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あれから既に数日が経過した。
私たちは避難民に紛れ、城下町を脱し東へ向かっていた。
神刀派の勢力圏は以外と近く数日でつくことが出来た。
が、問題が発生していた。
「セインさん。流石にもうこれ以上は……。」
「いえ、この様なところで立ち止まっていては……痛ぁ!」
イリス殿に傷を触られ思わず叫ぶ。
傷が少し重かったのである。
薬の知識があるイリス殿に治療されつつ進んできたが、そろそろ限界が近づいていた。
無茶をしてここまではこれたのだが、険しい山道を、進むとなると流石に傷が開いてしまう。
私はここまでが限界だろう。
「仕方ありません、セラ殿。皆を率いて進んでください。」
「え、私ですか?」
少し驚いた顔をしている。
「今、若から最も信頼されているのはあなたです。私はこの場で傷を癒やしてから向かいます。一応補佐として私の副官のジョナサンをつれていってください。」
するとジョナサンとは物陰から姿を表す。
気配はまるで無かった。
隠密部隊に周囲の警戒と護衛を任じており、そのリーダーに任命していたのだ。
「ジョナサンともうします。宜しくお願いします。」
「あ、そういえばあなた。帝都強襲作戦の時皇帝のこと殺そうとしてた人でしょう?」
あの時、作戦会議の際ジョナサンもいたのだ。
自己紹介はしていないが認識していてもおかしくはない。
「まぁ、そうですね。残念ながら失敗してしまいましたが。」
「ですが、第一皇子の剣をかわしたのでしょう?十分凄いですよ!」
第一皇子の剣術の腕は超一流だということは帝国全土共通の認識である。
ただ、あの時は情報不足で第一皇子どころか皇帝ががいることすらわかっていなかった。
ただその場の最も偉い人物を暗殺するように言われていただけだった。
「では、参りましょう。」
ジョナサンは前へ進んでいく。
「あれ?ジョナサン?ちょっと冷たくない?一応私、君の上官なんだけど……。怪我してるんだけど……。何か言葉とかないの?」
するとジョナサンは振り返り、冷めた目でセインを見る。
「ま、頑張ってください。」
冷たい。
ものすごく冷たい。
「あの、何かしたんですか?セインさん。」
「いえ、帝都強襲作戦の時に死にかけたことを根にもっているようでして、それからというものずっとあのような感じなのです。……いえ、その前からもあんな感じですね。」
イリス殿の質問に答える。
「まぁ、指示には従ってくれるので問題は無いのですが、色々と大変で。」
「なるほど、確かに大変そうですね。」
ため息をつく。
「孤児だった彼を引き取って育ててきたのですが、育て方を間違えたのでしょうか……。」
「あれ?セインさんいくつでしたっけ?」
そういえば言っていなかった。
まぁ、特に言う必要も無かったからなのだが。
「私は25です。ジョナサンは16。若と同い年ですね。彼が5歳の時に引き取ったのですが引き取るには私の方がまだまだ幼かったようですね。育て方を知らなさすぎた。」
「ふふ。」
イリス殿が笑っている。
何かおかしなことを言っただろうか。
「あ、すいません。セインさん。多分大丈夫ですよ。」
「大丈夫とは?」
ジョナサンの方へと視線を移すイリス。
「それは多分反抗期ですから。」
「では、参りましょうセラ様。」
「え、えぇ。でもいいの?セイン殿にもう少し何か言ってあげなくて。」
流石にセインが可哀想に見えてくる。
「はい。必要ありませんので。」
「あ、そう……。」
彼も色々とあるのだろうり
こういうのは口を出さないのが最適だ。
「さて、イリス様と、数名も義父の傷の手当てと護衛で残るようなので、こちらはローゼン様と私とセラ様、そして私達。隠密部隊の30名の少数精鋭部隊となっております。何かあった場合些細な出来事なら我らのみで対処が可能ですが、予測不可能な出来事もございます。ここから先は奴等の勢力圏内です。セラ様に何かあったら若に顔向けできませんのでご注意を。」
もともとエルドニア王国の時からつれてきていた者と帝都強襲作戦の際、共に離脱した盗賊ギルドの面々は神聖シャムス帝国へと残してきた。
理由はあまりに大所帯だと怪しまれるというのと、神聖帝国の国防のためである。
国家を樹立出来たとはいえ、戦力は十分とは言えない今、少しでも戦力がほしいとのことでフレク様の元へと残してきたのである。
「わかったわ。私達も充分注意しながら進みましょう。ローゼン殿?聞いてます?」
「え?あぁ、聞いてます。聞いてますとも。」
やはり上の空と言った様子である。
私達の中でも随一の武力を誇る彼がこの調子では、少々不安だ。
少し喝をいれるとしよう。
「ローゼン殿。あなたが私達に協力してくれた理由はなんですか?」
「そ、それはフレン様への忠義の為です。」
これから言うことは少し卑怯な気もするが、仕方無い。
「忘れているかも知れませんが貴方は私やイリス達の親の仇なのです。私はあなた方を完全に信頼している訳ではありません。そのように心残りがあるのでしたら邪魔でしかないので今すぐこの場を去って、兄の元にでも行けばよいのでは?私は止めませんよ。両親の仇を討てる良い機会です。逆に行ってほしいくらいですよ。」
もちろん本心ではない。
もはや親の仇とは思っていないし、アルフレッド様の今後のためにも必要な存在である。
兄のことで頭を悩ませていることくらいは容易に想像がつく。
それにこういえば恐らく……。
「……申し訳ありません。」
唐突に頭を下げてくる。
「兄があそこまで領地に執着していたとは知らずに私はこれまでフレン様に忠義を尽くすことしか兄に話しておりませんでした。兄は元領主。領地に対する思いは私よりも重かったのでしょう。私は真っ直ぐ過ぎるので、そういった表に出てこない部分はわからんのです。領地のことなど忘れ忠義を尽くすことしか頭にありませんでした。もっと兄の気持ちを理解してやれていればこのような事態にもならずに、帝都強襲作戦の時に失った仲間達も無駄に死なずにすんだというのに……。」
ローゼンはそこまで考えていたのか。
正直もう少し単純だと思っていた。
「まぁ、先程のは冗談です。これから会う相手は最強とも言われる傭兵集団。私達の中でも随一の武力を持つ貴方がどうしても必要なのです。貴方のフレン様への忠義を私は信じていますよ。それに無駄死になんかしてませんよ。お陰で神樹の雫が手に入ったんですから。」
「あ、ありがとうございます!」
まあ、なんとか正気に戻ったようだ。
これならばこの先もなんとかなるだろう。
などと話しながら歩いていると妙な気配に気づく。
どうやらローゼンも気付いたようだ。
「止まってください。」
先行していたジョナサンが手を上げ止まるように指示を出す。
指示に従いこちらも止まる。
「囲まれています。」
確かに左右は切り立った崖。
1メートルと少しはあり、簡単には登れない。
奇襲には最適である。
すると正面から東方風の衣装の人物が表れた。
「ここから先は我ら神刀派の勢力圏である。何用か!?」
リーダーらしき白髪の老人が叫ぶ。
左右には2人ずつ手練れと思われる者がいた。
そしてその後ろにも1人いるのが確認できる。
するとジョナサンが1歩前へ出る。
「私たちは神聖シャムス帝国の使者だ。貴方達の助力を願いにこちらまで来た。話を聞いてはくれないだろうか?」
すると白髪の老人は後ろの者に目配せする。
すると目配せを受けた人物は来た道を引き返していった。
「断る!こちらも今は少々立て込んでいるのだ!どうしてもというのなら私達を力ずくで交渉の場へ引きずり出してみよ!」
すると老人と近くにいた数名の人物が刀を抜く。
それと同時に左右の崖に潜んでいた神刀派の者達も姿を表し、刀を抜く。
それと相手の使っている刀だが、フレン様が使っていた刀に似ている。
もしかするとこちらから流れてきたものかも知れない。
それと、どうやら血気盛んな者達のようだ。
「なるほど。やる気のようですね。面白い。受けて立ちましょう!」
「ちょ、ちょっとジョナサン!?勝手に決めないで!」
「ま、俺としても面白そうなんでいいんですけどね!」
ジョナサンとローゼンも武器を構える。
それにつられるように後続の部隊も武器を構える。
ローゼンもノリノリである。
まぁ、先程までの様子から立ち直れたのなら良かった。
それに、相手からは殺気が感じられない。
もし、相手が本気でこちらと戦う気なら殺気が飛んで来てもおかしくはないのだが。
まぁ、こうなってしまってはやるしかない。
「仕方ありません。」
相手は最強と言われる傭兵集団、神刀派。
決して油断して良い相手ではない。
「私も本気で行きます!」
槍を構える。
戦闘のプロ、そして刀の達人ともなれば槍では少々不利になるかもしれないがこちらの方がやはりやり易い。
「私は右側の2人を、ジョナサンは左の2人を、ローゼン殿は中央のリーダー格の老人を相手してください。」
「了解!」
「合点だ!」
息をととのえる。
「行きます!」
私たちは避難民に紛れ、城下町を脱し東へ向かっていた。
神刀派の勢力圏は以外と近く数日でつくことが出来た。
が、問題が発生していた。
「セインさん。流石にもうこれ以上は……。」
「いえ、この様なところで立ち止まっていては……痛ぁ!」
イリス殿に傷を触られ思わず叫ぶ。
傷が少し重かったのである。
薬の知識があるイリス殿に治療されつつ進んできたが、そろそろ限界が近づいていた。
無茶をしてここまではこれたのだが、険しい山道を、進むとなると流石に傷が開いてしまう。
私はここまでが限界だろう。
「仕方ありません、セラ殿。皆を率いて進んでください。」
「え、私ですか?」
少し驚いた顔をしている。
「今、若から最も信頼されているのはあなたです。私はこの場で傷を癒やしてから向かいます。一応補佐として私の副官のジョナサンをつれていってください。」
するとジョナサンとは物陰から姿を表す。
気配はまるで無かった。
隠密部隊に周囲の警戒と護衛を任じており、そのリーダーに任命していたのだ。
「ジョナサンともうします。宜しくお願いします。」
「あ、そういえばあなた。帝都強襲作戦の時皇帝のこと殺そうとしてた人でしょう?」
あの時、作戦会議の際ジョナサンもいたのだ。
自己紹介はしていないが認識していてもおかしくはない。
「まぁ、そうですね。残念ながら失敗してしまいましたが。」
「ですが、第一皇子の剣をかわしたのでしょう?十分凄いですよ!」
第一皇子の剣術の腕は超一流だということは帝国全土共通の認識である。
ただ、あの時は情報不足で第一皇子どころか皇帝ががいることすらわかっていなかった。
ただその場の最も偉い人物を暗殺するように言われていただけだった。
「では、参りましょう。」
ジョナサンは前へ進んでいく。
「あれ?ジョナサン?ちょっと冷たくない?一応私、君の上官なんだけど……。怪我してるんだけど……。何か言葉とかないの?」
するとジョナサンは振り返り、冷めた目でセインを見る。
「ま、頑張ってください。」
冷たい。
ものすごく冷たい。
「あの、何かしたんですか?セインさん。」
「いえ、帝都強襲作戦の時に死にかけたことを根にもっているようでして、それからというものずっとあのような感じなのです。……いえ、その前からもあんな感じですね。」
イリス殿の質問に答える。
「まぁ、指示には従ってくれるので問題は無いのですが、色々と大変で。」
「なるほど、確かに大変そうですね。」
ため息をつく。
「孤児だった彼を引き取って育ててきたのですが、育て方を間違えたのでしょうか……。」
「あれ?セインさんいくつでしたっけ?」
そういえば言っていなかった。
まぁ、特に言う必要も無かったからなのだが。
「私は25です。ジョナサンは16。若と同い年ですね。彼が5歳の時に引き取ったのですが引き取るには私の方がまだまだ幼かったようですね。育て方を知らなさすぎた。」
「ふふ。」
イリス殿が笑っている。
何かおかしなことを言っただろうか。
「あ、すいません。セインさん。多分大丈夫ですよ。」
「大丈夫とは?」
ジョナサンの方へと視線を移すイリス。
「それは多分反抗期ですから。」
「では、参りましょうセラ様。」
「え、えぇ。でもいいの?セイン殿にもう少し何か言ってあげなくて。」
流石にセインが可哀想に見えてくる。
「はい。必要ありませんので。」
「あ、そう……。」
彼も色々とあるのだろうり
こういうのは口を出さないのが最適だ。
「さて、イリス様と、数名も義父の傷の手当てと護衛で残るようなので、こちらはローゼン様と私とセラ様、そして私達。隠密部隊の30名の少数精鋭部隊となっております。何かあった場合些細な出来事なら我らのみで対処が可能ですが、予測不可能な出来事もございます。ここから先は奴等の勢力圏内です。セラ様に何かあったら若に顔向けできませんのでご注意を。」
もともとエルドニア王国の時からつれてきていた者と帝都強襲作戦の際、共に離脱した盗賊ギルドの面々は神聖シャムス帝国へと残してきた。
理由はあまりに大所帯だと怪しまれるというのと、神聖帝国の国防のためである。
国家を樹立出来たとはいえ、戦力は十分とは言えない今、少しでも戦力がほしいとのことでフレク様の元へと残してきたのである。
「わかったわ。私達も充分注意しながら進みましょう。ローゼン殿?聞いてます?」
「え?あぁ、聞いてます。聞いてますとも。」
やはり上の空と言った様子である。
私達の中でも随一の武力を誇る彼がこの調子では、少々不安だ。
少し喝をいれるとしよう。
「ローゼン殿。あなたが私達に協力してくれた理由はなんですか?」
「そ、それはフレン様への忠義の為です。」
これから言うことは少し卑怯な気もするが、仕方無い。
「忘れているかも知れませんが貴方は私やイリス達の親の仇なのです。私はあなた方を完全に信頼している訳ではありません。そのように心残りがあるのでしたら邪魔でしかないので今すぐこの場を去って、兄の元にでも行けばよいのでは?私は止めませんよ。両親の仇を討てる良い機会です。逆に行ってほしいくらいですよ。」
もちろん本心ではない。
もはや親の仇とは思っていないし、アルフレッド様の今後のためにも必要な存在である。
兄のことで頭を悩ませていることくらいは容易に想像がつく。
それにこういえば恐らく……。
「……申し訳ありません。」
唐突に頭を下げてくる。
「兄があそこまで領地に執着していたとは知らずに私はこれまでフレン様に忠義を尽くすことしか兄に話しておりませんでした。兄は元領主。領地に対する思いは私よりも重かったのでしょう。私は真っ直ぐ過ぎるので、そういった表に出てこない部分はわからんのです。領地のことなど忘れ忠義を尽くすことしか頭にありませんでした。もっと兄の気持ちを理解してやれていればこのような事態にもならずに、帝都強襲作戦の時に失った仲間達も無駄に死なずにすんだというのに……。」
ローゼンはそこまで考えていたのか。
正直もう少し単純だと思っていた。
「まぁ、先程のは冗談です。これから会う相手は最強とも言われる傭兵集団。私達の中でも随一の武力を持つ貴方がどうしても必要なのです。貴方のフレン様への忠義を私は信じていますよ。それに無駄死になんかしてませんよ。お陰で神樹の雫が手に入ったんですから。」
「あ、ありがとうございます!」
まあ、なんとか正気に戻ったようだ。
これならばこの先もなんとかなるだろう。
などと話しながら歩いていると妙な気配に気づく。
どうやらローゼンも気付いたようだ。
「止まってください。」
先行していたジョナサンが手を上げ止まるように指示を出す。
指示に従いこちらも止まる。
「囲まれています。」
確かに左右は切り立った崖。
1メートルと少しはあり、簡単には登れない。
奇襲には最適である。
すると正面から東方風の衣装の人物が表れた。
「ここから先は我ら神刀派の勢力圏である。何用か!?」
リーダーらしき白髪の老人が叫ぶ。
左右には2人ずつ手練れと思われる者がいた。
そしてその後ろにも1人いるのが確認できる。
するとジョナサンが1歩前へ出る。
「私たちは神聖シャムス帝国の使者だ。貴方達の助力を願いにこちらまで来た。話を聞いてはくれないだろうか?」
すると白髪の老人は後ろの者に目配せする。
すると目配せを受けた人物は来た道を引き返していった。
「断る!こちらも今は少々立て込んでいるのだ!どうしてもというのなら私達を力ずくで交渉の場へ引きずり出してみよ!」
すると老人と近くにいた数名の人物が刀を抜く。
それと同時に左右の崖に潜んでいた神刀派の者達も姿を表し、刀を抜く。
それと相手の使っている刀だが、フレン様が使っていた刀に似ている。
もしかするとこちらから流れてきたものかも知れない。
それと、どうやら血気盛んな者達のようだ。
「なるほど。やる気のようですね。面白い。受けて立ちましょう!」
「ちょ、ちょっとジョナサン!?勝手に決めないで!」
「ま、俺としても面白そうなんでいいんですけどね!」
ジョナサンとローゼンも武器を構える。
それにつられるように後続の部隊も武器を構える。
ローゼンもノリノリである。
まぁ、先程までの様子から立ち直れたのなら良かった。
それに、相手からは殺気が感じられない。
もし、相手が本気でこちらと戦う気なら殺気が飛んで来てもおかしくはないのだが。
まぁ、こうなってしまってはやるしかない。
「仕方ありません。」
相手は最強と言われる傭兵集団、神刀派。
決して油断して良い相手ではない。
「私も本気で行きます!」
槍を構える。
戦闘のプロ、そして刀の達人ともなれば槍では少々不利になるかもしれないがこちらの方がやはりやり易い。
「私は右側の2人を、ジョナサンは左の2人を、ローゼン殿は中央のリーダー格の老人を相手してください。」
「了解!」
「合点だ!」
息をととのえる。
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