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新たな敵
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「ほら、これが効率的な侵入経路だ。この通りなら見つからずに潜入出来るだろう。」
「ご苦労様。」
角から様子を見守る。
ルーゼンはなにやら少年に先程のメモを渡しているようであった。
「で、教団はいつ動くんだ?それにあわせてこちらも動くつもりだ。」
「まぁ、私は今すぐにでも行って皆殺しにしたいんだけどね?ランがね?」
そういうと少女は隣の少年を見る。
「そういうわけにもいかないだろう?リン。俺達は集団で行動してるんだから。皆殺しにしたいのは確かにそうだけどさ。」
ランと呼ばれた少年はリンと呼ばれた少女を諭す。
恐らく双子なのだろう。
2人とも瓜二つで、茶髪で身長も近い。
体もまだ幼いので身体的特徴もそれほど出ておらず服装を整えれば影武者として行動することも出来るだろう。
「にしても教団は一体どうしてこんなことまでしてるんだ?」
教団と言われて思い浮かぶのは一つしかない。
この大陸に古くから根付いている宗教。
ミネルバ教、そしてその宗教団体であるミネルバ教団。
教団は独自に兵を抱えており、その強さは大陸随一だと言われている。
教団の拠点はここから遥か北の険しい山脈を越えた先の国だったはずだが、なぜこの様なところにいるのだろうか。
(ここは1度退いて報告するだけ報告しておくか?いや、できるだけ多くの情報を若に伝えなくてはならない。もう少しだけ調べておこう。)
「そんなのミネルバ様のお告げがあったからに決まってるでしょ?」
「そんなこともわからないとかバカすぎない?」
どうやらリンと呼ばれた少女の方は少し口調が厳しいようだ。
「それもそうか。まぁ俺は領地さえ貰えればそれでいいからな。セイルズ殿にもよろしく伝えておいてくれ。」
なるほど。
セイルズは、教団と通じている、もししくは教団の人間だということだろう。
やはり獄中で、勧誘されたのだろうか。
そして今回のこのエシルス大陸の大乱は全てこの教団が糸を引いていたということか。
よし。
ここまで情報を集められれば上々だろう。
退散するとしよう。
「で、いつまでそこで隠れてるつもりだい?」
とっとと去ろうとしたとたん呼び止められてしまった。
殺気と共に言葉が飛んできて思わず立ち止まってしまった。
ここまでの殺気を放てるのは相当の手練れということだろう。
恐らくただでは逃げられない。
腹を括って出ていくことにする。
「……いつから気付いていた?」
角から出ていく。
ランと呼ばれた少年は身の丈に合わない大剣をこちらに向けている。
リンと呼ばれた少女は見たこともないなにやら細長い筒状の物をこちらに向けている。
詳細はわからないが、恐らく武器なのだろう。
「な、セイン殿!?いつの間に!?」
ルーゼンはつけられていたことに気づいていなかったらしく驚いていた。
「まぁ、最初からいたよ。そいつ。てか本当に気付いて無かったのかよ!使えない奴だな!」
「確かに気配の消し方はうまかったけどまだまだね。ねぇラン。殺していいよね?」
リンと呼ばれた少女の方からも殺気が飛んでくる。
この調子では武器を構えようとしただけでもすぐに殺されそうだ。
「まぁ、いいけど少し遊んでからにしようよ。」
「フフ。そうだねそれくらい良いよねぇ?」
双子は笑みを浮かべる。
「ならばこちらも、ただで殺されるつもりはありませんので。」
武器を構える。
やはり先程遊ぶなどと言っていたので構えることはさせてくれた。
果たして自分の腕前でかなうかどうか。
「じゃあ俺からいくね。」
速い。
ランは一気に距離を詰めてきた。
あの大剣を持っているとは思えない動きである。
「くっ!」
急いで相手の剣をうけとめる。
が、一撃がとてつもなく重い。
今の一撃をまともに受けていたら即死だっただろう。
「あれ?本気出してないとはいえ、僕の一撃を防いだ。お兄さん中々やるね?」
「それはどうも。これでも若の剣術指南役なのでね。」
しかし、今の一瞬でわかった。
勝てない。
今の状態では、何をどうやっても勝てないだろう。
もう一撃くらえばこちらの剣も先程の一撃でもうもたないので、剣ごと粉砕されて終わりだろう。
「セイン殿!」
声に反応し後ろに退く。
すると突然ランに向け槍の攻撃がはなたれる。
攻撃の方向を見るとそこにはオルフェンがいた。
「オルフェン殿!」
「巡回中に何か大きな音が聞こえたので来てみればこのようなことになってるとは。とりあえず手助け致しましょう。」
正直今の状況での援軍は大変ありがたい。
「ありがとうございます。」
「ちっ!せっかくの良いところをさぁ!死ぬ覚悟は、できてるよねぇ?」
恐ろしいほどの殺気が飛んでくる。
しかし、何か見落としている気がする。
何か違和感が……。
「どうされました?」
「い、いえ何でもありません。」
そうだ。
この近辺は巡回ルートには入っていないのだ。
だが、急遽変更になったとか、何か訳があるのだろう。
ならば聞いてみればいい。
「そういえばこの辺りは巡回ルートではないのでは?」
「……急遽変更致しました。たまには突拍子もないルートを通らなければ、警備の意味がありません。」
なるほどごもっともだ。
しかし、まだ違和感がのこる。
そうだ。
若が海に落ちた時。
ルーゼンが知らせたのだと思っていたが、それはいつだ?
少なくともそのような余裕は無かった。
すぐそばには自分がいたからそれは分かる。
ならば他にその状況を知っていて直ぐにこの教団の元へと知らせることが出来る人物。
……一人いる。
あの時セラ殿が若が海に落ちたとき真っ先に助力を願った人物が一人。
隣を見ると今まさにこちらを槍で攻撃しようとしているオルフェンがいた。
「くっ!」
急ぎ退く。
「ちっ!気づかれたか。」
少しかすったが致命傷ではない。
そうか。
オルフェンが寝返っていたと考えれば、竜騎兵だったので別の地点の人物に伝えるのに時間はそれほどかからない。
伝令役としては適材だったということだ。
「まさかあなたまでもが裏切っていたとは……。一体何故ですか!?」
「何故?簡単なことです。」
その顔には気持ちの悪いほどの笑顔が浮かんでいる。
「セラ殿を私のものにしてもらえるからです。」
とんでも無いことを言い出した。
ストーカーじみていたというのは聞いていたが、ここまでとは。
「今回の大乱に対し教団に手を貸せば望むものを与えると言われて私は迷わずセラ殿と答えました。あのように美しくたくましいお方は他には居ない!あの方を私のだけのものに!その為にはフレン様とアルフレッド様が邪魔でした。2人が消えればその空白に私が入り込むのです。そして私はセラ殿と!フフフ……ハハハハハ!」
狂っている。
なんとかこの場を脱しこの事を若とセラ殿に伝えなくてはならない。
仕方ない。
ここは1度しか使えない神具を使うとしよう。
「ここで見聞きしたことは全ての若とフレク様にお伝えさせてもらいます。どうやらここを襲撃するつもりのようでしたがそんなことはさせません。」
「この状況でどうやって逃げるっていうのさ。」
ランは笑っている。
しかし、無策でこんなところに来るはずもない。
懐から紐の付いた碧い宝石を取り出す。
石が光りだすと足元に魔方陣のようなものが表れ、光る。
「神具、転移の石。これを使えば念じた相手のもとへ一瞬で行くことが出来ます。では、失礼します。」
「させない!」
大きな音と共にセインの肩部に穴が開く。
そしてもちろん出血もする。
「ぐっ!」
「あれ、やっぱりこれ難しいわね。」
「おい!ちゃんと狙えよ!」
唐突の攻撃に膝をついてしまう。
しかし、もう既に転移は始まった。
(あの武器は危険だ。あれも含め若に伝えなくては。)
肩を押さえつつ目の前が光に包まれる。
念じた相手はセラの元である。
まずはこの大陸の最も信頼のおける人物の元へといかなければと思ったからである。
アルフレッド様の元でも良いかもしれないがこちらの方が戦力的には必要なので神聖帝国側にしておく。
しかし、セインは激しく後悔した。
「え?」
「……あ。」
セラの元へは行けた。
しかし、セラは入浴中であった。
セインは湯船の中へとワープしたのである。
セラからすればいきなり目の前にセインが表れ、そして湯船に浸かっているとはいえ、全裸を見られたのである。
そしてここは公衆浴場のようにいろんな人物が使う場所である。
メイドやここの使用人など、たくさんの人物が周りにはいた。
注目を浴びる。
「……あー、まぁ、その、殴ってくれて、構いません。」
「では……そうさせてもらいます!」
セラは体を布で隠しながら思い切り殴る。
隠すほどのものも無いだろうと思いつつ倒れる。
今日の出血箇所が一ヶ所増えてしまった。
「ご苦労様。」
角から様子を見守る。
ルーゼンはなにやら少年に先程のメモを渡しているようであった。
「で、教団はいつ動くんだ?それにあわせてこちらも動くつもりだ。」
「まぁ、私は今すぐにでも行って皆殺しにしたいんだけどね?ランがね?」
そういうと少女は隣の少年を見る。
「そういうわけにもいかないだろう?リン。俺達は集団で行動してるんだから。皆殺しにしたいのは確かにそうだけどさ。」
ランと呼ばれた少年はリンと呼ばれた少女を諭す。
恐らく双子なのだろう。
2人とも瓜二つで、茶髪で身長も近い。
体もまだ幼いので身体的特徴もそれほど出ておらず服装を整えれば影武者として行動することも出来るだろう。
「にしても教団は一体どうしてこんなことまでしてるんだ?」
教団と言われて思い浮かぶのは一つしかない。
この大陸に古くから根付いている宗教。
ミネルバ教、そしてその宗教団体であるミネルバ教団。
教団は独自に兵を抱えており、その強さは大陸随一だと言われている。
教団の拠点はここから遥か北の険しい山脈を越えた先の国だったはずだが、なぜこの様なところにいるのだろうか。
(ここは1度退いて報告するだけ報告しておくか?いや、できるだけ多くの情報を若に伝えなくてはならない。もう少しだけ調べておこう。)
「そんなのミネルバ様のお告げがあったからに決まってるでしょ?」
「そんなこともわからないとかバカすぎない?」
どうやらリンと呼ばれた少女の方は少し口調が厳しいようだ。
「それもそうか。まぁ俺は領地さえ貰えればそれでいいからな。セイルズ殿にもよろしく伝えておいてくれ。」
なるほど。
セイルズは、教団と通じている、もししくは教団の人間だということだろう。
やはり獄中で、勧誘されたのだろうか。
そして今回のこのエシルス大陸の大乱は全てこの教団が糸を引いていたということか。
よし。
ここまで情報を集められれば上々だろう。
退散するとしよう。
「で、いつまでそこで隠れてるつもりだい?」
とっとと去ろうとしたとたん呼び止められてしまった。
殺気と共に言葉が飛んできて思わず立ち止まってしまった。
ここまでの殺気を放てるのは相当の手練れということだろう。
恐らくただでは逃げられない。
腹を括って出ていくことにする。
「……いつから気付いていた?」
角から出ていく。
ランと呼ばれた少年は身の丈に合わない大剣をこちらに向けている。
リンと呼ばれた少女は見たこともないなにやら細長い筒状の物をこちらに向けている。
詳細はわからないが、恐らく武器なのだろう。
「な、セイン殿!?いつの間に!?」
ルーゼンはつけられていたことに気づいていなかったらしく驚いていた。
「まぁ、最初からいたよ。そいつ。てか本当に気付いて無かったのかよ!使えない奴だな!」
「確かに気配の消し方はうまかったけどまだまだね。ねぇラン。殺していいよね?」
リンと呼ばれた少女の方からも殺気が飛んでくる。
この調子では武器を構えようとしただけでもすぐに殺されそうだ。
「まぁ、いいけど少し遊んでからにしようよ。」
「フフ。そうだねそれくらい良いよねぇ?」
双子は笑みを浮かべる。
「ならばこちらも、ただで殺されるつもりはありませんので。」
武器を構える。
やはり先程遊ぶなどと言っていたので構えることはさせてくれた。
果たして自分の腕前でかなうかどうか。
「じゃあ俺からいくね。」
速い。
ランは一気に距離を詰めてきた。
あの大剣を持っているとは思えない動きである。
「くっ!」
急いで相手の剣をうけとめる。
が、一撃がとてつもなく重い。
今の一撃をまともに受けていたら即死だっただろう。
「あれ?本気出してないとはいえ、僕の一撃を防いだ。お兄さん中々やるね?」
「それはどうも。これでも若の剣術指南役なのでね。」
しかし、今の一瞬でわかった。
勝てない。
今の状態では、何をどうやっても勝てないだろう。
もう一撃くらえばこちらの剣も先程の一撃でもうもたないので、剣ごと粉砕されて終わりだろう。
「セイン殿!」
声に反応し後ろに退く。
すると突然ランに向け槍の攻撃がはなたれる。
攻撃の方向を見るとそこにはオルフェンがいた。
「オルフェン殿!」
「巡回中に何か大きな音が聞こえたので来てみればこのようなことになってるとは。とりあえず手助け致しましょう。」
正直今の状況での援軍は大変ありがたい。
「ありがとうございます。」
「ちっ!せっかくの良いところをさぁ!死ぬ覚悟は、できてるよねぇ?」
恐ろしいほどの殺気が飛んでくる。
しかし、何か見落としている気がする。
何か違和感が……。
「どうされました?」
「い、いえ何でもありません。」
そうだ。
この近辺は巡回ルートには入っていないのだ。
だが、急遽変更になったとか、何か訳があるのだろう。
ならば聞いてみればいい。
「そういえばこの辺りは巡回ルートではないのでは?」
「……急遽変更致しました。たまには突拍子もないルートを通らなければ、警備の意味がありません。」
なるほどごもっともだ。
しかし、まだ違和感がのこる。
そうだ。
若が海に落ちた時。
ルーゼンが知らせたのだと思っていたが、それはいつだ?
少なくともそのような余裕は無かった。
すぐそばには自分がいたからそれは分かる。
ならば他にその状況を知っていて直ぐにこの教団の元へと知らせることが出来る人物。
……一人いる。
あの時セラ殿が若が海に落ちたとき真っ先に助力を願った人物が一人。
隣を見ると今まさにこちらを槍で攻撃しようとしているオルフェンがいた。
「くっ!」
急ぎ退く。
「ちっ!気づかれたか。」
少しかすったが致命傷ではない。
そうか。
オルフェンが寝返っていたと考えれば、竜騎兵だったので別の地点の人物に伝えるのに時間はそれほどかからない。
伝令役としては適材だったということだ。
「まさかあなたまでもが裏切っていたとは……。一体何故ですか!?」
「何故?簡単なことです。」
その顔には気持ちの悪いほどの笑顔が浮かんでいる。
「セラ殿を私のものにしてもらえるからです。」
とんでも無いことを言い出した。
ストーカーじみていたというのは聞いていたが、ここまでとは。
「今回の大乱に対し教団に手を貸せば望むものを与えると言われて私は迷わずセラ殿と答えました。あのように美しくたくましいお方は他には居ない!あの方を私のだけのものに!その為にはフレン様とアルフレッド様が邪魔でした。2人が消えればその空白に私が入り込むのです。そして私はセラ殿と!フフフ……ハハハハハ!」
狂っている。
なんとかこの場を脱しこの事を若とセラ殿に伝えなくてはならない。
仕方ない。
ここは1度しか使えない神具を使うとしよう。
「ここで見聞きしたことは全ての若とフレク様にお伝えさせてもらいます。どうやらここを襲撃するつもりのようでしたがそんなことはさせません。」
「この状況でどうやって逃げるっていうのさ。」
ランは笑っている。
しかし、無策でこんなところに来るはずもない。
懐から紐の付いた碧い宝石を取り出す。
石が光りだすと足元に魔方陣のようなものが表れ、光る。
「神具、転移の石。これを使えば念じた相手のもとへ一瞬で行くことが出来ます。では、失礼します。」
「させない!」
大きな音と共にセインの肩部に穴が開く。
そしてもちろん出血もする。
「ぐっ!」
「あれ、やっぱりこれ難しいわね。」
「おい!ちゃんと狙えよ!」
唐突の攻撃に膝をついてしまう。
しかし、もう既に転移は始まった。
(あの武器は危険だ。あれも含め若に伝えなくては。)
肩を押さえつつ目の前が光に包まれる。
念じた相手はセラの元である。
まずはこの大陸の最も信頼のおける人物の元へといかなければと思ったからである。
アルフレッド様の元でも良いかもしれないがこちらの方が戦力的には必要なので神聖帝国側にしておく。
しかし、セインは激しく後悔した。
「え?」
「……あ。」
セラの元へは行けた。
しかし、セラは入浴中であった。
セインは湯船の中へとワープしたのである。
セラからすればいきなり目の前にセインが表れ、そして湯船に浸かっているとはいえ、全裸を見られたのである。
そしてここは公衆浴場のようにいろんな人物が使う場所である。
メイドやここの使用人など、たくさんの人物が周りにはいた。
注目を浴びる。
「……あー、まぁ、その、殴ってくれて、構いません。」
「では……そうさせてもらいます!」
セラは体を布で隠しながら思い切り殴る。
隠すほどのものも無いだろうと思いつつ倒れる。
今日の出血箇所が一ヶ所増えてしまった。
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