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アイフィス決戦 その3
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「はあっ!」
「くっ!流石だな!セラ殿!」
ルーゼンと戦闘し、わかったことがある。
恐らくではあるが、軍の指揮をマトウに任せて自分はこちらに来たのだろう。
恐らく殿として。
今帝都へと至る要所は全てががら空きである。
つまり今ならば帝都への脱出が可能なのだ。
敵の動きの早さから最悪の状況はこうする予定だったのであろう。
「これならどうだ!」
ルーゼンの斧を受ける。
槍が折れる事は無いだろうが、衝撃はそのまま伝わってくるので、少し痛い。
やはり、体格差もあるのでこちらが不利になるのは避けられないようだ。
だが、勝機が無いわけでもない。
「はっ!」
突きを繰り出す。
難なく受け流されるが、間髪いれずに攻撃し続ける。
一撃一撃が弱い分、手数で勝負する。
「くそっ!」
ルーゼンは細かい動作は苦手なようで少しずつだが、傷を与えることに成功している。
しかし、どれも致命傷ではない。
「ならば!」
槍を手離し、腰に携えていた剣を抜き放つ。
槍の方が得意ではあるが、意表を突くのにこういった事も有効だ。
「何だと!?」
ルーゼンは間合いが変わったことで隙が出来、距離を詰めれた。
その隙を見逃さずに斬る。
「っ!浅いか!」
当たりはしたが、浅かった。
だが、ここが勝機である。
返す刀で首を狙う。
が、ルーゼンが体勢を変えたので、狙いがずれ右腕を斬った。
「ぐっ!」
ルーゼンは飛び退き、膝をつく。
出来れば切り落とす位はしたかったのだが、流石はルーゼン。
簡単にはやらせてくれないようだ。
だが、あの腕ではもう武器を持てないだろう。
「降参してください。ルーゼン殿。」
近より、剣を向ける。
「はっ、まさかこの俺が負けるなんてな。」
「……手を抜いていましたね?」
さすがに無傷で勝利とはいかなかったが、ルーゼン相手に大きな傷が無いのはおかしい。
と言うことは手を抜かれていたということだろう。
「……まあな。あんたに傷をつけたとあってはアルフレッド様に殺されちまうからな。」
「……では。」
「ああ。降参だ。」
「敵が降参した?」
「ええ。どうやらそのようですな。」
ジゲンは軍を率いていたが、ヤンから報告を受けていた。
敵が戦闘行為を中止し、武器を捨てたと言うのだ。
一部の部隊は帝都方面へ撤退していったらしいのだが、大半は降伏した。
「一体どういうことだ?」
「どうやらセラ殿がルーゼン殿を倒したようです。恐らく兵達は予め知っていたのでしょうな。こうなると。」
と言うことはルーゼンは決闘により、負けるつもりだったということだ。
「ジゲン殿!こちらです!」
すると、遠くからイリスの声が聞こえた。
その方向を見るとセラとイリス、そして、ローゼンとルーゼンがいた。
すぐさま駆け寄る。
「これは?」
「どうやら兄貴はこの戦は帝国が負けると踏んで動いていたみたいで、マトウも降伏するという作戦に反対した奴等を帝都まで連れていったら我々に降伏する手筈らしいです。」
ルーゼンを見るとイリスに治療を受けていた。
「私ごときが軽傷で勝てるのはおかしいと思って詳しく聞いてみたんです。中々口を割らなかったのでちょっと痛い思いをしてもらいましたけど。」
セラが笑顔で言う。
笑顔が怖いのだが。
恐らく与えた傷を更に痛め付けたのだろう。
ルーゼンの包帯が血まみれである。
セラは多分それなりにルーゼンと戦えるのを楽しみにしていたのだろう。
手を抜かれたので、怒っているのだ。
「今度は本気でお願いしますよ?それまでは死なせませんから。」
「あ、あぁ。」
流石のルーゼンも目を合わせられないようだ。
「ジゲン殿。救援感謝する。」
「これはアーロン殿。」
すると、その様子を見ていたアーロンが近寄ってきた。
「貴方達が居なければ我々は死んでいた。」
「えぇ。間に合って本当に良かった。」
辺りを見るとエルドニアの兵が減っていることに気づく。
それほどまでに苦戦したのだろう。
「先程遠目ではあったが、神聖帝国の方を攻撃していた敵も撤退したようだ。既に一部の部隊に追撃を命じている。マトウの後も追わせている。」
「なるほど通りで兵が少ないのですね。」
それなら合点がいく。
先程まで死ぬかもしれない状況だったのに恐ろしく手が早い。
これがアルフレッドの兄の実力か。
「本来ならばここらで戦勝祝いと行きたいのですが……。」
「ええ。今はやることがありますからね。」
これほどの大合戦、盛大に打ち上げしたいのも分かるが、まだ終わった訳ではない。
最後のそう仕上げがまだ終わっていないのだ。
「では、部隊の再編成をしつつ行きましょうか。」
「はい。いざ、帝都へ。」
帝都ではアルフレッド達が戦っているのだ。
こんなところで立ち止まっている訳には行かない。
一刻も速く助けにいくとしよう。
「くっ!流石だな!セラ殿!」
ルーゼンと戦闘し、わかったことがある。
恐らくではあるが、軍の指揮をマトウに任せて自分はこちらに来たのだろう。
恐らく殿として。
今帝都へと至る要所は全てががら空きである。
つまり今ならば帝都への脱出が可能なのだ。
敵の動きの早さから最悪の状況はこうする予定だったのであろう。
「これならどうだ!」
ルーゼンの斧を受ける。
槍が折れる事は無いだろうが、衝撃はそのまま伝わってくるので、少し痛い。
やはり、体格差もあるのでこちらが不利になるのは避けられないようだ。
だが、勝機が無いわけでもない。
「はっ!」
突きを繰り出す。
難なく受け流されるが、間髪いれずに攻撃し続ける。
一撃一撃が弱い分、手数で勝負する。
「くそっ!」
ルーゼンは細かい動作は苦手なようで少しずつだが、傷を与えることに成功している。
しかし、どれも致命傷ではない。
「ならば!」
槍を手離し、腰に携えていた剣を抜き放つ。
槍の方が得意ではあるが、意表を突くのにこういった事も有効だ。
「何だと!?」
ルーゼンは間合いが変わったことで隙が出来、距離を詰めれた。
その隙を見逃さずに斬る。
「っ!浅いか!」
当たりはしたが、浅かった。
だが、ここが勝機である。
返す刀で首を狙う。
が、ルーゼンが体勢を変えたので、狙いがずれ右腕を斬った。
「ぐっ!」
ルーゼンは飛び退き、膝をつく。
出来れば切り落とす位はしたかったのだが、流石はルーゼン。
簡単にはやらせてくれないようだ。
だが、あの腕ではもう武器を持てないだろう。
「降参してください。ルーゼン殿。」
近より、剣を向ける。
「はっ、まさかこの俺が負けるなんてな。」
「……手を抜いていましたね?」
さすがに無傷で勝利とはいかなかったが、ルーゼン相手に大きな傷が無いのはおかしい。
と言うことは手を抜かれていたということだろう。
「……まあな。あんたに傷をつけたとあってはアルフレッド様に殺されちまうからな。」
「……では。」
「ああ。降参だ。」
「敵が降参した?」
「ええ。どうやらそのようですな。」
ジゲンは軍を率いていたが、ヤンから報告を受けていた。
敵が戦闘行為を中止し、武器を捨てたと言うのだ。
一部の部隊は帝都方面へ撤退していったらしいのだが、大半は降伏した。
「一体どういうことだ?」
「どうやらセラ殿がルーゼン殿を倒したようです。恐らく兵達は予め知っていたのでしょうな。こうなると。」
と言うことはルーゼンは決闘により、負けるつもりだったということだ。
「ジゲン殿!こちらです!」
すると、遠くからイリスの声が聞こえた。
その方向を見るとセラとイリス、そして、ローゼンとルーゼンがいた。
すぐさま駆け寄る。
「これは?」
「どうやら兄貴はこの戦は帝国が負けると踏んで動いていたみたいで、マトウも降伏するという作戦に反対した奴等を帝都まで連れていったら我々に降伏する手筈らしいです。」
ルーゼンを見るとイリスに治療を受けていた。
「私ごときが軽傷で勝てるのはおかしいと思って詳しく聞いてみたんです。中々口を割らなかったのでちょっと痛い思いをしてもらいましたけど。」
セラが笑顔で言う。
笑顔が怖いのだが。
恐らく与えた傷を更に痛め付けたのだろう。
ルーゼンの包帯が血まみれである。
セラは多分それなりにルーゼンと戦えるのを楽しみにしていたのだろう。
手を抜かれたので、怒っているのだ。
「今度は本気でお願いしますよ?それまでは死なせませんから。」
「あ、あぁ。」
流石のルーゼンも目を合わせられないようだ。
「ジゲン殿。救援感謝する。」
「これはアーロン殿。」
すると、その様子を見ていたアーロンが近寄ってきた。
「貴方達が居なければ我々は死んでいた。」
「えぇ。間に合って本当に良かった。」
辺りを見るとエルドニアの兵が減っていることに気づく。
それほどまでに苦戦したのだろう。
「先程遠目ではあったが、神聖帝国の方を攻撃していた敵も撤退したようだ。既に一部の部隊に追撃を命じている。マトウの後も追わせている。」
「なるほど通りで兵が少ないのですね。」
それなら合点がいく。
先程まで死ぬかもしれない状況だったのに恐ろしく手が早い。
これがアルフレッドの兄の実力か。
「本来ならばここらで戦勝祝いと行きたいのですが……。」
「ええ。今はやることがありますからね。」
これほどの大合戦、盛大に打ち上げしたいのも分かるが、まだ終わった訳ではない。
最後のそう仕上げがまだ終わっていないのだ。
「では、部隊の再編成をしつつ行きましょうか。」
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帝都ではアルフレッド達が戦っているのだ。
こんなところで立ち止まっている訳には行かない。
一刻も速く助けにいくとしよう。
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