歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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罠の数々

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「慎重に進め! どこに罠があるかわからんぞ!」
 
 足元は草で生い茂っており、足元の視界は悪い。
 佐切殿ならば、罠を張り巡らせていると言う事は容易に想像がつく。
 幸い、人が隠れられるほどの背丈の草は無いので、奇襲の心配は無い。
 しかし、ちょっとした落とし穴や罠なんかは作れる。
 そのため、二列縦隊で進軍する。
 前を進んだ者が無事ならばそれが正解の道。
 無事でないのならばそれは不正解の道ということである。
 
「砦である以上、何処かに正解のルートはある筈! それを探し当て、あの門まで辿り着くのだ!」
 
 すると、最前列の陣形が崩れ始める。

「っ! 止まれ! 罠にはまったようだ。報告を待つ!」

 ジョバンニは馬上にいるので、様子がよく見える。
 先頭の部隊の盾が乱れている。
 罠に嵌った証拠である。
 少しすると、伝令が走ってくる。
 
「隊長! 第一列、罠に嵌りました!」
「被害は!?」
「……せ、戦闘続行は不可能です……死者はおりませんが……」
 
 伝令は事細かに罠を報告する。
 
「落とし穴の上に、草木がかけられ偽装されており、それに気付かず足を踏み入れると、このようなトゲのついた板がトラバサミのように足に……鎧を簡単に貫き、歩く事は出来ません……」
 
 伝令は血だらけのトゲのついた板を差し出す。
 それは、その罠の威力を示すのに十分であった。
 
「こ、これは……」
 
 
 
「パンジスティック」
「パンジスティック……ですか?」
 
 聞き返すフィアナに頷く。
 
「そうだ。俺の世界でアメリカという超大国を苦しめたベトコンという組織が使った罠だ」
 
 第二次大戦が終結し、その後に行われたベトナム戦争。
 そこでアメリカと敵対していたベトナムの非正規軍事組織が使った罠である。
 
「本当ならトゲに糞尿を塗りたくって疫病を蔓延させたりもしていたらしいが……」
 
 そう言うと、フィアナ明らかに嫌そうな顔をする。
 その話題を出しただけても、少し申し訳なく思えるほど嫌そうな顔をしていた。
 
「……勿論、今回はやってない」
「ほ……そうですか……良かった……」
「……因みに……レナにも聞かせない方が良いかな?」
 
 フィアナは全力で首を縦に振る。
 レナは非戦闘員と共にグンローグ要塞に戻ってもらうつもりだったが、本人だっての希望で、砦内で大人しくしてもらっている。
 
「……まぁそうだよな……なにはともあれ、死んだ味方はどうしようもない。死体は助けられないのだから捨てるしか無いが、下手に生きている味方は救わねばならない。敵の進軍速度、傷ついた味方の姿は士気をどんどんと落としていく。これが罠の効果だな」
 
 実際、敵は足を止めた。
 全ては策の通りである。
 しかし。
 
「……突破され、力攻めされれば負ける。どれほど数を減らして、指揮を落とせるかが肝心だ」
 
 最終局面はまだ始まったばかりであるのだ。
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