歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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罠、突破

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「くそっ! ここもか!」
 
 第一列が罠に陥り、別ルートで進むも、そこにも罠があった。
 既に十列近くが被害にあっている。
 それでいて、正解のルートを見つけられていないのだ。
 
「一体どこがあの門へと通ずる道なのだ……」
「隊長……これ以上被害が出ればあの砦を攻められません……」
 
 副官のタインの声で、考えを改める。
 
「……よし、皆、作戦を変えるぞ!」
 
 兵達をかき分け、自ら先頭に立つ。
 そして、慎重に足元を探る。
 
「隊長! 前に出られては危険です!」
「どうか下がって!」
「……いいや、突破方を思いついたんだ。盾を持ってこい! 戦闘不能になった味方のもので良い!」
 
 そう言うと、すぐさま後方から盾が運ばれてくる。
 罠によって負傷した味方は後方で治療を受けている。
 その味方の盾を地面に敷く。
 
「……よし、これで大丈夫だ」
「た、隊長?」
 
 不安そうにしている兵の肩を叩く。
 
「皆! 落とし穴はこの盾程の大きさは無い! 盾を地面に敷き、その上を進め! 盾なら大量に余っている! もし足りなくなったら踏み台にし終わった物を再度前へと持ってこい! これで地獄の落とし穴は突破出来るぞ!」
「お、おお! 流石は隊長だ!」
 
 第六騎士団はジョバンニの方法で順調に進軍を再開する。
 
(……順調だな……だが、この順調さが恐ろしい……)
 
 ジョバンニの心中には、言葉に出来ぬ不安が残っているのであった。
 
 
 
「成る程……そう来たか」
 
 第六騎士団が罠の突破方を見つけ、少しずつだが砦に迫りつつある。
 それは大量に仕掛けた罠が無効化されたことを意味した。
 
「これは予想外なのですか?」
「まぁな……何かしらで突破するとは予測してたけど、こんなにも早く突破されるなんてな……」
「はい……正解のルートなんて無いので、もっと削られてくれると思っていたのですが……」
 
 そう、この罠地帯に正解のルートは無い。
 俺達がここに到達し、砦に入った時点で俺達が通った正解のルートに新しく罠を設置したのだ。
 つまり、ジョバンニ達は正解の道なんて無いのに、それを探りながら進んでいたのだ。
 
「さて……進軍速度はゆっくりだが、あれではいずれ到達するな」
「はい。でも、あの方法では左右に大きく展開出来無いと思います。両端に散っている皆を敵軍に集中させては?」
「……」
 
 そのフィアナの発言に少し驚く。
 こちらがしようとしていた事をフィアナが意見具申してくれた。
 これは、成長の証である。
 
「……そうだな。流石だ、フィアナ。『俯瞰』でも不穏な動きを見せる一団は無い。俺が考えていた事をもう自分で導けるようになってるな。本当に一軍を任せても大丈夫かもしれない」
「そんな……まだまだです」
 
 等と話していると、第六騎士団は罠を突破した。
 慎重に堀を越え、土塁を登り始めている。
 
「……堀まで罠を仕掛ける余裕は無かったからな……弓で応戦してるが弾幕が足りない。至急戦力を集中させよう」
「はい。ここまで来たからには敵もスキル持ちを出してくると思います。それの対策も考えなくては」
 
 幾度の実戦を経て、フィアナは立派な軍師に成長した。
 なにはともあれ、ここが正念場。
 何も敵を全滅させる必要など無いのだ。
 こちらの目標は最初から一つなのだから。
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