126 / 155
戦況の変化
しおりを挟む
「リーダー! 待たせた! 援軍だ!」
「おお! やっと来たか! というか久々だな! お前らなら安心だ!」
北門に援軍が派遣されて暫く経った後、北門の攻勢が弱まるのと同時に南門にて敵の攻勢が激しくなった。
これはまずいと援軍を要請、更には投石機の援護も加えて要請した。
フィアナの指揮能力には感謝しなければならない。
だが、遊軍に配されたのが魔王派の仲間たちだったのは幸いだ。
信頼出来る。
殆どの魔王派の主力は魔族に理解があるとしてキサラさんの元で戦っている。
そんな中、少数精鋭として、元々の俺の仲間は遊軍の部隊長クラスとして配されたのだ。
しかし正直、全員限界が近い。
「敵は城門を打ち破る部隊とはしごをかけて登ろうとする部隊、そして矢で牽制する部隊に別れてる。さっきまでなら何とかなったが、こうも一斉に来られると流石にきつい!」
「分かった! じゃあ俺達はどれを狙う?」
「城門を狙う奴らを頼む! 矢で牽制してくる奴らは正直投石機でなんとかなる。俺達は城壁を登ろうとしてくる奴等と城壁に取り付いた奴等を仕留める! 城壁に取りつかれたら投石機も意味をなさないからな!」
「城門をねらう奴等だな! 分かった! 総員ついてこい! リーダーに良いところを見せる良い機会だ!」
援軍はそのまま任務を果たすべく城門付近へ向かった。
彼等ならば任せても安心だろう。
「ふぅ……なんとかなりそうか? いや、こういう時こそ警戒するべき、だったか」
敵軍総大将ドルーガは優れた将である。
ジョバンニさんの言う通りならば、事が順調に進んでいる時こそ決して油断は出来ない。
この南門の攻勢が強まったのも、何か狙いがあるのだろう。
「くそ……一体どう出て……ん?」
敵の動きを警戒していると、何やら敵軍の動きが非常に悪くなる。
後ろを振り返り様子を確認する者がちらほらと。
俺達の事を気にしながら、周りの仲間を確認している。
やがて敵軍は完全に足を止めた。
「これも策か? ……いや、なんにせよチャンスだ! 敵の足は止まった! 惑わされるな! 矢を射かけ続けよ! 投石機もフルで撃ちまくれ! 敵の数を減らせ!」
不気味ではあるが敵の動きが鈍くなったのには変わらない。
今こそ敵兵を削る好機である。
「城壁にとりついたやつらにも手で石を落とせ! 敵を追い払うぞ!」
しかし不気味である。
ジョバンニさんの言葉のせいか、不安はどうしても拭えない。
(だがこの違和感はなんだ……ドルーガとやらの策とも思えない……本当に敵は混乱しているように見える……不気味だな……)
「妙ですね……」
「敵の動きが明らかに変わったわね。まるで統率が取れていない」
参謀部でもあるフィアナとカレンのもとにも敵の動きがおかしくなった事は知らされていた。
「前線の報告では、敵が演技をしているとは考えにくいですし、ジョバンニさんの話では敵軍総大将のドルーガはそういう演技めいた事をするような人では無いとのことです」
「やはり指揮系統に何かしらのトラブルがあったとみるべきね」
この時、フィアナ達はガイアによる事件の事を何も知らない。
状況が飲み込めないのも当然である。
すると、伝令が駆け込んでくる。
「ご報告申し上げます! 全城門の敵軍がスキルを使い始めたとのこと! こちらもスキルを使える者はスキルにて応戦しております!」
「スキル……? 何故急に……敵の勢いは?」
「は。まだ然程強くはありませんが、敵が一斉に攻め寄せてきたことで、こちらの前線もかなり厳しい状態に……特に直前まで激しい攻勢にさらされていた南門は厳しい状態です」
「……どうするの? 他の城門は何とかなるかもしれないけど、南門は……」
「民の避難は完了しました。最後の策の準備も整って来てはいますが……」
フィアナとしては、これ以上退く選択はほぼ無かった。
この城だけでは決して勝てない。
そう理解していたからである。
(スキルを使われたのなら仕方が無い……かと言って他の城門から兵を引き抜けばそこが破られてしまう……ここは……)
これ以上兵の損害を増やすわけには行かない。
撤退だ、と考えたその時。
すると、フィアナとカレンの頭の中に声が響く。
(いいや。まだ退くな)
その声に、フィアナは困惑よりも先に喜びを覚える。
「佐切様!」
「そうか……スキルが使えるようになったから……」
フィアナの喜びの声を聞きながら、佐切は続ける。
(よくここまで耐えてくれた。『俯瞰』で状況は把握している。どうやら敵の指揮官が変わったようだ。必ずほころびが出てくる。それまで耐えるんだ。フィアナなら大丈夫だ。俺達はもうすぐ到着する。それまで耐えてくれ)
「はい!」
フィアナは、再度その知恵を振るうのであった。
「おお! やっと来たか! というか久々だな! お前らなら安心だ!」
北門に援軍が派遣されて暫く経った後、北門の攻勢が弱まるのと同時に南門にて敵の攻勢が激しくなった。
これはまずいと援軍を要請、更には投石機の援護も加えて要請した。
フィアナの指揮能力には感謝しなければならない。
だが、遊軍に配されたのが魔王派の仲間たちだったのは幸いだ。
信頼出来る。
殆どの魔王派の主力は魔族に理解があるとしてキサラさんの元で戦っている。
そんな中、少数精鋭として、元々の俺の仲間は遊軍の部隊長クラスとして配されたのだ。
しかし正直、全員限界が近い。
「敵は城門を打ち破る部隊とはしごをかけて登ろうとする部隊、そして矢で牽制する部隊に別れてる。さっきまでなら何とかなったが、こうも一斉に来られると流石にきつい!」
「分かった! じゃあ俺達はどれを狙う?」
「城門を狙う奴らを頼む! 矢で牽制してくる奴らは正直投石機でなんとかなる。俺達は城壁を登ろうとしてくる奴等と城壁に取り付いた奴等を仕留める! 城壁に取りつかれたら投石機も意味をなさないからな!」
「城門をねらう奴等だな! 分かった! 総員ついてこい! リーダーに良いところを見せる良い機会だ!」
援軍はそのまま任務を果たすべく城門付近へ向かった。
彼等ならば任せても安心だろう。
「ふぅ……なんとかなりそうか? いや、こういう時こそ警戒するべき、だったか」
敵軍総大将ドルーガは優れた将である。
ジョバンニさんの言う通りならば、事が順調に進んでいる時こそ決して油断は出来ない。
この南門の攻勢が強まったのも、何か狙いがあるのだろう。
「くそ……一体どう出て……ん?」
敵の動きを警戒していると、何やら敵軍の動きが非常に悪くなる。
後ろを振り返り様子を確認する者がちらほらと。
俺達の事を気にしながら、周りの仲間を確認している。
やがて敵軍は完全に足を止めた。
「これも策か? ……いや、なんにせよチャンスだ! 敵の足は止まった! 惑わされるな! 矢を射かけ続けよ! 投石機もフルで撃ちまくれ! 敵の数を減らせ!」
不気味ではあるが敵の動きが鈍くなったのには変わらない。
今こそ敵兵を削る好機である。
「城壁にとりついたやつらにも手で石を落とせ! 敵を追い払うぞ!」
しかし不気味である。
ジョバンニさんの言葉のせいか、不安はどうしても拭えない。
(だがこの違和感はなんだ……ドルーガとやらの策とも思えない……本当に敵は混乱しているように見える……不気味だな……)
「妙ですね……」
「敵の動きが明らかに変わったわね。まるで統率が取れていない」
参謀部でもあるフィアナとカレンのもとにも敵の動きがおかしくなった事は知らされていた。
「前線の報告では、敵が演技をしているとは考えにくいですし、ジョバンニさんの話では敵軍総大将のドルーガはそういう演技めいた事をするような人では無いとのことです」
「やはり指揮系統に何かしらのトラブルがあったとみるべきね」
この時、フィアナ達はガイアによる事件の事を何も知らない。
状況が飲み込めないのも当然である。
すると、伝令が駆け込んでくる。
「ご報告申し上げます! 全城門の敵軍がスキルを使い始めたとのこと! こちらもスキルを使える者はスキルにて応戦しております!」
「スキル……? 何故急に……敵の勢いは?」
「は。まだ然程強くはありませんが、敵が一斉に攻め寄せてきたことで、こちらの前線もかなり厳しい状態に……特に直前まで激しい攻勢にさらされていた南門は厳しい状態です」
「……どうするの? 他の城門は何とかなるかもしれないけど、南門は……」
「民の避難は完了しました。最後の策の準備も整って来てはいますが……」
フィアナとしては、これ以上退く選択はほぼ無かった。
この城だけでは決して勝てない。
そう理解していたからである。
(スキルを使われたのなら仕方が無い……かと言って他の城門から兵を引き抜けばそこが破られてしまう……ここは……)
これ以上兵の損害を増やすわけには行かない。
撤退だ、と考えたその時。
すると、フィアナとカレンの頭の中に声が響く。
(いいや。まだ退くな)
その声に、フィアナは困惑よりも先に喜びを覚える。
「佐切様!」
「そうか……スキルが使えるようになったから……」
フィアナの喜びの声を聞きながら、佐切は続ける。
(よくここまで耐えてくれた。『俯瞰』で状況は把握している。どうやら敵の指揮官が変わったようだ。必ずほころびが出てくる。それまで耐えるんだ。フィアナなら大丈夫だ。俺達はもうすぐ到着する。それまで耐えてくれ)
「はい!」
フィアナは、再度その知恵を振るうのであった。
0
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる