで、彼女の顔の輪郭は幻の様にぼうっと浮かび上がっている。
そして、そこには咥えられた一本の白い煙草。果肉に添えられた一本の白百合。
静寂に満たされた部屋の中、彼は熱を帯びる花の先端を彼女の花弁にゆっくりと近づける。罪悪感と少しの背徳感を抱えながら、彼女の瞳を見つめ、汗ばんだ首筋に指を走らせ、彼女の花に熱を移していく。
彼が今も時々見る幻想。もう、熱に行き場は無い。
コウはゆっくりと煙を吐いた。腕の幻肢痛も、思い出の彼女も、紫煙と共にゆっくりと霧散していく。
燻らせた紫煙の行方には、帰らずの影がひとつ。
壁に寄りかかり、ずるずると床に座り込んだ。煙草から落ちる灰が床に落ちることも厭わない。コウはただ虚空を見つめて煙草を吸い続ける。彼女の後を追う様に増えた、散乱した空き缶と煙草の吸い殻だけが、彼のいる部屋を静かに満たしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる