王国再興物語 〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

文字の大きさ
32 / 93

一騎討ち

しおりを挟む
「父上!アル1人で行かせるのは納得が行きません!私も行きます!相手は2人。私も行けば丁度いいはずです!」
「え、いや、それは……。」
 レノン王の先程までの聡明さが一瞬で消える。
 レノン王はなんと言うか親バカなところがあるようだ。
「あなた様。レインなら大丈夫ですよ。」
「む、ネロがそういうならそうだな。」
 あと妻にも弱いようである。
「では、アルフレッド、レインよ。この場を静めてこい。」
「「はい!」」

 周りを兵に囲まれながら互いに武器を構える。
 向こうは一騎討ちを受けるしかないような状況だったので仕方ないとも言えるが。
「このガキ供が!調子に乗りやがって!」
 珍しくスロールが怒りを露にしている。
「残念だけど貴方じゃ私にはかなわないと思うから降参した方が身のためよ?」
 レインの武器は薙刀で、かなり使いなれている様子である。
「さぁ、アルフレッドよ。死ぬ用意は出来たか?」
「残念ながら死ぬつもりは無いんでな。」
 ジェラルドは両手に武器を構えている。
 対するこちらはいつも通り片手のみだ。
「では、改めて説明しよう。」
 レノン王が立ち上がる。
「アルフレッド達が勝てばお主らは一生牢の中、もしくは処刑である。スロール殿らが勝てばなにもせず見逃そう。では、両者とも構え!」
 少しの沈黙が流れる。
 ピリピリとした緊張した空気だ。
「始め!」
 国王の声が響くと同時に互いに距離を詰め戦いが始まった。

「くっ!」
「まだ、本気じゃ無いんだけど?」
 レインは薙刀でスロールを圧倒していた。
 薙刀は個人戦ならば圧倒的に有利な、とても優秀な武器である。
 どのような武器でも薙刀にかなうものはいないのではないかとも言われているらしい。。
 しかし、集団戦闘になると同士討ちが増えてしまうらしく、向いていない。
 気を付けなければ振ると仲間に当たってしまうのだ。
 なので集団戦闘では使えない悲しい武器なのだ。
「これならどうだ!?」
 スロールは持っていた剣をレインに投げる。
「武器を捨てるなんて!愚作ね!」
 レインは難なくそれを払う。
 しかし、視界を奪われた一瞬で距離を詰められてしまう。
 そしてスロールの手には短剣があった。
 スロールは迷うことなく腹部目指して突き出してくる。
「!しまった!」
 咄嗟に薙刀を戻し柄で攻撃をそらす。
 しかし、ほんの少し遅く脇腹を掠めてしまう。
「油断したな!」
「この程度かすり傷よ!」
 再度薙刀を構える。
 スロールも短剣を構える。
 恐らくスロールは短剣を使う方が得意なのだろう。
「本気で行くわね。」
「……来い。」
 今度はレインから距離を詰める。
 距離が詰まるとレインは突きを繰り出した。
 しかしそれはスロールの右肩上部の空を突いた。
「馬鹿め!」
 それをチャンスとみたのかスロールはまた、レインの腹部を突こうとする。
「馬鹿はそっちよ。」
 レインは薙刀をそのままスロールの左脇腹の方へ目掛けて思い切り振り下ろす。
 薙刀は柄の部分がスロールの首に直撃し、スロールはそのまま気を失う。
「同じ手は2度も食わないわよ。」

「流石にきついか……。」
「オラァ!」
 ジェラルドの剣が地面を叩く。
 ジェラルドほどの巨漢から繰り出される剣はもはや斬るではなく叩き潰すといった方が正しい。
 恐らく一撃でも食らえば終わりだろう。
「これなら!」
 地面を叩いた伸びきった腕目掛けて切ろうとする。
 が、即座にもう片方の剣がこちらを突き刺そうとしてくる。
 即座に後ろへ飛び退き、事なきを得る。
 両手に武器を持っていると中々隙が出来ないので、難しい。
「ふぅ。」
「貴様何故笑っている。」
 気付くと自分は笑っていた。
「ふふ、すまない癖のようなものだ。」
「っ!息子を無惨に殺したあげく、この決闘までも侮辱するか!許せん!今すぐ死ねぇ!」
 また剣を振りかぶって下ろしてくる。
 そして俺はそれを避け、伸び切った腕を狙うがまた、もう片方の剣が襲ってくるのでそれを後ろに飛び退き避ける。
 同じようなやり取りをもう既に何度かくりかえしている。
 ので、今度は飛び退きつつも相手の右腕に剣を投げる。
 うまいこと刺さり、ジェラルドは出血する。
「ぐっ、たかがこの程度の傷、致命傷でも何でもないわ!それに自分の武器を投げ捨ておって馬鹿にしているのか!?」
「投げ捨てる?何を言ってるんだ?」
 俺は袖から伸びていた紐を手に取りそれを引っ張る。
 すると先程刺した剣が手元に帰ってくる。
 剣には紐が繋がっており、いつでも回収できるようにしていた。
 剣が刺さっていた箇所からは決して少なくはない量の血液が出てきている。
「どうした?投げ捨てる?お前の目は節穴か?」
「貴様!馬鹿にしおって!」
 再度突っ込んでくる。
 ここまでの戦いでこいつがどういう戦い方をするのか分かってきた。
 あとは、我慢勝負といったところか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...