王国再興物語 〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

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戦後処理

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 後日、各国軍を交えての戦勝祝いも終わり戦後処理について話し合うことになった。
 まず、帝国の領土をどうするかについてだ。
 一応形式上は俺がシャムス皇帝ということになっている。
 最後にフローゼルに譲られたからだ。
 なので、すこしややこしいことになってしまった。
 本来、今回の戦争の責任をとるはずのフローゼルは既に皇帝ではないので、各国への賠償を俺がすることになる。
 そして、賠償の相手には俺もいるのだ。
 そして、各陣営も俺にやれ所領を寄越せだの金を寄越せだの言いづらくなっているのだ。
 だが、そこは俺が気にしないでほしいと言ったので、なんとかスムーズに話を進行することが出来た。
 そもそもシャムス帝国が俺の物になったのだ。
 それだけでも儲けものだ。
 まず、ジゲン達は正式に公国として国を立ち上げ、ジゲンの姓からワン公国と名付けられた。
 公国とは貴族が支配する国が名乗る物なのだがジゲンは自分の血筋を否定し先祖が行ってきた事は王族がやるようなことでは無いと、自分は王族にふさわしくは無いと言い放ち遠い親戚や今回の戦で活躍したもの達を貴族にした上で皆で協力して国を盛り上げて行くとのことだ。
 彼の先祖が一体どのような大罪をおかしたのかは知らないがこれまではマトウという明確な敵を相手に結束していたのが、マトウが捕縛され敵が居なくなったらまた国が荒れるのではと思っていたがその心配は無かったようだ。
 ワン公国には山岳地帯が多かったので、農業がしやすいような隣接した平野部を割譲した。
 ちなみに神聖シャムス帝国はもはや帝国と争う必要が無くなったので、帝国と統合された。
 フレク叔父上には所領を幾つか分けるつもりだ。
 アナテル国についてだが、今回の戦争で最も被害を受けた国だという事でアナテル側のエシルス大陸沿岸部の割譲と多額の賠償金を渡すことを約束した。
 レノン王の代理のレインは遠慮がちだったがジゼルが説得してくれたお陰で了承してもらえた。
 正直この程度では足りない気もするが、これから返していこう。
 そして、最後にエルドニアについてだが、アーロン兄上に国王をついでもらおうと思っていたのだが、アーロン兄上が辞退したので渋々俺がエルドニア国王になった。
 だが、皇帝の任を投げ捨てる訳にも行かないので、俺は国王兼皇帝になった。
 つまり、俺はこの世界で最大勢力を手に入れたのだ。
 エルドニア王国とシャムス帝国が統合されるということである。
 周りから国名を改めた方が良いと言われたので俺はこの国をエルドニア・シャムス二重王国とした。
 元々王国を再興することが目的でもあったし、帝国は負けた国なので王国にした。
 二重王国は前世のオーストリア・ハンガリー二重帝国から頂いた。
 そして、更に国王なのか皇帝なのかもよくわからんからまとめろとジゲンに言われたので俺は帝王を名乗ることにした。
 少し子供っぽい気もするが周りが思った以上に好印象だったのでこれで行こう。
 ということでここに新たにエルドニア・シャムス二重王国初代帝王のアルフレッド・シャム・エルドニアが誕生したのであった。
 そして、次の議題は今回捕らえることの出来た教団に関係した人物、つまりはセイルズやその他の人間をどうするかについてだ。
 セイルズとランについては教団の人間であった事は明らかなので今後のためにも情報を吐いてもらうことにした。
 身柄については引き続きフレク叔父上が担当する。
 ルーゼンとマトウは既に降伏していたことから無罪放免にした。
 ローゼンに新たに所領を与えたのでその手伝いをルーゼンにさせるように手配した。
 ルーゼンとローゼンは打ち首を覚悟していたようだったが2人から泣いて喜ばれてしまった。
 マトウについては特に何も指示は出さなかった。
 だが、恐らくワン公国で見かけることになるだろう。
 彼は彼なりに罪滅ぼしをするつもりらしい。
 そして、アロンの遺言から西からの女神の侵攻を警戒して既に潜り込んでいるという女神の手先を炙り出す為に調査組織を形成した。
 調査組織はゼイル達冒険者を中心に編成し、大陸各地で独自に魔法を使えるものを捜索してもらう予定だ。
 今後のためにも早くセイルズには情報を吐いてもらいたい。
 そして、その他細かいことを定めた後、数日間の帝都滞在を楽しみ、皆が一度それぞれの目的を果たすため解散することになった。
 レインとジゼルはアナテルへ帰り、ジゲンもヤンと共にワン公国へ、アーロン兄上も自分の所領へと帰り、フレク叔父上も所領へ帰っていった。
 イリスさんは孤児院へ、ローゼン、ルーゼンも新たに自分の所領となったところへ盗賊ギルドの者達と向かっていった。
 ゼイルは一度子供達の面倒を見に地元へ帰ると言っていた。
 どうやら彼の子供は数名か冒険者をしているらしく、独自に教団を探っていたらしい。
 その事で話もあるらしく、調査組織についてはその話を聞いてからにするとのことだ。
「さて、アルフレッド様。参りましょうか。」
「足元にお気をつけ下さい。若。」
 そして、俺達はセラとセインと共にようやく本来の目的を果たすためにエルドニアへ帰ることとした。
 ようやく母上を生き返らせる事が出来るのだ。
「さあ、早く母上に会いに行こう!」
 既に母上の遺体を守っている墓守達にも報せは出したので、向こうも準備しているだろう。
 最初はどうなるかと思ったが平和な世界で母上を生き返らせる事が出来て本当に良かった。
 まぁ、道中何が起こるかわからない。
 気をつけて行くとしよう。

「おい!降りろ!」
 急に馬車が止まり降りるように言われる。
 隣には未だに意識を取り戻さないランが転がっている。
 私、セイルズは今、フレクの手勢に彼の領地へと連行されていた。
 言われるがままに馬車を降りる。
「なんだ?まだ目的地では……。」
 私が降りると連行していた兵は中で転がっていたランを引っ張り出し、地面に投げた。
「おい!一体何を……。」
 すると、その兵は懐から銃を取り出し迷うこと無くランの額を撃ち抜いた。
 ランは意識を失っていたので反応は無かったが、絶命しただろう。
「なっ……。」
「やぁ、セイルズ。」
 すると、兵をかき分けフレクが出てきた。
「フレク殿……これは一体?」
「……ランは頭の中に神具が埋め込まれておりそれを媒介に不死を得ていた。つまり、それが破壊されれば再生はしない。首をはねても生きてはいられるが頭を潰されれば終わりでは結局人間と一緒ではないか。これでは量産しても無駄だな。」
 確かにその通りだが、それは教団の幹部クラスしか知らない事だ。
 それに、先程の発言から予測できる事は……。
「お前、教団の人間か?」
「ん?ああ、そうだ。神聖帝国なんてヒントもあげてたのにわからなかったのか?」
 なるほど、特に何も考えずにいたが、よくよく考えてみれば確かにな。
「で、俺をどうするんだ?」
「こいつらは失敗作だったが、いいデータは取れた。だが、もう用はすんだから消した。だが、お前は教団の幹部だ。上からは生かして返すように言われてるが……。」
 フレクは右手の平をこちらに向ける。
「お前は姉上を殺したからな。生かしては置けない。俺はアルフレッド程優しくは無いぞ。」
 教団幹部でも、他の幹部は全く知らされていない。
 まあ、私は幹部の中でも末席だったからかもしれないが。
 すこし、やり過ぎてしまったようだ。
「燃えて死ね。フレイムランス。」
 すると、空中に無数の炎で作られた槍のようなものが現れる。
 これが魔法と言うものらしい。
 自分には才能が無かったので魔道具や神具で誤魔化していたが、これは凄まじい。
 死ぬ前に見れて良かったとさえ思える。
「じゃあな、セイン。元気でな。」
 その瞬間炎に包まれる。
 まぁ、悔いはあったがやれるだけやったから良しとしよう。

「では、後はお任せ下さい。」
「ああ、しっかりと族の襲撃に偽装しておけ。」
 まぁ、今回の一連の事件はフレン姉上が殺されなくても介入するつもりだったが、最終的にはなんとかなったな。
 姉上は教団とは関係のない人間なので、アルフレッド達と楽しくやってほしいものだ。
 だが、教団がアルフレッドや姉上を殺せと言ったら俺は迷い無くやれるだろうか。
 それに、女神様の手先とやらが既にこちらに来ているとはどう言うことだろうか。
 それについても奴等に先を越される前にこちらで確保しなくては。
「フレク様?いかがなさいましたか?」
「いや、何でもない。」
 まぁ、今のうちから考えても仕方がない。
 今は姉上が生き返るのを楽しみに待つとしよう。
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