王国再興物語　〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

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予兆

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(そろそろきついか。)
　俺は先程から同じような戦い方をしていた。　
　最初はジェラルドも脳筋なのか同じ手に引っ掛かってくれたが、そろそろ通用しなくなってきていた。
「ふん！」
「何！？」　
　そんなことを考えているとジェラルドが持っていた剣を二本とも投げてきた。
　一本目は避けることができたが二本目を剣で受け、そのまま剣が弾き飛ばされてしまった。
　あまりの勢いに繋いでいた紐が切れてしまった。
「貴様がスロールの真似をして剣を投げていたのはなんとなくわかっていた。だから俺も真似をしてやったぞ。」
　相手は武器が無いので格闘戦を挑んでくるようだ。
　そしてこちらも武器が無いので格闘戦で対応する。
　実はこちらの方が得意だったりする。
　昔自衛隊にいた叔父に叩き込まれていたからだ。
「貴様のような体格で、俺にかなうとでも思っているのか！？」
「そう思うならかかってきてみては？」
　挑発する。
　そしてジェラルドは思うように挑発に乗ってくれる。
「死ねぇ！」
　右手の拳が飛んでくる。
　しかし俺はそれをつかみ、その勢いをそのまま利用し、相手の右足側へと引く。
　それと同時に相手の右足首に足を引っ掻ける。　
　そして、さらに相手の顎を上へ押し上げ倒し、組伏せる。
　これは自衛隊の首返しと言われる技である。
　前世の叔父が役に立った。
「な、何！？」
「お疲れ様。」
　俺はそのままジェラルドの右腕を外す。
「ぐっ！」
「もう勝負はついただろ？降参しろ。」
　しかしまだ抵抗するジェラルド。
　まだ抑えられてない左腕で反撃してくる。
「もういいって。」
　しかし当たる前にジェラルドの顔面を一発思い切り殴る。
　鼻血が出ている。
　しかしまだ抵抗を続けるようなので殴り続ける。
　抵抗しなくなるまで。

「アル！」
　後ろからレインに声をかけられ意識が戻る。
「それ以上は死ぬよ！」
　気付けばジェラルドは最早抵抗する気配はなく、それどころか意識もない。
　最早無心で殴り続けていたようだ。
「あ、ありがとう。レイン。」
「大丈夫？殴りながら変なこと言ってたけど。」
「変なこと？」
　レインが言うには俺は殴りながら笑みを浮かべ、色々喋っていたようだ。
　死ねだとか調子に乗るなとか舐めやがって等、普段は言わないような暴言を吐きまくっていたらしい。
　向こうは降参だ、とかよしてくれとか言い続けていたらしい。
　どういうことだろうか。
　いくらなんでもそんなことを言うはずは無い。
　そもそも抵抗が無くなれば止めるつもりだった。
　何故か記憶が抜け落ちている。
「レイン、止めてくれてありがとう。」
「え、えぇ。」
　一体どういうことだろうか。
　俺自身に俺が理解出来てない何かがあるのだろうか。

「ふふっ。」
　水晶にはアルフレッド達が映っていた。
　水晶を見ているのは見覚えのある人物だった。
「想定通りに動いてくれましたね。」
「ミネルバ。」
　ミネルバと呼ばれた人物はアルフレッドを転生させた張本人である。
　そしてミネルバを呼んだ人物はミネルバに非常によく似ていた。
　そして手には飲み物を持っていた。
「向こうの調子はどうだい？」
「えぇ、大体想定通りに。」
　飲み物を受け取り、ミネルバはそれを飲む。
「さぁ、もっと争う姿を見せてくだいね。人間。」
「やはり君はいい性格をしているね。」
　ミネルバはうっすらと笑みを浮かべていた。
　

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