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最悪の状況
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「おい!こっちに来てくれ!」
現在ギルドでは、大忙しであった。
提供してくれた兵による捜索で、まだ抵抗していたアナテル国軍を発見したのだ。
我々と同じように住民を保護し、護衛していた。
が、囚人や陽炎部隊に気付かれ襲撃を受け、壊滅寸前だった所を救助したのだ。
取り敢えずギルドに集めることで話がつき、先に負傷者がギルドについた。
「陛下!失礼します。」
取り敢えず部下が生きていた事をレノン王にお伝えしようと部屋へと入る。
しかしそこにレノン王の姿は無く、窓は開かれていた。
「ま、まさか……。」
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます。」
俺達は捕縛されていた住民を解放していた。
しかし、住民の数は予想していたよりも少なく、やはり襲撃を受けた際にほとんどが殺されたということはだろう。
そして、ゼイルが戦った相手も少し取り逃がしたらしく、恐らく既に報告はされていると予測される。
因みにだが降伏した敵も解放している。
あわよくば、逆にここで敵を迎え撃てるからだ。
「しかし、本当に来ますかね?」
「まぁ、バイゼルが来るかどうかは分からないが、敵は来るだろうさ。そうだな。ゼイル殿、マイン殿に隙を見て城内に突入するように伝えてきてはくれないか?」
敵の主力がこちらに来ればマインの方面の敵も手薄になる。
そうすればこちらの主力も突入出来るので、最早勝ちは確定である。
そのため、単独行動が可能なゼイル殿に動いてもらう。
「了解した。しかし、こちらは大丈夫ですか?」
「まぁ、しばらくは大丈夫さ。」
すると、ゼイルは大聖堂を後にした。
ゼイルがいなくてもなんとかはなりそうである。
ゼイルが戻ってくる前に敵が来ても、うまくいけば挟み撃ちに出来るからだ。
まぁ、一番最悪なのは……。
いや、考えるのはやめよう。
こういうときに考えたらそれが実際に起こってしまう。
「アルフレッド様。」
「どうした?セラ?」
するとセラが近づいてきた。
「救助した者の中に共に戦いたいと言う者がおります、どうなさいますか?」
「良いんじゃない?」
すると話を聞いていたレインが話に加わってくる。
「アナテルの民は皆武器の扱いにはなれているわ。頼りになると思うけど。」
「ああ。異存はない。良いだろう。」
セラは了解したことを告げると、住民達の元へと戻っていった。
「しかし、頼りになる民だな。」
「ええ。自慢の国民よ。」
レインは少し誇らしげに言う。
レイン自身も嬉しかったのだろう。
「さぁ、敵に備えるとしようか。新たに加わる住民隊は正面に。左右の二階から弓で狙う部隊を元々連れてきた手勢からそれぞれレインとセラで分けて率いてくれ。敵を大聖堂内に引き込み、殲滅する。」
少数で大軍と戦う時の鉄則に敵を隘路に引き込むというのがある。
それを建物内でやるということだ。
共に戦ってくれる者達は数名だろうが、とてもありがたい。
正面には俺がいるので多少はカバーできるだろう。
これならば、なんとか戦えそうだ。
住民達の様子を見ると、先ほど倒した敵兵達の鎧を剥ぎ取って装備している。
たくましい人たちだ。
「3時の方向に敵!10時の方向も!」
マイン率いる本隊は敵と交戦中であった。
相手は街中であることを利用してゲリラ戦術をとってくるので非常に面倒な相手であった。
幸いにも、敵の数が多くはなかったので大した被害もなく、一進一退の攻防といった状況である。
馬上より指揮を取ることで奇襲してくる敵を早期に発見しているのである。
「マイン様!上です!」
部下の声で上を見る。
すると敵が高台から飛びかかってきていた。
先程までの中途半端な攻勢はこの本命の攻撃を誤魔化す為のフェイクだったのだ。
「くっ!」
すぐさま対応しようとする。
が、流石に手遅れだ。
敵の剣の切っ先が目の前までくる。
死を覚悟したその瞬間、敵の姿は無かった。
既に剣が突き刺さった状態で近くに転がっていた。
「……え?」
「ふぅ。間に合ったな。」
声のする方向を見るとそこにはアルフレッドの元に居るはずのゼイルがいた。
どうやら剣を投げて助けてくれたようだ。
「ゼ、ゼイル殿!?なぜこちらに!?」
「いや、アルフレッド様から頃合いを見て城内の大聖堂まで進軍してくれと伝えるように言われてな。」
ゼイルは辺りを見渡す。
「……無理そうだな。」
「ええ、見ての通りです。」
長いことこの状況が続き兵達に疲労が溜まってきている。
「まぁ、もうすぐ敵も減るはずだからな。俺もこのままここに残って戦おう。」
「ありがとうございます。百人力です。」
S級冒険者が共に戦ってくれるのならば兵の士気も上がる。
本当に助かる。
「全軍!進め!」
最悪である。
マインの本隊がまだ来ない。
なのに敵が来てしまった。
ただの敵が来たのならまだ良い。
なぜこいつらがいる。
「ねぇラン。こいつあの男の娘だよね。散々痛めつけてから殺してやろうよ。」
「お!いいねぇ!逆に殺してくださいって言いたくなるくらいのことやろうぜ!」
リンとランが居るのである。
この双子はレノン王が深手を与えたと聞いていたがなぜいるのだろうか。
しかも……。
「おい、二人共程々にしておけ。気持ちは分かるがな。」
バイゼルまで来ている。
正直、圧倒的不利だ。
まぁ、正直これだけならばなんとかなったかも知れない。
「いや、良いだろう。やらせておこう。俺も息子の仇を前にしたら何をするかわからんからな。」
ジェラルドまでいる。
もう無理ゲーだろこれ。
しかし、無理ゲーだと思うとやはりにやけてしまう。
悪い癖だ。
こんな状況を楽しみにしている自分がいる。
「何を笑っている?」
「いや、すまんねジェラルド殿。他意は無いんだ。」
恐らくだがジェラルドは自分が姿を隠すことで俺、もしくはこちらのリーダー格をおびき出そうとしたんだろう。
脳筋かと思ったが、頭は回るようだ。
「笑ってられるのも今のうちだ。直ぐに苦痛を味あわせてやる。」
「良いだろう!かかってこい!」
自分からは決して行かない。
もう少しこちらに来てくれれば弓兵の射程範囲内になる。
「バイゼル!」
すると2階にいるはずのレインの声がすぐそこから聞こえた。
レインが降りてきていた。
「母上の仇!」
レインはそのまま斬りかかろうとしたところを止める。
「落ち着け!気持ちはわかるが今は抑えてくれ!」
俺の言葉でなんとか収まってくれたのか、落ち着いた。
「……ごめんなさい。取り乱したわ。」
「数の上でも士気でも全てが向こう側が有利だ。今こちらから仕掛けたら絶対に負ける。今は耐えろ。」
向こうから来てくれるのなら対応のしようはあるが、正直なところジェラルドが来たことで負ける未来しか見えない。
本来ならジェラルドにはゼイルを当てるつもりだったが、今は出来ない。
「アル、勝てるの?」
「……ま、なんとかやってみるか。」
正直勝てる見込みは殆ど無いが、ゼイルとマインが来てくれればまだなんとかなる。
さぁどれだけ時間が稼げるかわからないがやって見るとしようか。
現在ギルドでは、大忙しであった。
提供してくれた兵による捜索で、まだ抵抗していたアナテル国軍を発見したのだ。
我々と同じように住民を保護し、護衛していた。
が、囚人や陽炎部隊に気付かれ襲撃を受け、壊滅寸前だった所を救助したのだ。
取り敢えずギルドに集めることで話がつき、先に負傷者がギルドについた。
「陛下!失礼します。」
取り敢えず部下が生きていた事をレノン王にお伝えしようと部屋へと入る。
しかしそこにレノン王の姿は無く、窓は開かれていた。
「ま、まさか……。」
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます。」
俺達は捕縛されていた住民を解放していた。
しかし、住民の数は予想していたよりも少なく、やはり襲撃を受けた際にほとんどが殺されたということはだろう。
そして、ゼイルが戦った相手も少し取り逃がしたらしく、恐らく既に報告はされていると予測される。
因みにだが降伏した敵も解放している。
あわよくば、逆にここで敵を迎え撃てるからだ。
「しかし、本当に来ますかね?」
「まぁ、バイゼルが来るかどうかは分からないが、敵は来るだろうさ。そうだな。ゼイル殿、マイン殿に隙を見て城内に突入するように伝えてきてはくれないか?」
敵の主力がこちらに来ればマインの方面の敵も手薄になる。
そうすればこちらの主力も突入出来るので、最早勝ちは確定である。
そのため、単独行動が可能なゼイル殿に動いてもらう。
「了解した。しかし、こちらは大丈夫ですか?」
「まぁ、しばらくは大丈夫さ。」
すると、ゼイルは大聖堂を後にした。
ゼイルがいなくてもなんとかはなりそうである。
ゼイルが戻ってくる前に敵が来ても、うまくいけば挟み撃ちに出来るからだ。
まぁ、一番最悪なのは……。
いや、考えるのはやめよう。
こういうときに考えたらそれが実際に起こってしまう。
「アルフレッド様。」
「どうした?セラ?」
するとセラが近づいてきた。
「救助した者の中に共に戦いたいと言う者がおります、どうなさいますか?」
「良いんじゃない?」
すると話を聞いていたレインが話に加わってくる。
「アナテルの民は皆武器の扱いにはなれているわ。頼りになると思うけど。」
「ああ。異存はない。良いだろう。」
セラは了解したことを告げると、住民達の元へと戻っていった。
「しかし、頼りになる民だな。」
「ええ。自慢の国民よ。」
レインは少し誇らしげに言う。
レイン自身も嬉しかったのだろう。
「さぁ、敵に備えるとしようか。新たに加わる住民隊は正面に。左右の二階から弓で狙う部隊を元々連れてきた手勢からそれぞれレインとセラで分けて率いてくれ。敵を大聖堂内に引き込み、殲滅する。」
少数で大軍と戦う時の鉄則に敵を隘路に引き込むというのがある。
それを建物内でやるということだ。
共に戦ってくれる者達は数名だろうが、とてもありがたい。
正面には俺がいるので多少はカバーできるだろう。
これならば、なんとか戦えそうだ。
住民達の様子を見ると、先ほど倒した敵兵達の鎧を剥ぎ取って装備している。
たくましい人たちだ。
「3時の方向に敵!10時の方向も!」
マイン率いる本隊は敵と交戦中であった。
相手は街中であることを利用してゲリラ戦術をとってくるので非常に面倒な相手であった。
幸いにも、敵の数が多くはなかったので大した被害もなく、一進一退の攻防といった状況である。
馬上より指揮を取ることで奇襲してくる敵を早期に発見しているのである。
「マイン様!上です!」
部下の声で上を見る。
すると敵が高台から飛びかかってきていた。
先程までの中途半端な攻勢はこの本命の攻撃を誤魔化す為のフェイクだったのだ。
「くっ!」
すぐさま対応しようとする。
が、流石に手遅れだ。
敵の剣の切っ先が目の前までくる。
死を覚悟したその瞬間、敵の姿は無かった。
既に剣が突き刺さった状態で近くに転がっていた。
「……え?」
「ふぅ。間に合ったな。」
声のする方向を見るとそこにはアルフレッドの元に居るはずのゼイルがいた。
どうやら剣を投げて助けてくれたようだ。
「ゼ、ゼイル殿!?なぜこちらに!?」
「いや、アルフレッド様から頃合いを見て城内の大聖堂まで進軍してくれと伝えるように言われてな。」
ゼイルは辺りを見渡す。
「……無理そうだな。」
「ええ、見ての通りです。」
長いことこの状況が続き兵達に疲労が溜まってきている。
「まぁ、もうすぐ敵も減るはずだからな。俺もこのままここに残って戦おう。」
「ありがとうございます。百人力です。」
S級冒険者が共に戦ってくれるのならば兵の士気も上がる。
本当に助かる。
「全軍!進め!」
最悪である。
マインの本隊がまだ来ない。
なのに敵が来てしまった。
ただの敵が来たのならまだ良い。
なぜこいつらがいる。
「ねぇラン。こいつあの男の娘だよね。散々痛めつけてから殺してやろうよ。」
「お!いいねぇ!逆に殺してくださいって言いたくなるくらいのことやろうぜ!」
リンとランが居るのである。
この双子はレノン王が深手を与えたと聞いていたがなぜいるのだろうか。
しかも……。
「おい、二人共程々にしておけ。気持ちは分かるがな。」
バイゼルまで来ている。
正直、圧倒的不利だ。
まぁ、正直これだけならばなんとかなったかも知れない。
「いや、良いだろう。やらせておこう。俺も息子の仇を前にしたら何をするかわからんからな。」
ジェラルドまでいる。
もう無理ゲーだろこれ。
しかし、無理ゲーだと思うとやはりにやけてしまう。
悪い癖だ。
こんな状況を楽しみにしている自分がいる。
「何を笑っている?」
「いや、すまんねジェラルド殿。他意は無いんだ。」
恐らくだがジェラルドは自分が姿を隠すことで俺、もしくはこちらのリーダー格をおびき出そうとしたんだろう。
脳筋かと思ったが、頭は回るようだ。
「笑ってられるのも今のうちだ。直ぐに苦痛を味あわせてやる。」
「良いだろう!かかってこい!」
自分からは決して行かない。
もう少しこちらに来てくれれば弓兵の射程範囲内になる。
「バイゼル!」
すると2階にいるはずのレインの声がすぐそこから聞こえた。
レインが降りてきていた。
「母上の仇!」
レインはそのまま斬りかかろうとしたところを止める。
「落ち着け!気持ちはわかるが今は抑えてくれ!」
俺の言葉でなんとか収まってくれたのか、落ち着いた。
「……ごめんなさい。取り乱したわ。」
「数の上でも士気でも全てが向こう側が有利だ。今こちらから仕掛けたら絶対に負ける。今は耐えろ。」
向こうから来てくれるのなら対応のしようはあるが、正直なところジェラルドが来たことで負ける未来しか見えない。
本来ならジェラルドにはゼイルを当てるつもりだったが、今は出来ない。
「アル、勝てるの?」
「……ま、なんとかやってみるか。」
正直勝てる見込みは殆ど無いが、ゼイルとマインが来てくれればまだなんとかなる。
さぁどれだけ時間が稼げるかわからないがやって見るとしようか。
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