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海戦に向けて
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ゼイルから敵の艦隊が向かっていることを聞いた。
数はあちらの方が圧倒的に上らしいということだ。
アナテルが被害にあっていなければ余裕で戦えたのだろうが、今あるのは俺達が乗ってきた艦隊だけだ。
幸いにも海軍大将のマインがいるので、最悪の状況ではないのが、せめてもの救いである。
それともう1つゼイルから聞いたことがある。
それは俺が本来のアルフレッドに体を返していた時のことだ。
言動や行動から本来のアルフレッドに戻ったことがわかったゼイルはその事を俺に伝えてくれた。
その間のことを俺は何一つとして覚えていない。
そして、前回よりも戻ってくるまで時間がかかった。
そして、さらに1つ分かったことがある。
山中盛幸の記憶が薄れている。
そこまでひどくは無いが、所々朧気だ。
もし、今後あれを乱用すればいずれは永遠に消えるのではないだろうか。
あれを今後も続ければ自分は完全にアルフレッドになり、前世の記憶は無くなる。
ただ、前世があったと言うことだけを覚えている状況になるのだろうか。
あまり、あれを乱用するわけにはいかないな。
しかし、必要とあらば使うしかないが。
そして、今はセラと2人きりで話をするために待っているところだ。
「アルフレッド様。お待たせしました。」
「あぁ。」
セラは包帯を至るところに巻き、満身創痍と言った様子だ。
特に肩の傷は酷いのか、まだ血が滲んできているのが分かる。
幸いにも弾は抜けていたようだ。
「話というのは?」
「……無茶しすぎだ。」
セラに抱きつく。
あのときは自分の事で精一杯で周りの事を気にする余裕がなかったのだが、ここまで傷だらけになっているとは思わなかった。
「話を聞いたが、死んでもおかしくなかったそうじゃないか。」
「……ごめんなさい。でも、レノン王の為にと必死だったの。」
今は周りに人がいないので口調がいつもと変わっている。
セラは包帯を巻いていない方の手で頭を撫でてくる。
「今度からは気を付けるから。」
「……頼んだぞ。」
正直セラの傷を見たときはゾッとした。
あれほど重傷になるとは思っていなかった。
因みにだがレノン王はさすがに傷が酷く、本人も無理をしたのが祟ったのか、昏睡状態に戻った。
マインを初めとした医療に精通した人物達が集まり治療を続けているとのことだが、予断は許さないそうだ。
だが、レノン王ならレインを一人残して逝かないはずだ。
そして俺は先程分かった自分の記憶や本当のアルフレッドのことについて話した。
本来のアルフレッドの方が戦闘においては上なのでそちらに任せたところ、自分の記憶が薄れていることに気がついた事を話すと、少し驚いた顔をしながらも優しい顔で答えてくれた。
「大丈夫。何があっても私はアルについていくから。」
やはり、セラは俺には勿体無い女性だ。
今一度、今後の作戦会議の為に主要メンバーを集め、話し合うことにした。
セラとレノン王は治療を受け続けているので、ここには居ない。
ギルドのお陰で生き残った国民は全て救助し、治療が必要な者には治療を施しているとのことだ。
また、かろうじて生き残っていたアナテルの正規兵達も今度の海戦に参加したいと言ってくれた。
マインの選定により、戦える者は組み込むということで決定した。
また、町民からも志願者が数名出たので、望むものだけ戦列に加えることになった。
「まぁ、あとはあの大艦隊を相手にどう戦うかだな。」
「幸いにも港には使えそうな船がちらほらと見えます。それらを調査して修繕し、稼働可能な船を増やしておくことと致しましょう。」
マインの意見を採用し、早速取りかからせることにする。
今は少しでも早い方がよい。
「アルフレッド様。ギルドからも街の復興として船の修理を手伝わせて頂きます。ですが、今回の海戦はギルドの決まりにより、参加は出来ませんが私は護衛の依頼がありますので参加させて頂きます。」
「あぁ、ありがとう。頼りにさせてもらう。」
今回の海戦にギルドが参加しないのは予想していたが、船の修理を手伝ってくれるだけでもありがたい。
ギルドも無傷では無いというのにとても頼もしい事だ。
それに、ゼイルが居るだけでもとても心強い。
「では、俺とレインは遠話水晶でジゲンとフレク叔父上。そしてエルドニアへと戻っているセインと話をして、今後について話し合う。」
セインはジョナサンの遺品整理でエルドニアへと戻っている。
上手くアーロン兄上と接触し、連携を取ってくれればタイミングを合わせることができる。
「そして肝心の海戦についてだが、圧倒的不利なこの状況で勝てるかどうかだ。」
正直勝てる見込みは薄い。
何か手を打たなければ確実に負けるだろう。
しかし、この時間の無い中で打てる手は限れている。
「あ、そういえば。」
するとレインが何かを思い出したようだ。
「お父様があの銃?の大きいやつみたいなのを昔作ってたわ。多分同じような原理だと思うんだけど。」
大きな銃。
つまりは大砲だろうか。
「それがどこにあるかわかるか?」
「うーん……。多分?」
心当たりは有るのだろう。
「じゃあレインはそれを見つけておいてくれ。俺が話をしておくから。」
「わかったわ。」
そのままレインは部屋を出ていった。
もし大砲があれば今回の戦を優位に進めることができるかもしれない。
レインに期待しておくとしよう。
各国との会議はまだ時間がある。
あの双子が逃げたということはここにいた陽炎部隊が壊滅したことも伝わっているだろう。
こちらの艦影も見えているし、帝国も動きは慎重になるはずだ。
それまでに少し休んでおこう。
そう思い、臨時の自室へと戻る。
すると何故か部屋にはレインとセラがいた。
「あ、やっぱり帰ってきた。」
「お疲れ様でした。アルフレッド様。」
この臨時の自室はレインの部屋である。
何故かいつの間にかベッドがダブルベッドになっていたが、そこに二人が座っていた。
会議が終わったばかりなのでレインがいるのは不思議ではない。
だが、何故かセラまでいた。
「何でセラがいるんだ?」
「アルフレッド様。最近少しお疲れのようですし、少しお休みしませんか?」
ベッドを叩き、ここで寝るようにと招かれる。
確かに最近は、というかずっと休む暇がなかったから 休む時間は欲しい。
が、やることがあるといえばある。
「いや、確かに休みたいが……。」
「駄目よ。」
レインに腕を引っ張られベッドへ連れ込まれる。
「お、おい!」
「こうでもしないとお休みになられないでしょう?」
セラの言う事も確かである。
昔から無理をしてしまう癖があるのだ。
この本来のアルフレッドの頃から。
「それに、私達との時間も大事にしてくださいよ。」
「そうよ。私なんて何年もほったらかしにされてたんだから。」
そう言われてしまうと何も言い返せない。
まぁ、急ぎの事はないし、会議も数時間後だ。
ゆっくりするのも良いだろう。
「はぁ、分かった。今は休むとしよう。」
セラとレインは笑顔を浮かべる。
「じゃ、ゆっくり寝よう!」
「では、失礼します。」
二人は俺を挟む形でベッドへ寝転がる。
正直、緊張で眠れる気はしない。
(まぁ、二人のためにもゆっくりするか。)
眠れる気がしなかったが、気が付けば眠りに落ちているのだった。
数はあちらの方が圧倒的に上らしいということだ。
アナテルが被害にあっていなければ余裕で戦えたのだろうが、今あるのは俺達が乗ってきた艦隊だけだ。
幸いにも海軍大将のマインがいるので、最悪の状況ではないのが、せめてもの救いである。
それともう1つゼイルから聞いたことがある。
それは俺が本来のアルフレッドに体を返していた時のことだ。
言動や行動から本来のアルフレッドに戻ったことがわかったゼイルはその事を俺に伝えてくれた。
その間のことを俺は何一つとして覚えていない。
そして、前回よりも戻ってくるまで時間がかかった。
そして、さらに1つ分かったことがある。
山中盛幸の記憶が薄れている。
そこまでひどくは無いが、所々朧気だ。
もし、今後あれを乱用すればいずれは永遠に消えるのではないだろうか。
あれを今後も続ければ自分は完全にアルフレッドになり、前世の記憶は無くなる。
ただ、前世があったと言うことだけを覚えている状況になるのだろうか。
あまり、あれを乱用するわけにはいかないな。
しかし、必要とあらば使うしかないが。
そして、今はセラと2人きりで話をするために待っているところだ。
「アルフレッド様。お待たせしました。」
「あぁ。」
セラは包帯を至るところに巻き、満身創痍と言った様子だ。
特に肩の傷は酷いのか、まだ血が滲んできているのが分かる。
幸いにも弾は抜けていたようだ。
「話というのは?」
「……無茶しすぎだ。」
セラに抱きつく。
あのときは自分の事で精一杯で周りの事を気にする余裕がなかったのだが、ここまで傷だらけになっているとは思わなかった。
「話を聞いたが、死んでもおかしくなかったそうじゃないか。」
「……ごめんなさい。でも、レノン王の為にと必死だったの。」
今は周りに人がいないので口調がいつもと変わっている。
セラは包帯を巻いていない方の手で頭を撫でてくる。
「今度からは気を付けるから。」
「……頼んだぞ。」
正直セラの傷を見たときはゾッとした。
あれほど重傷になるとは思っていなかった。
因みにだがレノン王はさすがに傷が酷く、本人も無理をしたのが祟ったのか、昏睡状態に戻った。
マインを初めとした医療に精通した人物達が集まり治療を続けているとのことだが、予断は許さないそうだ。
だが、レノン王ならレインを一人残して逝かないはずだ。
そして俺は先程分かった自分の記憶や本当のアルフレッドのことについて話した。
本来のアルフレッドの方が戦闘においては上なのでそちらに任せたところ、自分の記憶が薄れていることに気がついた事を話すと、少し驚いた顔をしながらも優しい顔で答えてくれた。
「大丈夫。何があっても私はアルについていくから。」
やはり、セラは俺には勿体無い女性だ。
今一度、今後の作戦会議の為に主要メンバーを集め、話し合うことにした。
セラとレノン王は治療を受け続けているので、ここには居ない。
ギルドのお陰で生き残った国民は全て救助し、治療が必要な者には治療を施しているとのことだ。
また、かろうじて生き残っていたアナテルの正規兵達も今度の海戦に参加したいと言ってくれた。
マインの選定により、戦える者は組み込むということで決定した。
また、町民からも志願者が数名出たので、望むものだけ戦列に加えることになった。
「まぁ、あとはあの大艦隊を相手にどう戦うかだな。」
「幸いにも港には使えそうな船がちらほらと見えます。それらを調査して修繕し、稼働可能な船を増やしておくことと致しましょう。」
マインの意見を採用し、早速取りかからせることにする。
今は少しでも早い方がよい。
「アルフレッド様。ギルドからも街の復興として船の修理を手伝わせて頂きます。ですが、今回の海戦はギルドの決まりにより、参加は出来ませんが私は護衛の依頼がありますので参加させて頂きます。」
「あぁ、ありがとう。頼りにさせてもらう。」
今回の海戦にギルドが参加しないのは予想していたが、船の修理を手伝ってくれるだけでもありがたい。
ギルドも無傷では無いというのにとても頼もしい事だ。
それに、ゼイルが居るだけでもとても心強い。
「では、俺とレインは遠話水晶でジゲンとフレク叔父上。そしてエルドニアへと戻っているセインと話をして、今後について話し合う。」
セインはジョナサンの遺品整理でエルドニアへと戻っている。
上手くアーロン兄上と接触し、連携を取ってくれればタイミングを合わせることができる。
「そして肝心の海戦についてだが、圧倒的不利なこの状況で勝てるかどうかだ。」
正直勝てる見込みは薄い。
何か手を打たなければ確実に負けるだろう。
しかし、この時間の無い中で打てる手は限れている。
「あ、そういえば。」
するとレインが何かを思い出したようだ。
「お父様があの銃?の大きいやつみたいなのを昔作ってたわ。多分同じような原理だと思うんだけど。」
大きな銃。
つまりは大砲だろうか。
「それがどこにあるかわかるか?」
「うーん……。多分?」
心当たりは有るのだろう。
「じゃあレインはそれを見つけておいてくれ。俺が話をしておくから。」
「わかったわ。」
そのままレインは部屋を出ていった。
もし大砲があれば今回の戦を優位に進めることができるかもしれない。
レインに期待しておくとしよう。
各国との会議はまだ時間がある。
あの双子が逃げたということはここにいた陽炎部隊が壊滅したことも伝わっているだろう。
こちらの艦影も見えているし、帝国も動きは慎重になるはずだ。
それまでに少し休んでおこう。
そう思い、臨時の自室へと戻る。
すると何故か部屋にはレインとセラがいた。
「あ、やっぱり帰ってきた。」
「お疲れ様でした。アルフレッド様。」
この臨時の自室はレインの部屋である。
何故かいつの間にかベッドがダブルベッドになっていたが、そこに二人が座っていた。
会議が終わったばかりなのでレインがいるのは不思議ではない。
だが、何故かセラまでいた。
「何でセラがいるんだ?」
「アルフレッド様。最近少しお疲れのようですし、少しお休みしませんか?」
ベッドを叩き、ここで寝るようにと招かれる。
確かに最近は、というかずっと休む暇がなかったから 休む時間は欲しい。
が、やることがあるといえばある。
「いや、確かに休みたいが……。」
「駄目よ。」
レインに腕を引っ張られベッドへ連れ込まれる。
「お、おい!」
「こうでもしないとお休みになられないでしょう?」
セラの言う事も確かである。
昔から無理をしてしまう癖があるのだ。
この本来のアルフレッドの頃から。
「それに、私達との時間も大事にしてくださいよ。」
「そうよ。私なんて何年もほったらかしにされてたんだから。」
そう言われてしまうと何も言い返せない。
まぁ、急ぎの事はないし、会議も数時間後だ。
ゆっくりするのも良いだろう。
「はぁ、分かった。今は休むとしよう。」
セラとレインは笑顔を浮かべる。
「じゃ、ゆっくり寝よう!」
「では、失礼します。」
二人は俺を挟む形でベッドへ寝転がる。
正直、緊張で眠れる気はしない。
(まぁ、二人のためにもゆっくりするか。)
眠れる気がしなかったが、気が付けば眠りに落ちているのだった。
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