王国再興物語 〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

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最終会議

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「はぁ……。」
 せっかくゆっくり休もうとしたのに2人がいたお陰で全く眠れなかった。
 まぁ、体を休める事は出来たのだが。
 彼女いない歴=年齢の俺には少々きつかったが、いずれは彼女達の気持ちにも答えてやらなければならないな。
 レインはあのあとすぐさま大砲の調査に向かい、セラはそのまま療養することとなった。
 そして、俺は今各国との会議をしていた。
『どうされました?若。』
「いや、色々とあってな。」
 セインに水晶越しに心配される。
 セインは遺品整理が終わり、転生者についての情報はゼイルと共有することとなった。
 また、アーロン兄上との接触にも成功し、今回の会議にも参加してもらっている。
『そうか、我が弟もついに結婚か。』
「いや、流石に早すぎると思いますよ。」
 アーロン兄上も茶化してくる。
 まだ、何も言っていないのになぜわかるのだろうか。
『それにしても久し振りだな。アルフレッド。』
「ええ、お久しぶりです。兄上。」
 アーロン兄上との仲は悪くなかった。
 逆に仲の良い兄弟だったと思う。
 そして、なぜあの父からここまで優秀な人が生まれるのか不思議である。
 アラン叔父上の意図をよく汲み取り密かに東の国へ資金提供したり、アナテルとも上手く連携してくれていたようだ。
『で、アルフレッドよ。勝てるのか?その海戦。』
「ご安心ください。フレク叔父上。勝てる見込みはあります。」
 フレク叔父上が心配する。
 それもそうだ。
 今回の戦況はかなり不利。
 戦力的にも圧倒的に劣っている。
「これまでの敵の戦闘行動から最適な作戦を計画しています。あとは上手くそちらと連携を取れればさらに勝てる見込みは上がります。」
『連携とはなんだ?援軍を出して挟み撃ちでもするか?』
 ジゲンが助力を申し出てくれる。
 が、それではダメだ。
「いや、申し出はありがたいがそれではアナテルの二の舞になる可能性がある。本国を手薄にして他国への援軍は危険だ。帝国の暗部を壊滅させた以上、心配はないと思うが、念のためだ。」
『それもそうだな……。では、どうするんだ?』
 そして、俺は作戦について話した。
 正直遠回りを続けてきてしまったが、結局はアラン叔父上の作戦通りの展開になってくれた。
 作戦はこうだ。
 当初の作戦通りに各国の方面からそれぞれ進軍を開始する。
 東部より、神聖帝国軍。
 迂回して北部よりジゲン、アナテル連合軍。
 西部よりエルドニア軍。
 そして、本来ならば海を越え、アナテル本国軍が南より上陸する措定だったが、海戦により敵を撃破する。
 ここまでの多方面作戦ならばいかに大国であろうとも勝てるであろう。
『なるほどな。ここまでの多方面作戦なら、敵艦隊も対応するのに少なくなるかも知れないな。』
「ええ、希望的観測にはなってしまいますが、それも期待しての作戦です。」
 アーロン兄上が、こちらの意図を読み、代弁してくれた。
 他の面々も作戦を了解してくれた。
 進攻の開始時期については敢えて少しずつずらすことに決まった。
 そうすることで帝国が少しでも混乱することを期待してのことだ。
「では、今後このような場を設ける暇も無い程に忙しくなるでしょう。これが最終会議です。各々よろしくお願いします。」
 さぁ、あとはこの海戦に勝つだけだ。

「レイン。見つけたか?」
 レインが探しに入った倉庫を見に行く。
 するとそこには多数の大砲が置かれていた。
「あ、アル!あったよ!埃被ってたけど使えると思う!弾もそこに。」
 レインが指を指した方向には箱に入った砲弾があった。
「おお!ナイスだレイン!」
 これで、帝国との戦いも優位に進められるかもしれない。
「じゃあ早速人を使ってこれを各船に一門ずつ積んでくれ。旗艦には大量にな。」
 あの船の構造ならばこの大砲を積んでも沈まないだろう。
 そして、倉庫の隅に見覚えのあるものがあることに気づく。
「こ、これは……。」

「船の応急修理は完了しました。」
「ありがとう。マイン殿。」
 マインの手腕により損傷の軽微な船は直すことができた。
 そして、遠くには自ら働くS級冒険者のゼイルの姿があった。
 流石の海軍大将である。
「あとで手勢をレインの元へ向かわせてくれ。船に積み込むものが少しあるからな。」
「かしこまりました。」
 テキパキと仕事をこなす様は素晴らしく、誰が見ても優秀な人物である事は明白だ。
 しかし、そこで1つ気になることを思い出した。
「そういえば1つ聞いてもよろしいですか?」
「え?はい。」
 俺はどうしても気になっていたことがある。
「レノン王とはどのようなご関係でしたか?」
「レノン王との関係ですか?」
 この前のやり取りから二人の間には何かあるなと思っていた。
 一度聞いてみたかったのだ。
「そうですね……。私はレノン王の剣術の師です。」
 マインの話によると昔、剣術が全く出来なかったレノン王が当時剣術の天才として有名人になりつつあったマインに師事を求めてきたという。
 最初は恐れ多いと断ったそうだが、何度も何度も頼み込んでくるので、渋々承知したらしい。
 そしてマインの訓練はスパルタそのもので国王となってからもマインには頭が上がらない事があるらしい。
 恐らく前世の記憶を取り戻す前の出来事なのだろう。
「陛下は頑固なところがあるのでそういうときには便利なものです。」
「……失礼ですが、年齢をお聞きしても?」
 マインの年齢を俺は知らないがレノン王は40は過ぎていた気がする。
 見た目からして若いように見えるので、少し気になった。
「私は27です。陛下が師事を求めてきたときは私は17でしたね。」
 確かレノン王が国王に即位したのは32からだったはず。
 つまりは国王の立場になるのに少しでも相応しい人物になろうと努力していたのだろう。
 しかし、その歳から天才と言われていたとは凄まじい人物だ。
「そうでしたか。いずれ手合わせ願いたいものですね。」
「おやめください。お嬢様に殺される未来が容易に見えます。」
 お嬢様とはレインのことだ。
 まぁ、確かにいい顔はされないだろう。
「はは、確かに。では、軍備の方も逐次初めて行ってくれ。」
「畏まりました。」

「ゼイル殿。今少しいいか?」
「おお!アルフレッド様!どうされましたか?」
 ゼイルは自ら率先して船の修理を行っていた。
 それを見た者達も頑張って働いている。
「セインがジョナサンの遺品整理で日記のようなものを見つけたと言っていた。後で彼と話してみてくれ。新たに分かることがあるかもしれない。」
「了解した。あ、そういえば。」
 ゼイルは何かを思い出したようだ。
「あのあとギルドのメンバーに双子を追いかけさせたんですがね。」
 初耳である。
 せめて一言言ってほしかった。
「港まで行ったことが判明して、所属不明の船が出ていくのを見かけたそうですよ。」
 逃走用の船を確保していたということか。
 つまりは奴らは逃走することも視野に入れて今回の作戦を遂行したのだ。
 つまりはやはり敵艦隊にこちらの情報が行ってしまっているということだ。
「それと、ジェラルドはどうするんです?」
 やはり、元冒険者であるジェラルドについての処遇は気になるところなのだろう。
「今度の海戦で、上手く使うさ。」
「仲間になってくれますかね?」
 ゼイルは何か勘違いしているようだ。
 別に仲間にするとは言っていない。
「……使うと言っただろう?」
「……嫌な予感がするんですが?」
 非人道的な気もするが、奴には命で償ってもらう必要がある。
 勿論もう既に死んだバイゼルも含めて。
 少しゼイルに悪い気がするが、これは必要なことだ。
 帝国の奴らがどんな顔をするか楽しみだ。
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