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アイフィス決戦 戦支度
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セインと別れたその後、我がエルドニア軍は撤退し始めているという敵軍を迎え撃つべく進軍していた。
神聖帝国方面へと進軍し、ジゲン・アナテル連合軍にはこちらの方面へと追い込むように展開するように指示を出した。
そして今、この大陸最大のアイフィス平野にて全軍が終結したのであった。
帝国軍は平野の中央に、それを三方から囲む形で友軍が展開している。
敵も合流したことを上手く利用し陣形を建て直しているようであった。
こちらの方面がやや高台となっており、敵の陣容がよく見える。
「陛下。」
「陛下はよせ。まだ王ではない。」
側近の一人が近づいてきた。
「……申し訳ありません。」
「それで、どうした?」
「はっ、どうやら敵はこの軍を突破し帝都へ戻るつもりらしく、その用意をしているようです。」
確かに今包囲している軍勢の中で最も兵力が少ないのはこの方面だ。
ならば最も突破しやすい軍を撃破して帝都にて籠城するのが最も最善であろう。
「ま、そう来るだろうな。」
「いかがなさいますか?アーロン様。」
どうするか迷うところではあるが、敵は大軍であるが故に兵糧の消耗が激しいだろう。
幸いにもこちら側は山が近い。
ならば一度後退し、山から見下ろす形で陣形を組めばこちら側が有利になる。
そして敵がこの軍を素通りしようとすれば我々は尾根伝いにそれに付いて行く。
ちなみにだが既にこの状況を予測して帝都へと至る道には少数だが、部隊を配備している。
そこでほんの少しでも時間を稼げればこの本陣がそこへと向かい、更に時間を稼ぎそして各方面の友軍の到着を持って包囲殲滅する。
この作戦ならば勝てるだろう。
相手も状況は既に察しているであろうし、中々動き出すことは出来ないだろう。
兵糧の消耗も狙えるこの作戦を取ると側近に伝えた。
「畏まりました。では、軍を後退させる支度をしておきます。」
「あぁ、よろしく頼む。」
わが王国は長年帝国と戦争を繰り返してきた。
婚姻同盟を締結してからは収まったものの、家族や友人を帝国に殺された者は少なくない。
我が軍の戦意は充分である。
そして、この戦に勝てば民は私を王へと押し上げるだろう。
それまではせいぜいアルフレッド達の手勢も含めて上手く利用してやるとしよう。
「なるほどな……。そうするのか。」
「どうされますかな?ジゲン様。」
ヤンに今後の動きを問われる。
遠くのエルドニア軍の動きを見てなんとなくだが、狙いは分かった。
向こうにある山岳部をうまく利用した戦術というわけか。
それの要は我々の軍と神聖帝国軍というわけか。
「まぁ、あの動きにうまく合わせるしかないでしょうなぁ。」
「ええ、この戦場の主力は私達。どう動くかによって勝敗は決まりますからね。」
こちらにはイリス殿やローゼン殿を始めとしたアルフレッドが王国を脱出するときから率いてきた歴戦の兵やローゼンに付き従っていた盗賊ギルドの者等がいる。
純粋な戦力で言えば圧倒的だろう。
さらに東の国の精鋭や、アナテル軍の部隊もいる。
アナテル軍の陸軍大将のジゼルは現在部隊の再編等を任せている。
少し前まで戦っていたのはルーゼンやマトウといった武力に秀でた者がいたので苦戦を強いられていた。
軍も疲弊が激しく、今やっと休息を取らせてやることが出来たのだ。
「まずは休息を取らせよう。このまま追撃してもまともに戦えないだろう。逆に返り討ちにあっておしまいだ。」
「はい。それがよろしいかと。」
ヤンは肯定してくれたが、他の者は異論があるようだ。
「ジゲン殿。それは確かに最善だと思いますけどね、だからこそ敵がこの行動を予測しているかもしれない。いいや、我が兄、ルーゼンならば必ず予測しるでしょうな。」
「はい。私も同じ意見です。そうしてしまえば各方面軍は待機することになるでしょう。話によれば神聖帝国軍も疲弊してるらしいので休息を取ると思われます。」
確かに2人の言うことは納得出来る。
しかし、このまま攻勢に出るのも厳しいだろう。
「そして、私ならば休息しているところに夜襲を仕掛けます。」
皆が黙り込む。
確かに相手はエルドニア軍を突破し帝都へ向かう動きを見せてはいるが、相手も疲弊しているから動くのは明日だろう。
という風に思わせておいて各方面軍に夜襲を仕掛ければ油断しきっているこちらは壊滅は免れないだろう。
「確かにな……。ならば、逆手に取りこちらが休息していると見せかけ夜襲を誘うとしよう。我々は万全の体勢で迎え撃つぞ。」
イリス殿の状況判断能力にはこの前の戦闘からも助けられていた。
これほどの大軍同士の戦は経験が浅く、そういうところは他の者に頼るほかは無い。
アルフレッドの作ってくれた縁には感謝しなければならないな。
「……キツイな。」
フレクは天幕に籠もり、各部隊の被害状況を記した書類に目を通していた。
初戦で相手にオルフェンが居たことにより、苦戦を強いられてきていた。
それでもなんとか戦線を押し上げて行くことに成功はしていたが、損耗が激しい。
このままでは他がどう動くつもりだろうが防衛に徹するしかない。
他の者達には悪いが、ここに軍がいるだけでも意味があるだろう。
「……くそっ!こんなとこでずっと続いていた小競り合いが効いてくるとは!」
アルフレッド達が東の国やアナテルに行っている間も帝国とは小競り合いが続いていた。
将兵達はすでに限界が来ているのである。
「悪いな……。この戦何もできそうに無い……。」
アルフレッドやフレン姉上のために帝国に弓を引いた。
そんな我が儘な戦いに巻き込んだ以上これ以上無理をさせる訳には行かない。
あいつらには悪いがここは防衛に徹することにしよう。
「死ぬなよ。皆……。」
神聖帝国方面へと進軍し、ジゲン・アナテル連合軍にはこちらの方面へと追い込むように展開するように指示を出した。
そして今、この大陸最大のアイフィス平野にて全軍が終結したのであった。
帝国軍は平野の中央に、それを三方から囲む形で友軍が展開している。
敵も合流したことを上手く利用し陣形を建て直しているようであった。
こちらの方面がやや高台となっており、敵の陣容がよく見える。
「陛下。」
「陛下はよせ。まだ王ではない。」
側近の一人が近づいてきた。
「……申し訳ありません。」
「それで、どうした?」
「はっ、どうやら敵はこの軍を突破し帝都へ戻るつもりらしく、その用意をしているようです。」
確かに今包囲している軍勢の中で最も兵力が少ないのはこの方面だ。
ならば最も突破しやすい軍を撃破して帝都にて籠城するのが最も最善であろう。
「ま、そう来るだろうな。」
「いかがなさいますか?アーロン様。」
どうするか迷うところではあるが、敵は大軍であるが故に兵糧の消耗が激しいだろう。
幸いにもこちら側は山が近い。
ならば一度後退し、山から見下ろす形で陣形を組めばこちら側が有利になる。
そして敵がこの軍を素通りしようとすれば我々は尾根伝いにそれに付いて行く。
ちなみにだが既にこの状況を予測して帝都へと至る道には少数だが、部隊を配備している。
そこでほんの少しでも時間を稼げればこの本陣がそこへと向かい、更に時間を稼ぎそして各方面の友軍の到着を持って包囲殲滅する。
この作戦ならば勝てるだろう。
相手も状況は既に察しているであろうし、中々動き出すことは出来ないだろう。
兵糧の消耗も狙えるこの作戦を取ると側近に伝えた。
「畏まりました。では、軍を後退させる支度をしておきます。」
「あぁ、よろしく頼む。」
わが王国は長年帝国と戦争を繰り返してきた。
婚姻同盟を締結してからは収まったものの、家族や友人を帝国に殺された者は少なくない。
我が軍の戦意は充分である。
そして、この戦に勝てば民は私を王へと押し上げるだろう。
それまではせいぜいアルフレッド達の手勢も含めて上手く利用してやるとしよう。
「なるほどな……。そうするのか。」
「どうされますかな?ジゲン様。」
ヤンに今後の動きを問われる。
遠くのエルドニア軍の動きを見てなんとなくだが、狙いは分かった。
向こうにある山岳部をうまく利用した戦術というわけか。
それの要は我々の軍と神聖帝国軍というわけか。
「まぁ、あの動きにうまく合わせるしかないでしょうなぁ。」
「ええ、この戦場の主力は私達。どう動くかによって勝敗は決まりますからね。」
こちらにはイリス殿やローゼン殿を始めとしたアルフレッドが王国を脱出するときから率いてきた歴戦の兵やローゼンに付き従っていた盗賊ギルドの者等がいる。
純粋な戦力で言えば圧倒的だろう。
さらに東の国の精鋭や、アナテル軍の部隊もいる。
アナテル軍の陸軍大将のジゼルは現在部隊の再編等を任せている。
少し前まで戦っていたのはルーゼンやマトウといった武力に秀でた者がいたので苦戦を強いられていた。
軍も疲弊が激しく、今やっと休息を取らせてやることが出来たのだ。
「まずは休息を取らせよう。このまま追撃してもまともに戦えないだろう。逆に返り討ちにあっておしまいだ。」
「はい。それがよろしいかと。」
ヤンは肯定してくれたが、他の者は異論があるようだ。
「ジゲン殿。それは確かに最善だと思いますけどね、だからこそ敵がこの行動を予測しているかもしれない。いいや、我が兄、ルーゼンならば必ず予測しるでしょうな。」
「はい。私も同じ意見です。そうしてしまえば各方面軍は待機することになるでしょう。話によれば神聖帝国軍も疲弊してるらしいので休息を取ると思われます。」
確かに2人の言うことは納得出来る。
しかし、このまま攻勢に出るのも厳しいだろう。
「そして、私ならば休息しているところに夜襲を仕掛けます。」
皆が黙り込む。
確かに相手はエルドニア軍を突破し帝都へ向かう動きを見せてはいるが、相手も疲弊しているから動くのは明日だろう。
という風に思わせておいて各方面軍に夜襲を仕掛ければ油断しきっているこちらは壊滅は免れないだろう。
「確かにな……。ならば、逆手に取りこちらが休息していると見せかけ夜襲を誘うとしよう。我々は万全の体勢で迎え撃つぞ。」
イリス殿の状況判断能力にはこの前の戦闘からも助けられていた。
これほどの大軍同士の戦は経験が浅く、そういうところは他の者に頼るほかは無い。
アルフレッドの作ってくれた縁には感謝しなければならないな。
「……キツイな。」
フレクは天幕に籠もり、各部隊の被害状況を記した書類に目を通していた。
初戦で相手にオルフェンが居たことにより、苦戦を強いられてきていた。
それでもなんとか戦線を押し上げて行くことに成功はしていたが、損耗が激しい。
このままでは他がどう動くつもりだろうが防衛に徹するしかない。
他の者達には悪いが、ここに軍がいるだけでも意味があるだろう。
「……くそっ!こんなとこでずっと続いていた小競り合いが効いてくるとは!」
アルフレッド達が東の国やアナテルに行っている間も帝国とは小競り合いが続いていた。
将兵達はすでに限界が来ているのである。
「悪いな……。この戦何もできそうに無い……。」
アルフレッドやフレン姉上のために帝国に弓を引いた。
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