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異世界の戦場
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「真田護様ですね。これより、あなたの指揮下に入ります。王国第六騎士団、団長のジョバンニと申します」
「おう。よろしく」
期日により、護達は王国より派遣された騎士団と合流する。
その騎士団長は、黒髪で短髪であり、日本人にとっても親しみが持ちやすい見た目をしていた。
しかし、受け答えから生真面目な性格が伝わってきており、気楽な性格をしている護とは互いに馬が合わないと二人共本能的に理解していた。
「さて、国王陛下の作戦を説明致します。まず……」
「あぁ、良いよ。面倒臭い。軍の指揮とかしたこと無いしその辺は任せるわ。俺等はついてくだけだからさ」
「しかし……」
ジョバンニが国王から授かった作戦は、護のスキルあっての物だった。
つまり、護には作戦をしっかりと理解してもらい、状況によって臨機応変に動いてもらう必要があった。
「……ったく、敵の主力じゃないんだろ? そんなの俺が前に出るだけ無意味だろ」
「……団長、勇者様もこう言っておられますし、良いのでは?」
「……そうだな。では勇者様。せめて先頭で兵達に顔を見せてやっては下さいませんか? 皆、勇者様のお顔を一度は見てみたいと言っておりましたので」
その言葉を聞き、護は頷く。
「お、そういうことなら喜んで。よし、皆行こうぜ」
護達は、仲間達と共に行軍する軍の先頭へと向かう。
「……本来ならば軍の中段で全体を把握してもらいつつ必要に応じてスキルを使ってもらいたかったが……第二案は承諾してもらえて助かった。事前の情報通り、目立ちたがりなようだな」
「そうですね……最も先に敵にぶつかるであろう先頭の士気も上がるでしょうし、敵と接触してもある程度は対応が可能でしょう」
ジョバンニは副官であるタインの言葉に頷く。
「……我が騎士団にはスキル持ちが居ない……それ故、スキル持ちに頼るしか無いのだ……武運を祈るしかあるまい……しかし、あの物の言う通りになるとはな……」
「ふぁ~あ」
軍の先頭を進む護は大きなあくびをする。
既に日は落ちていたが、それでも休むこと無く軍を進めていた。
「めっちゃ眠いんだけど……もう休まね?」
「そうだよね……夜更かしはお肌にも悪いし、そろそろ休憩しよ!」
「よし! 皆、今日はもう終わりだ! 休むぞ!」
護の言葉にゴルドーとソフィアも賛同し、ゴルドーが勝手に軍の足を止める。
「お、おい、良いのか?」
「勇者様が言ってるんだ。間違い無いだろ」
「そ、そうだな……夜営の準備を始めるか……」
軍の先頭集団がバラバラに夜営の準備を始める。
それを見た後続も、戸惑いつつもぼちぼちと準備を進めていく。
「よーし、火を焚いてくれ。歩き続けて腹減った。飯にしよう」
「そうだな。腹が減っては戦はできぬと言うしな」
「おーい! 皆も飯にしようぜ!」
護達も歩みを止め、火を焚き、飯の準備をする。
その言葉につられ、兵達も独自に飯の準備をする。
前方が止まり、異変を察知したジョバンニはすぐさま馬を飛ばし、自ら先頭集団へ現れた。
「お前達! 何故足を止めている!? 夜営の準備に飯の支度まで……ふざけているのか!?」
「これはこれは騎士団長様。いえ、勇者様方が疲れては戦はできんと、野営をするようにお命じになられたのです」
その兵の言葉にジョバンニは怒りをあらわにする。
剣を抜き、その兵へ切っ先を向ける。
「今すぐ進軍を再開しろ! いや、その前に火を消せ! すぐにだ!」
「えぇ……飯もまだですよ……」
「貴様! こんな夜闇の中で不必要に明かりを灯せばどうなるか分からんのか!? 兵糧も限られているというのに無駄飯を食らうつもりか!?」
兵のふざけた態度にジョバンニは怒りを隠せない。
その騒ぎは、段々と広がっていく。
すると、そこに護が現れる。
「おいおいジョバンニさん。少し位大目に見てやれよ」
「馬鹿者! ここは既に敵地だ! 両側は山に囲まれ、軍は細く伸びている! まだ浅いとは言え、敵が潜んでいないとも……っ!?」
そう叫ぶジョバンニのすぐ横に矢が突き刺さる。
ジョバンニは、すぐに敵襲だと判断する。
「っ! 敵襲! 敵襲だ! 総員陣を立て直せ!」
ジョバンニがそう叫んだ次の瞬間、両側の山に灯りが灯る。
そして、程なくしてそれらの明かりが霞むほどの矢が放たれる。
「くっ……」
「はぁ……『シールド』」
しかし、それらの矢が降り注ぐ事はなかった。
全ての矢は光り輝く壁によって宙に停止している。
「全く……こんな卑怯な手を使うのか、魔王軍は。はいはい、皆さん、盾を上に構えて下さいよ。スキル解除するぞ」
その護の言葉に兵達は盾を空に掲げる。
「三、二、一……はい!」
護が合図をすると、矢が落ちてくる。
勢いを失った矢は損害を一つも与える事は出来なかった。
「……感謝致します。勇者様」
「おう。でも、さっき俺に馬鹿者って言ったよな……俺は結構根に持つタイプだぜ?」
「……申し訳ありません。以後、気を付けます」
「ま、分かればいいさ」
すると、両側の山にあった灯りが消え、木々が揺らぎ、一斉に動き始める。
「……退いたか。追撃しましょう」
「おう。雑魚を蹴散らしに行くとしますか」
ジョバンニらはすぐさま動けるものを集め、追撃を始める。
これが陽動の可能性もあったが、勇者のスキルを使えば勝てると見込んでいたからである。
(気に入らん……戦をした事も無い奴がスキルによって調子に乗っている……あの最初の一本の矢は確実に俺、もしくは勇者を狙っていた……あれで殺されていれば……負けていた)
ジョバンニは心の内は穏やかでは無かった。
しかし、最大限勇者を利用しようと心に決めるのであった。
「おう。よろしく」
期日により、護達は王国より派遣された騎士団と合流する。
その騎士団長は、黒髪で短髪であり、日本人にとっても親しみが持ちやすい見た目をしていた。
しかし、受け答えから生真面目な性格が伝わってきており、気楽な性格をしている護とは互いに馬が合わないと二人共本能的に理解していた。
「さて、国王陛下の作戦を説明致します。まず……」
「あぁ、良いよ。面倒臭い。軍の指揮とかしたこと無いしその辺は任せるわ。俺等はついてくだけだからさ」
「しかし……」
ジョバンニが国王から授かった作戦は、護のスキルあっての物だった。
つまり、護には作戦をしっかりと理解してもらい、状況によって臨機応変に動いてもらう必要があった。
「……ったく、敵の主力じゃないんだろ? そんなの俺が前に出るだけ無意味だろ」
「……団長、勇者様もこう言っておられますし、良いのでは?」
「……そうだな。では勇者様。せめて先頭で兵達に顔を見せてやっては下さいませんか? 皆、勇者様のお顔を一度は見てみたいと言っておりましたので」
その言葉を聞き、護は頷く。
「お、そういうことなら喜んで。よし、皆行こうぜ」
護達は、仲間達と共に行軍する軍の先頭へと向かう。
「……本来ならば軍の中段で全体を把握してもらいつつ必要に応じてスキルを使ってもらいたかったが……第二案は承諾してもらえて助かった。事前の情報通り、目立ちたがりなようだな」
「そうですね……最も先に敵にぶつかるであろう先頭の士気も上がるでしょうし、敵と接触してもある程度は対応が可能でしょう」
ジョバンニは副官であるタインの言葉に頷く。
「……我が騎士団にはスキル持ちが居ない……それ故、スキル持ちに頼るしか無いのだ……武運を祈るしかあるまい……しかし、あの物の言う通りになるとはな……」
「ふぁ~あ」
軍の先頭を進む護は大きなあくびをする。
既に日は落ちていたが、それでも休むこと無く軍を進めていた。
「めっちゃ眠いんだけど……もう休まね?」
「そうだよね……夜更かしはお肌にも悪いし、そろそろ休憩しよ!」
「よし! 皆、今日はもう終わりだ! 休むぞ!」
護の言葉にゴルドーとソフィアも賛同し、ゴルドーが勝手に軍の足を止める。
「お、おい、良いのか?」
「勇者様が言ってるんだ。間違い無いだろ」
「そ、そうだな……夜営の準備を始めるか……」
軍の先頭集団がバラバラに夜営の準備を始める。
それを見た後続も、戸惑いつつもぼちぼちと準備を進めていく。
「よーし、火を焚いてくれ。歩き続けて腹減った。飯にしよう」
「そうだな。腹が減っては戦はできぬと言うしな」
「おーい! 皆も飯にしようぜ!」
護達も歩みを止め、火を焚き、飯の準備をする。
その言葉につられ、兵達も独自に飯の準備をする。
前方が止まり、異変を察知したジョバンニはすぐさま馬を飛ばし、自ら先頭集団へ現れた。
「お前達! 何故足を止めている!? 夜営の準備に飯の支度まで……ふざけているのか!?」
「これはこれは騎士団長様。いえ、勇者様方が疲れては戦はできんと、野営をするようにお命じになられたのです」
その兵の言葉にジョバンニは怒りをあらわにする。
剣を抜き、その兵へ切っ先を向ける。
「今すぐ進軍を再開しろ! いや、その前に火を消せ! すぐにだ!」
「えぇ……飯もまだですよ……」
「貴様! こんな夜闇の中で不必要に明かりを灯せばどうなるか分からんのか!? 兵糧も限られているというのに無駄飯を食らうつもりか!?」
兵のふざけた態度にジョバンニは怒りを隠せない。
その騒ぎは、段々と広がっていく。
すると、そこに護が現れる。
「おいおいジョバンニさん。少し位大目に見てやれよ」
「馬鹿者! ここは既に敵地だ! 両側は山に囲まれ、軍は細く伸びている! まだ浅いとは言え、敵が潜んでいないとも……っ!?」
そう叫ぶジョバンニのすぐ横に矢が突き刺さる。
ジョバンニは、すぐに敵襲だと判断する。
「っ! 敵襲! 敵襲だ! 総員陣を立て直せ!」
ジョバンニがそう叫んだ次の瞬間、両側の山に灯りが灯る。
そして、程なくしてそれらの明かりが霞むほどの矢が放たれる。
「くっ……」
「はぁ……『シールド』」
しかし、それらの矢が降り注ぐ事はなかった。
全ての矢は光り輝く壁によって宙に停止している。
「全く……こんな卑怯な手を使うのか、魔王軍は。はいはい、皆さん、盾を上に構えて下さいよ。スキル解除するぞ」
その護の言葉に兵達は盾を空に掲げる。
「三、二、一……はい!」
護が合図をすると、矢が落ちてくる。
勢いを失った矢は損害を一つも与える事は出来なかった。
「……感謝致します。勇者様」
「おう。でも、さっき俺に馬鹿者って言ったよな……俺は結構根に持つタイプだぜ?」
「……申し訳ありません。以後、気を付けます」
「ま、分かればいいさ」
すると、両側の山にあった灯りが消え、木々が揺らぎ、一斉に動き始める。
「……退いたか。追撃しましょう」
「おう。雑魚を蹴散らしに行くとしますか」
ジョバンニらはすぐさま動けるものを集め、追撃を始める。
これが陽動の可能性もあったが、勇者のスキルを使えば勝てると見込んでいたからである。
(気に入らん……戦をした事も無い奴がスキルによって調子に乗っている……あの最初の一本の矢は確実に俺、もしくは勇者を狙っていた……あれで殺されていれば……負けていた)
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しかし、最大限勇者を利用しようと心に決めるのであった。
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