歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
3 / 155

冒険へ

しおりを挟む
「はあっ!」
 
 スキルを授与されてから一月。
 クラスメイトの一人、真田護は異世界で得た新たな仲間達と共に冒険を続けていた。
 この日は、ゴブリンの集団が出没するということで対処にあたっていた。
 
「護! 最後の一匹そっち行ったよ!」
「おう! いつも通り行くぞ!」
 
 この世界で最弱とも言われるゴブリンが一匹真田の下へ迫る。
 
「よし! 『シールド』!」
 
 真田が手をかざすと、その方向に光の壁が現れ、ゴブリンはそれに阻まれる。
 
「ッ? ッ!?」
 
 ゴブリンは何も状況を把握出来ず、まるでパントマイムかのように壁を確かめる。
 
「おらぁ! 『斬撃』!」
 
 その背後を仲間の一人、ゴルドーが斬る。
 ゴルドーのスキル斬撃によって、ゴブリンの着ていた粗悪な防具の影響を無視してダメージを与えた。
 
「ナイスタイミングだ! 護!」
「お前もな! ゴルドー!」
 
 二人はまるで旧知の仲かのように仲が良かった。
 ゴルドーのスキルは最強と言えるようなスキルではなかったが、ゴルドー自身の強さによってそれを補っていた。
 
「きゃっ!」
 
 すると、一つの悲鳴が響く。
 そちらを振り向くと、死んだふりをしていたゴブリンが仲間の一人、ソフィアの足を掴み、剣を振りかざしていた。
 
「くっ! 間に合え! 『シールド』!」
 
 再度護が手をかざす。
 すると、ソフィアの足を掴んでいたゴブリンの腕が綺麗に切れる。
 そこには、護のスキルの『シールド』が展開されていた。
 
「グァッ!?」
 
 ゴブリンは腕を押さえ、痛みにもがく。
 
「燃えろ! 『ファイアー』!」
 
 その隙をつき、尻もちをついたソフィアがそのままゴブリンを燃やした。
 あの姫、エリスのスキル程では無いが、火球を飛ばす事が出来る。
 ゴブリン程度を殺すのには充分である。
 
「大丈夫か!?」
「あ、ありがとう……」
 
 護がソフィアのもとに駆け寄り、尻もちをつくソフィアに手を差し伸べる。
 
「安心しろ。俺が皆を守り抜いてやるからな!」
 
 俺が皆を守り抜く。
 それが護の口癖であった。
 
「さて、今度こそ全滅させたな」
「そうだな。王都へ戻るか」
 
 転移したクラスメイトはそれぞれスキル持ちの仲間が二人与えられた。
 そして、その二人とともに異世界での経験を積んでいた。
 それは、魔王軍を滅ぼす為の下準備であった。
 すると、三人のもとに騎馬が駆け寄る。
 
「失礼します! 真田護様ですね!?」
「あぁ。俺がそうだ」
「国王陛下より伝令です。こちらを」
 
 護は伝令から渡された文を受け取り、中身を確認する。
 
「……成る程」
「国王陛下は何だって?」
「俺達勇者の活動によって魔王軍は滅亡寸前である。魔王軍最後の要塞、ルヴァンニ要塞を攻め落とすための準備として、王国騎士団と合流して陽動せよ。要塞の戦力を分散させ、主力の援護をせよ、だとさ」
 
 護は文をゴルドーに渡す。
 
「成る程な……合流地点もそう遠くない。まだ少し猶予はあるな」
「良くわからんな……滅亡寸前なら全力で叩き潰せば良いだろ。というか、俺たちの活躍で魔王軍が滅亡寸前って……来た時点で風前の灯だっただろ……」
「既に魔王軍と戦い始めて五十年近く経ってるからね……まぁ、二十年目でほぼほぼ決着はついてたみたいだけど……生まれる前だから分かんないや。お国に従わなくっちゃどうなるかわからないんでしょ? やるしか無いでしょ」
 
 護は頷く。
 事実、護達クラスメイトらが召喚される三十年前に魔王軍の主力は壊滅し、魔族は各地でゲリラ活動を続けていた。
 かつては人類も反魔王連合を組み、連携して魔王を倒そうとしていたが、魔王軍に勢いがなくなってからは連携もせず、人間同士で争っていた。
 魔王軍もそのおかげで全滅は免れ、今代の魔王によって徐々に軍備が整い始めている状況であった。
 
「ま、とりあえず今回の依頼は完了した。依頼人に報告して、少し休むとするか」
 
 護達は国王の命令を果たす為、まずは依頼人のいる町へ歩みを進めるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...