歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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戦況の変化

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「リーダー! 待たせた! 援軍だ!」
「おお! やっと来たか! というか久々だな! お前らなら安心だ!」
 
 北門に援軍が派遣されて暫く経った後、北門の攻勢が弱まるのと同時に南門にて敵の攻勢が激しくなった。
 これはまずいと援軍を要請、更には投石機の援護も加えて要請した。
 フィアナの指揮能力には感謝しなければならない。
 だが、遊軍に配されたのが魔王派の仲間たちだったのは幸いだ。
 信頼出来る。
 殆どの魔王派の主力は魔族に理解があるとしてキサラさんの元で戦っている。
 そんな中、少数精鋭として、元々の俺の仲間は遊軍の部隊長クラスとして配されたのだ。
 しかし正直、全員限界が近い。
 
「敵は城門を打ち破る部隊とはしごをかけて登ろうとする部隊、そして矢で牽制する部隊に別れてる。さっきまでなら何とかなったが、こうも一斉に来られると流石にきつい!」
「分かった! じゃあ俺達はどれを狙う?」
「城門を狙う奴らを頼む! 矢で牽制してくる奴らは正直投石機でなんとかなる。俺達は城壁を登ろうとしてくる奴等と城壁に取り付いた奴等を仕留める! 城壁に取りつかれたら投石機も意味をなさないからな!」
「城門をねらう奴等だな! 分かった! 総員ついてこい! リーダーに良いところを見せる良い機会だ!」
 
 援軍はそのまま任務を果たすべく城門付近へ向かった。
 彼等ならば任せても安心だろう。
 
「ふぅ……なんとかなりそうか? いや、こういう時こそ警戒するべき、だったか」
 
 敵軍総大将ドルーガは優れた将である。
 ジョバンニさんの言う通りならば、事が順調に進んでいる時こそ決して油断は出来ない。
 この南門の攻勢が強まったのも、何か狙いがあるのだろう。
 
「くそ……一体どう出て……ん?」
 
 敵の動きを警戒していると、何やら敵軍の動きが非常に悪くなる。
 後ろを振り返り様子を確認する者がちらほらと。
 俺達の事を気にしながら、周りの仲間を確認している。
 やがて敵軍は完全に足を止めた。
 
「これも策か? ……いや、なんにせよチャンスだ! 敵の足は止まった! 惑わされるな! 矢を射かけ続けよ! 投石機もフルで撃ちまくれ! 敵の数を減らせ!」
 
 不気味ではあるが敵の動きが鈍くなったのには変わらない。
 今こそ敵兵を削る好機である。
 
「城壁にとりついたやつらにも手で石を落とせ! 敵を追い払うぞ!」
 
 しかし不気味である。
 ジョバンニさんの言葉のせいか、不安はどうしても拭えない。
 
(だがこの違和感はなんだ……ドルーガとやらの策とも思えない……本当に敵は混乱しているように見える……不気味だな……)
 
 
 
 
「妙ですね……」
「敵の動きが明らかに変わったわね。まるで統率が取れていない」
 
 参謀部でもあるフィアナとカレンのもとにも敵の動きがおかしくなった事は知らされていた。
 
「前線の報告では、敵が演技をしているとは考えにくいですし、ジョバンニさんの話では敵軍総大将のドルーガはそういう演技めいた事をするような人では無いとのことです」
「やはり指揮系統に何かしらのトラブルがあったとみるべきね」
 
 この時、フィアナ達はガイアによる事件の事を何も知らない。
 状況が飲み込めないのも当然である。
 すると、伝令が駆け込んでくる。
 
「ご報告申し上げます! 全城門の敵軍がスキルを使い始めたとのこと! こちらもスキルを使える者はスキルにて応戦しております!」
「スキル……? 何故急に……敵の勢いは?」
「は。まだ然程強くはありませんが、敵が一斉に攻め寄せてきたことで、こちらの前線もかなり厳しい状態に……特に直前まで激しい攻勢にさらされていた南門は厳しい状態です」
「……どうするの? 他の城門は何とかなるかもしれないけど、南門は……」
「民の避難は完了しました。最後の策の準備も整って来てはいますが……」
 
 フィアナとしては、これ以上退く選択はほぼ無かった。
 この城だけでは決して勝てない。
 そう理解していたからである。
 
(スキルを使われたのなら仕方が無い……かと言って他の城門から兵を引き抜けばそこが破られてしまう……ここは……)
 
 これ以上兵の損害を増やすわけには行かない。
 撤退だ、と考えたその時。
 すると、フィアナとカレンの頭の中に声が響く。
 
(いいや。まだ退くな)
 
 その声に、フィアナは困惑よりも先に喜びを覚える。
 
「佐切様!」
「そうか……スキルが使えるようになったから……」

 フィアナの喜びの声を聞きながら、佐切は続ける。

(よくここまで耐えてくれた。『俯瞰』で状況は把握している。どうやら敵の指揮官が変わったようだ。必ずほころびが出てくる。それまで耐えるんだ。フィアナなら大丈夫だ。俺達はもうすぐ到着する。それまで耐えてくれ)
「はい!」
 
 フィアナは、再度その知恵を振るうのであった。
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