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幸か不幸か
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「ふむ……中々手強いな」
ドルーガは敵の激しい抵抗に、苦戦を強いられていた。
城壁からの激しい抵抗。
それに加えて投石機による援護。
ザルノール側が優勢だと思えば、援軍が現れて抵抗が激しくなる。
ドルーガの想定ではもっと早くに片がつく予定であった。
「……少し戦い方を変えるか。ふむ……」
ドルーガは少し思考を巡らせた。
そしてすぐに決断を下す
「よし。北門の攻めを少し弱らせ、総攻撃時に備えて兵を休ませよ」
「は!」
「南門の攻めを強くする。南門は全力で攻めよ」
「は!」
それぞれ指示を聞いた伝令は走り出す。
ドルーガは基本、敵の情報が不十分な時は初戦の小手調べで敵の動きや作戦を読み、そこから策を練る。
そんな戦い方に不満を覚えていた将がドルーガに声を掛ける。
「ドルーガ殿……敵を警戒し過ぎでは? このまま攻め続けても勝てると思いますが」
「いや、奴らの狙いが読めてきた。奴らは恐らくドワーフ軍を待っているのだ」
「ドワーフ軍……つまり、ドルーガ殿の逃がしたという佐切とやらとガルン・ドヴェルグの二万五千ですか? 我々は二十万。たったのそれだけで戦局は変わらぬかと思いますが」
「うむ。そうであろう。奴らが現れたとて敵の総勢七万五千。我らは二十万。数的には有利は揺るがん。が、敵は屈強なドワーフ軍。それを率いるのは優れた軍師である佐切殿だ。決して侮れん。お主が考えているような、スキルを全面に押し出した戦等、これまでの戦とそう変わらん。相手の意表を突くにはスキルを使わない戦法を取らねば、被害が増えるだけだ」
そんな臆病な姿勢を見せるドルーガに、不満を募らせていた将は更に不満を溜める。
(ドルーガめ……スキルも無いくせに偉そうに。佐切とやらも持つスキルは『念話』だろう? 何故そこまで危険視しているのだ……気に入らん。出自ならば俺の方が……)
こういう不満を募らせていたのはこの男だけではなかった。
各門を攻めている将兵達。
その殆どが同じような不満を抱えていたのである。
その不満が不和を生む。
「そうか……」
そして、この男はとある事に気がつく。
いや、気がついてしまった。
「ドルーガ殿。少々席を外すぞ」
「ん? 如何なされた?」
「いや、これから本格的に攻め始めるのであろう? ならば、今の内に出すもの出しておかねばな。厠へ行って来る」
「そうでしたか。なに、今すぐ始める訳でもない。ゆっくりしてきなされ」
「かたじけない」
「ここか……」
男は数人の兵を連れてとある天幕を訪れる。
そして天幕の前に立っている護衛に声を掛けた。
「失礼。ここは加藤殿の天幕だな? ドルーガ殿より伝言だ」
「伝令では無く? それに後ろの兵は……」
「個人的興味から加藤殿と話してみたくてな。許可はとってある。後ろの兵は保険だ。敵が潜んでいるかもしれんからな」
「しかし……」
「俺が誰だか知らぬのか?」
男は鎧にあしらわれた胸元の家紋を見せつける。
槌、矢、冠が組み合わされたデザインの家紋であった。
「そ、それはドルグフォレスト家の家紋……貴方様は……」
「ドルグフォレスト家当主、ガイア・ドルグフォレストだ。さ、通してもらうぞ」
ガイアは名乗りを上げると護衛を押しのけそのまま天幕の中へと入っていく。
そして、その天幕の主へと声を掛ける。
「失礼……ふむ……」
加藤はベッドで寝ていた。
「戦の最中に寝るとは……非常識な男め」
ガイアは辺りを確認して剣を抜く。
「……ふぅ……」
深呼吸をして、加藤の喉元に思い切り剣を突き刺した。
加藤は苦しみと痛みから目を覚ます。
「かはっ……な……なに……を……」
「悪いな。恨むならそのスキルを得た自分の人生をを呪うんだな」
「やめっ……」
ガイアは何度も何度も剣を突き刺す。
加藤は無ずすべ無く、串刺しにされていく。
やがて、加藤は息ををしなくなる。
「ガ、ガイア様! 一体何の騒ぎ……」
「こ、これは……」
天幕の護衛の兵二人は慌てて天幕に入り、その光景に驚愕する。
そして、事態を飲み込んだ。
剣を抜き、声を上げる。
「ガイア様! これは……立派な反逆行為ですぞ!」
「どういうわけか、聞かせてもらいます!」
「そうか。お前らはドルーガお抱えの兵か。通りで嫌な匂いがすると思った。やれ」
「は」
すると、護衛の背後にいたガイアの私兵によって護衛の兵の首が切られる。
護衛二人の首は、音もなく地面に落ちた。
血飛沫を上げて、首から上が無くなった護衛の二人の体は音を上げて倒れる。
「フ……フハハ! フハハハハ! これで邪魔者は居なくなった! この軍の総大将、ドルーガはスキルを持たない! なのにここまでうまく戦を運んだ! 奴は敵と示し合わせ、我々を一網打尽にするつもりなのだ! 奴は内通者だ! 必ずや奴を捕らえよ! 全軍に知らせよ!」
「は!」
兵達は皆去っていく。
殺人現場と化した天幕の中で、ガイアは一人大きな笑い声を上げていた。
ドルーガは敵の激しい抵抗に、苦戦を強いられていた。
城壁からの激しい抵抗。
それに加えて投石機による援護。
ザルノール側が優勢だと思えば、援軍が現れて抵抗が激しくなる。
ドルーガの想定ではもっと早くに片がつく予定であった。
「……少し戦い方を変えるか。ふむ……」
ドルーガは少し思考を巡らせた。
そしてすぐに決断を下す
「よし。北門の攻めを少し弱らせ、総攻撃時に備えて兵を休ませよ」
「は!」
「南門の攻めを強くする。南門は全力で攻めよ」
「は!」
それぞれ指示を聞いた伝令は走り出す。
ドルーガは基本、敵の情報が不十分な時は初戦の小手調べで敵の動きや作戦を読み、そこから策を練る。
そんな戦い方に不満を覚えていた将がドルーガに声を掛ける。
「ドルーガ殿……敵を警戒し過ぎでは? このまま攻め続けても勝てると思いますが」
「いや、奴らの狙いが読めてきた。奴らは恐らくドワーフ軍を待っているのだ」
「ドワーフ軍……つまり、ドルーガ殿の逃がしたという佐切とやらとガルン・ドヴェルグの二万五千ですか? 我々は二十万。たったのそれだけで戦局は変わらぬかと思いますが」
「うむ。そうであろう。奴らが現れたとて敵の総勢七万五千。我らは二十万。数的には有利は揺るがん。が、敵は屈強なドワーフ軍。それを率いるのは優れた軍師である佐切殿だ。決して侮れん。お主が考えているような、スキルを全面に押し出した戦等、これまでの戦とそう変わらん。相手の意表を突くにはスキルを使わない戦法を取らねば、被害が増えるだけだ」
そんな臆病な姿勢を見せるドルーガに、不満を募らせていた将は更に不満を溜める。
(ドルーガめ……スキルも無いくせに偉そうに。佐切とやらも持つスキルは『念話』だろう? 何故そこまで危険視しているのだ……気に入らん。出自ならば俺の方が……)
こういう不満を募らせていたのはこの男だけではなかった。
各門を攻めている将兵達。
その殆どが同じような不満を抱えていたのである。
その不満が不和を生む。
「そうか……」
そして、この男はとある事に気がつく。
いや、気がついてしまった。
「ドルーガ殿。少々席を外すぞ」
「ん? 如何なされた?」
「いや、これから本格的に攻め始めるのであろう? ならば、今の内に出すもの出しておかねばな。厠へ行って来る」
「そうでしたか。なに、今すぐ始める訳でもない。ゆっくりしてきなされ」
「かたじけない」
「ここか……」
男は数人の兵を連れてとある天幕を訪れる。
そして天幕の前に立っている護衛に声を掛けた。
「失礼。ここは加藤殿の天幕だな? ドルーガ殿より伝言だ」
「伝令では無く? それに後ろの兵は……」
「個人的興味から加藤殿と話してみたくてな。許可はとってある。後ろの兵は保険だ。敵が潜んでいるかもしれんからな」
「しかし……」
「俺が誰だか知らぬのか?」
男は鎧にあしらわれた胸元の家紋を見せつける。
槌、矢、冠が組み合わされたデザインの家紋であった。
「そ、それはドルグフォレスト家の家紋……貴方様は……」
「ドルグフォレスト家当主、ガイア・ドルグフォレストだ。さ、通してもらうぞ」
ガイアは名乗りを上げると護衛を押しのけそのまま天幕の中へと入っていく。
そして、その天幕の主へと声を掛ける。
「失礼……ふむ……」
加藤はベッドで寝ていた。
「戦の最中に寝るとは……非常識な男め」
ガイアは辺りを確認して剣を抜く。
「……ふぅ……」
深呼吸をして、加藤の喉元に思い切り剣を突き刺した。
加藤は苦しみと痛みから目を覚ます。
「かはっ……な……なに……を……」
「悪いな。恨むならそのスキルを得た自分の人生をを呪うんだな」
「やめっ……」
ガイアは何度も何度も剣を突き刺す。
加藤は無ずすべ無く、串刺しにされていく。
やがて、加藤は息ををしなくなる。
「ガ、ガイア様! 一体何の騒ぎ……」
「こ、これは……」
天幕の護衛の兵二人は慌てて天幕に入り、その光景に驚愕する。
そして、事態を飲み込んだ。
剣を抜き、声を上げる。
「ガイア様! これは……立派な反逆行為ですぞ!」
「どういうわけか、聞かせてもらいます!」
「そうか。お前らはドルーガお抱えの兵か。通りで嫌な匂いがすると思った。やれ」
「は」
すると、護衛の背後にいたガイアの私兵によって護衛の兵の首が切られる。
護衛二人の首は、音もなく地面に落ちた。
血飛沫を上げて、首から上が無くなった護衛の二人の体は音を上げて倒れる。
「フ……フハハ! フハハハハ! これで邪魔者は居なくなった! この軍の総大将、ドルーガはスキルを持たない! なのにここまでうまく戦を運んだ! 奴は敵と示し合わせ、我々を一網打尽にするつもりなのだ! 奴は内通者だ! 必ずや奴を捕らえよ! 全軍に知らせよ!」
「は!」
兵達は皆去っていく。
殺人現場と化した天幕の中で、ガイアは一人大きな笑い声を上げていた。
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