王国再興物語 〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

文字の大きさ
39 / 93

対策

しおりを挟む
『で、お前はそのまま気を失ったと?』
「はい。」
 あのあとはセラの鉄拳を食らって気を失った。
 気を取り戻してすぐに緊急の要件だったので、急ぎ、フレク様に報告し、アナテル国王および若と遠話水晶にて状況説明をしていた。
 因みに私は肩の傷を手当てされている。
「しかし、オルフェンまでもが裏切っていたとはな。」
『申し訳ありません叔父上、私もルーゼンを見抜けませんでした。』
 つまり、今はこちらの情報は筒抜けで、今後帝国に対しどのような行動を取るか読まれているということである。
『それに、教団ときたか。』
 レノン王は私が謎の武器により肩を負傷したと言ったとき、声だけだが少し様子が変であった。
 何か気になることでもあるのだろうか。
「ですが、戦力的には優位にたっているのは代わりありません。帝国最強の竜騎兵隊は我々が、この大陸で最強の海軍も味方です。そして、エルドニア貴族連合はこちらの行動に会わせて蜂起する。帝国は強大といえど、戦力差は五分でしょう。」
 若からアラン叔父上が色々と策を練っていたと聞いている。
『叔父上、いくつかよろしいでしょうか?』
 若が声をあげる。
『教団の者が潜り込んでいた今、信頼していた者も信頼するのが難しくなってきました。念のため、戦力をもうひとつ用意しておいては?』
『しかし、そんなことを言っても何処に助力をこうというのだ?アルフレッドよ?』
 確かに戦力は必要だが、これ以上味方になりそうな勢力は思い付かない。
 だが、帝国包囲網を形成するにはもうひと押しほしいところではある。
『傭兵を雇いましょう。』
 その場にいたものたちが静まり返る。
『報酬は帝国及び、戦争により、管理するもののいなくなったエルドニアの領土で手を打つ。これならば傭兵も加勢すると思いますが?』
 確かにエルドニアは初戦でたくさんの将が討ち死にし、空き地になっている領土が多々あるだろう。
「アルフレッドよ。傭兵は信用してはならん。あれほど狂暴で、理性のない集団など、他には居ないのだぞ。」
『そうだ。報酬については悪くない考えだとも思うが、傭兵はやめておこう。その報酬を出せば集まる普通の兵も増えるだろう。それで十分じゃないか?』
 水晶の向こうからうっすら笑い声が聞こえる。
 若の悪い癖が始まったようである。
 幸いにも私にしかきこえていなかったようだ。
『遥か東の険しい山脈の中に隠れすんでいる武人の集まりが傭兵をやっていると聞きます。彼らならば乱暴はしませんし、独自の宗教なので、教団の疑いもありません。』
 さすがは若である。
 その傭兵集団は恐らく最初から戦力として換算していたのだろう。
 そして、教団との内通の疑いも無い。
 そこまで読んでいたのだ。
「まぁ、アルフレッドがそこまで言うのなら……。」
『それならば特に心配も無く勝てそうだな。』
 どうやら両国王も納得したようだった。
「ですが、お三方。恐らく教団はここの襲撃を計画しております。そちらはどうされるので?」
「教団の兵は一騎当千と聞く。いくら竜騎兵といえども苦戦は免れないだろう。」
 全員が黙りこみ、考える。
 正直、現状ここを捨てるのが最善な気がする。
 守りきれないのならば捨てて攻勢に出るしかないだろう。
 しかし、それでは付近に潜んでいると思われる教団と帝国に挟み撃ちされる形になってしまう。
 さてどうしたものか。
『では、こうしましょう。』
 若が口を開く。
『部隊を2つにわけ、片方は予定通り帝国へ侵攻、もう片方は傭兵を雇いに東へ向かう。東へ向かう部隊は帝国への侵攻の数日前には発ちます。そして、雇い次第神聖帝国へと戻ります。帝国へと侵攻を開始すれば手薄になった城を教団が攻撃するでしょう。そこで、帝国へ向かった部隊は転進します。こうすれば、挟み撃ちしようと出てきた教団を逆に挟み撃ちにすることが出来るでしょう。まぁ、最も可能性が高いのは敵が計画がバレたので何か別の策を用意するということですが。』
 両国王から感嘆の声があがる。
「なるほど。それなら……。」
『行けそうだな。』
 この計画ならば、なんとかなりそうである。
 しかし、1つ不安要素がある。
 一体誰が交渉しに行くのかである。
 いや、もうなんと無くはわかったのだが。
『傭兵との交渉はセイン。頼まれてくれるか?』
「かしこまりました。」
 即答する。
 恐らくそれが最も正しい選択であるからだ。
『必ず成功させてきてくれよ。』
「畏まりました。」

「と、いうことで。東へ向かいます。」
 全員が嫌そうな顔をする。 
 セラはこちらをにらんできている。 
 説明もしたので、そろそろ許してほしいのですが。
「状況は先程説明した通りなのですが、ローゼン殿、よろしいか?」
「ん?あぁ、問題ない。」
 ルーゼンが寝返っていたことをしってからずっと心ここにあらずといった感じである。
 その報告を聞いたときはものすごい驚いていた。
「あのー?」
「何か?イリス殿?」
 手をあげていたイリス。
「この行動、教団に補足されないんですか?」
「はい。現在この都一帯に国外への逃亡を許可するとして、国境や城下町からは無数の民が逃げて行っておりますので。」
 それに紛れれば大丈夫だろうと伝えた。
「なるほど。わかりました。」
 私の行動によって、東の山脈の傭兵集団『神刀派』。
 最強とも言われる彼らがこちらに協力してくれるかどうかで、この大陸の行く末が決まってくるのだ。
 しかし、このようなときこそ邪魔が入り、うまくいかないものである。
(なにもなければいいんだが……。)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...