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仇
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「で、どうするの?」
レインが小声で聞いてくる。
正面からまともにやりあっては時間稼ぎもろくに出来ないだろう。
ならば、駄目で元々だ。
「一騎討ちだな。」
「ダメよ。危険だわ。」
レインは拒否する。
それもそうだ。
ジェラルドとは一度戦っている。
それに俺は記憶は無いが完膚なきまでに打ちのめしたらしい。
ジェラルドは対策をしてきているだろう。
「大丈夫だ。時間稼ぎだから。」
とにかく、勝たなくて良いのだ。
というか勝ってしまえば、他の雑兵達が統率を失い、一斉に攻めて来るかもしれない。
そうなれば流石に危険だ。
俺はレインの制止を振り切り、前へと出る。
「一騎討ちだ!ジェラルド!」
「ふ、良いだろう!受けてたつぞ。しかし。」
するとジェラルドは視線をレインへと向けた。
「そこの女はバイゼルとやりあってもらおう。」
「ま、待て!」
レインが危険な目にあうのは望んでいない。
だから一騎討ちを申し出たと言うのに。
「良いでしょう。受けてたちます。」
「レイン!?」
なるほど。
レインならば断らないと踏んで言い出したのか。
ジェラルドは分かっているのだ。
こちらの目的が時間稼ぎだと言うことが。
ならば、一騎討ちで指揮官クラスを全員討ち取ってしまえば後は烏合の集だ。
それにレインが受けてしまった以上、俺が口を挟む権利はない。
「あと、そこの女もだ。」
ジェラルドは視線をセラのいる方へと向ける。
こちらの弓兵は気付かれていたのだ。
「まて!セラは誰とやるんだ?」
「もちろんそこの双子だ。」
何を言っているのかわからない。
2人と戦うのならそれは一騎討ちとは言わないだろう。
「何を言っているんだ?それは一騎討ちとは言わん。」
「いいや、もう一人仲間がたようだぞ?」
すると大聖堂の扉が開き、1人の男が入ってくる。
「……待たせたな。」
入ってきたのは片腕はなく、眼帯をしているレノン王であった。
というか待ってないのだが。
眼帯姿で言われたらあのキャラを思い出してしまいそうだ。
ジェラルドはレノン王の存在(気付いていたようだが。
「レノン王!?なぜここに!?」
「お父様!?」
流石のレインもこれには慌てる。
「くっ!外のやつらは何をしていた!?」
バイゼルもまさかの登場に驚いている。
扉の外を見ると無数の敵兵が倒れていた。
「うわ、まだ生きてたのかよ!おっさん!」
「ねぇ、ラン。私帰っていい?このおっさんとやりたくないんだけど。」
双子も先ほどの戦闘の記憶からか、レノン王と戦うのは嫌なようだ。
なんの表情も崩していないのはジェラルドのみである。
「俺は見ての通り、手負いだ。本当ならそこのバイゼルを殺したかったが、娘に譲ろう。」
片目のみだが、鋭い眼光で敵を威圧する。
というか立ってるだけでもきついはずだ。
冒険者ギルドのやつらは何をやっていたのか。
「まぁ、そこの双子も国民をたくさん殺してくれたからな。さっき深手を負わせたと思ったが、もう治ってるってことは何かあるんだろう?ならば、死んだ方がましと思えるほどの苦痛を味あわせてやる。」
「……なぁ、リン。俺も帰りたくなってきた。」
「でも、帰してくれないんでしょ?」
2人も本気で嫌がっている。
それほどまでこの二人を苦しめたということだろう。
3対1でよくやったものだ。
「では、微力ながらお手伝いしましょう。」
気付けばセラが降りてきていた。
「おい、セラ。」
「恐らくですが、私が行かなくてもあの方は一人でもあの双子とやりあうでしょう。ならば、私はできる限りのサポートをします。」
確かにあの勢いでは、やりかねない。
それに、手負いである。
ならば、ここはセラに任せるとしよう。
「セラ。絶対に死ぬなよ。」
「ふふ。任せてください。」
笑いかけてくれる。
この状況では庇いにいくことも出来ないので、もはや祈るのみだ。
「……ジェラルド。一度、レノン王と話がしたい。少しだけ時間をくれないか?」
「……まぁ、良いだろう。」
「レノン王。なぜ出てきたのですか?」
「あんなところでじっとしていられんわ!」
まぁ、気持ちはわかる。
だが、あちこちが傷だらけなのは見てわかる。
「まぁ、時間稼ぎができれば良いのだろう?しかし、この一騎討ち。全ての面で『仇』が関わっている。仇みたいな気持ちの問題が加われば、予測通り事が運ばないことの方が多い。皆、気を付けてくれ。」
全員が頷く。
確かに仇を目の前にすれば頭に血が上り、冷静な判断が出来ないだろう。
それに、俺については俺が仇だからよりいっそう注意をしなければならない。
レノン王が来たからといってそこまで状況が好転した訳ではなかった。
「そうだ。セラ。」
「はい?」
セラが相手をするリンは銃を持っている。
俺はセラに銃とはどんなものかを説明し、充分注意するように言っておいた。
「そういえば、アルフレッドよ。」
解散しようかと言うところでレノン王に呼び止められる。
「どうされました?」
「これをお前に渡しておかなくてはならん。お前ならば使い方も価値もわかるだろう。」
俺は布に包まれた細長いものと何かの紙をうけとった。
布を開くとそこには片手で扱える程度の長さの先込め式の銃がはいっていた。
紙には銃の設計図が書かれていた。
「こ、これは……。」
正直驚きである。
いずれは作ろうと思っていた物を既に作っていたのだ。
「これをお前に託す。」
「で、ですが。」
レノン王の意図は分かる。
自分はもう長く無いから自分の意志を継いで、これで量産しろというのだ。
「その銃には弾と火薬が入っている。この一騎討ちで使え。」
「いえ、やはり受け取れません。これは貴方が使うべきです。」
するとレノン王はにやりと笑いながら上着の内側を見せてきた。
そこにはホルスターに収まっている銃が5丁もあった。
「まだまだある。それに、片手だと銃を上手く使えない。剣か銃かしか選べないからな。念のため持ってはいるが使うことはないだろう。相手もこれのことを知ってるしな。」
そしてもう一つ気付いたことがある。
上着の内側の服から血が滲み出て来ている。
傷は目と腕だけではなかった。
上着の内側は俺にしか見えないように見せてきていたので、他の者は誰もこの傷を知らない。
「レノン王……。」
「まぁ、やれるだけやってやるさ。」
よく見ると薄っすらと汗が流れているのがわかる。
今、普通に話しているように見えたが、相当我慢しているのだろう。
「セラ。」
「はい。」
セラに時間さえ稼げれば良いから無理はしないこととレノン王の現状を伝え、できる限りカバーしてくれと言っておいた。
ペアを組むセラは知っておいた方が良いだろう。
「これ以上レインを悲しませたくないんだ。頼んだ。」
「分かりました。絶対に果たして見せます!」
そして、レインにも釘を刺しておく。
薙刀の手入れをしているところに話しかける。
「レイン。仇だからといって自分を見失うな。命を大事にしろ。」
「ええ、分かってるわ。でも、もう大丈夫だから。冷静に奴を仕留めるわ。」
本当に分かってるのだろうか。
時間稼ぎがメインなのだが。
「いや、時間さえ稼いでくれれば良いんだからな。」
するとレインは忘れてたというような顔をした。
「……分かってるわ。」
「本当に?」
顔を覗こうとするとレインは顔を背ける。
「レイン?」
「分かってるわ。」
これ以上問い詰めてもあまり意味は無いだろう。
「まぁ、いい。とにかく死なないでくれ。これだけは絶対だ。」
「ふふ。ええ、絶対に生きて帰って来るわ。」
俺も相手はジェラルドだ。
皆に死ぬなと言った手前、死ぬわけには行かない。
レノン王から託されたこの銃が、虎の子だな。
レインが小声で聞いてくる。
正面からまともにやりあっては時間稼ぎもろくに出来ないだろう。
ならば、駄目で元々だ。
「一騎討ちだな。」
「ダメよ。危険だわ。」
レインは拒否する。
それもそうだ。
ジェラルドとは一度戦っている。
それに俺は記憶は無いが完膚なきまでに打ちのめしたらしい。
ジェラルドは対策をしてきているだろう。
「大丈夫だ。時間稼ぎだから。」
とにかく、勝たなくて良いのだ。
というか勝ってしまえば、他の雑兵達が統率を失い、一斉に攻めて来るかもしれない。
そうなれば流石に危険だ。
俺はレインの制止を振り切り、前へと出る。
「一騎討ちだ!ジェラルド!」
「ふ、良いだろう!受けてたつぞ。しかし。」
するとジェラルドは視線をレインへと向けた。
「そこの女はバイゼルとやりあってもらおう。」
「ま、待て!」
レインが危険な目にあうのは望んでいない。
だから一騎討ちを申し出たと言うのに。
「良いでしょう。受けてたちます。」
「レイン!?」
なるほど。
レインならば断らないと踏んで言い出したのか。
ジェラルドは分かっているのだ。
こちらの目的が時間稼ぎだと言うことが。
ならば、一騎討ちで指揮官クラスを全員討ち取ってしまえば後は烏合の集だ。
それにレインが受けてしまった以上、俺が口を挟む権利はない。
「あと、そこの女もだ。」
ジェラルドは視線をセラのいる方へと向ける。
こちらの弓兵は気付かれていたのだ。
「まて!セラは誰とやるんだ?」
「もちろんそこの双子だ。」
何を言っているのかわからない。
2人と戦うのならそれは一騎討ちとは言わないだろう。
「何を言っているんだ?それは一騎討ちとは言わん。」
「いいや、もう一人仲間がたようだぞ?」
すると大聖堂の扉が開き、1人の男が入ってくる。
「……待たせたな。」
入ってきたのは片腕はなく、眼帯をしているレノン王であった。
というか待ってないのだが。
眼帯姿で言われたらあのキャラを思い出してしまいそうだ。
ジェラルドはレノン王の存在(気付いていたようだが。
「レノン王!?なぜここに!?」
「お父様!?」
流石のレインもこれには慌てる。
「くっ!外のやつらは何をしていた!?」
バイゼルもまさかの登場に驚いている。
扉の外を見ると無数の敵兵が倒れていた。
「うわ、まだ生きてたのかよ!おっさん!」
「ねぇ、ラン。私帰っていい?このおっさんとやりたくないんだけど。」
双子も先ほどの戦闘の記憶からか、レノン王と戦うのは嫌なようだ。
なんの表情も崩していないのはジェラルドのみである。
「俺は見ての通り、手負いだ。本当ならそこのバイゼルを殺したかったが、娘に譲ろう。」
片目のみだが、鋭い眼光で敵を威圧する。
というか立ってるだけでもきついはずだ。
冒険者ギルドのやつらは何をやっていたのか。
「まぁ、そこの双子も国民をたくさん殺してくれたからな。さっき深手を負わせたと思ったが、もう治ってるってことは何かあるんだろう?ならば、死んだ方がましと思えるほどの苦痛を味あわせてやる。」
「……なぁ、リン。俺も帰りたくなってきた。」
「でも、帰してくれないんでしょ?」
2人も本気で嫌がっている。
それほどまでこの二人を苦しめたということだろう。
3対1でよくやったものだ。
「では、微力ながらお手伝いしましょう。」
気付けばセラが降りてきていた。
「おい、セラ。」
「恐らくですが、私が行かなくてもあの方は一人でもあの双子とやりあうでしょう。ならば、私はできる限りのサポートをします。」
確かにあの勢いでは、やりかねない。
それに、手負いである。
ならば、ここはセラに任せるとしよう。
「セラ。絶対に死ぬなよ。」
「ふふ。任せてください。」
笑いかけてくれる。
この状況では庇いにいくことも出来ないので、もはや祈るのみだ。
「……ジェラルド。一度、レノン王と話がしたい。少しだけ時間をくれないか?」
「……まぁ、良いだろう。」
「レノン王。なぜ出てきたのですか?」
「あんなところでじっとしていられんわ!」
まぁ、気持ちはわかる。
だが、あちこちが傷だらけなのは見てわかる。
「まぁ、時間稼ぎができれば良いのだろう?しかし、この一騎討ち。全ての面で『仇』が関わっている。仇みたいな気持ちの問題が加われば、予測通り事が運ばないことの方が多い。皆、気を付けてくれ。」
全員が頷く。
確かに仇を目の前にすれば頭に血が上り、冷静な判断が出来ないだろう。
それに、俺については俺が仇だからよりいっそう注意をしなければならない。
レノン王が来たからといってそこまで状況が好転した訳ではなかった。
「そうだ。セラ。」
「はい?」
セラが相手をするリンは銃を持っている。
俺はセラに銃とはどんなものかを説明し、充分注意するように言っておいた。
「そういえば、アルフレッドよ。」
解散しようかと言うところでレノン王に呼び止められる。
「どうされました?」
「これをお前に渡しておかなくてはならん。お前ならば使い方も価値もわかるだろう。」
俺は布に包まれた細長いものと何かの紙をうけとった。
布を開くとそこには片手で扱える程度の長さの先込め式の銃がはいっていた。
紙には銃の設計図が書かれていた。
「こ、これは……。」
正直驚きである。
いずれは作ろうと思っていた物を既に作っていたのだ。
「これをお前に託す。」
「で、ですが。」
レノン王の意図は分かる。
自分はもう長く無いから自分の意志を継いで、これで量産しろというのだ。
「その銃には弾と火薬が入っている。この一騎討ちで使え。」
「いえ、やはり受け取れません。これは貴方が使うべきです。」
するとレノン王はにやりと笑いながら上着の内側を見せてきた。
そこにはホルスターに収まっている銃が5丁もあった。
「まだまだある。それに、片手だと銃を上手く使えない。剣か銃かしか選べないからな。念のため持ってはいるが使うことはないだろう。相手もこれのことを知ってるしな。」
そしてもう一つ気付いたことがある。
上着の内側の服から血が滲み出て来ている。
傷は目と腕だけではなかった。
上着の内側は俺にしか見えないように見せてきていたので、他の者は誰もこの傷を知らない。
「レノン王……。」
「まぁ、やれるだけやってやるさ。」
よく見ると薄っすらと汗が流れているのがわかる。
今、普通に話しているように見えたが、相当我慢しているのだろう。
「セラ。」
「はい。」
セラに時間さえ稼げれば良いから無理はしないこととレノン王の現状を伝え、できる限りカバーしてくれと言っておいた。
ペアを組むセラは知っておいた方が良いだろう。
「これ以上レインを悲しませたくないんだ。頼んだ。」
「分かりました。絶対に果たして見せます!」
そして、レインにも釘を刺しておく。
薙刀の手入れをしているところに話しかける。
「レイン。仇だからといって自分を見失うな。命を大事にしろ。」
「ええ、分かってるわ。でも、もう大丈夫だから。冷静に奴を仕留めるわ。」
本当に分かってるのだろうか。
時間稼ぎがメインなのだが。
「いや、時間さえ稼いでくれれば良いんだからな。」
するとレインは忘れてたというような顔をした。
「……分かってるわ。」
「本当に?」
顔を覗こうとするとレインは顔を背ける。
「レイン?」
「分かってるわ。」
これ以上問い詰めてもあまり意味は無いだろう。
「まぁ、いい。とにかく死なないでくれ。これだけは絶対だ。」
「ふふ。ええ、絶対に生きて帰って来るわ。」
俺も相手はジェラルドだ。
皆に死ぬなと言った手前、死ぬわけには行かない。
レノン王から託されたこの銃が、虎の子だな。
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