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第三戦 グンローグ要塞搦手攻防戦 最終局面
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「これは……」
翌日も休むこと無く進み続けた。
予想外にも敵の妨害はなく、難なく例の盆地を越え、後少しでグンローグ要塞へとたどり着くという所であった。
しかし最後の登り道、その先にあったのは最後の戦場であった。
「要塞……いえ、砦でしょうか」
「……砦とすらも言い難い、土塁を積み上げた程度の簡素な作りだな……」
目の前にはそこにはないはずの砦。
とは言え、それは丸太で柵が作られ、堀が掘られ、土塁が少々盛られている程度の物だった。
それは、この隘路を防ぐように作られていた。
「……恐らく、反対側は何もないのだろう。こちらから来る軍にだけ対応するための砦か……」
「……これが、佐切殿の最後の策でしょうか」
タインを始め、第六騎士団の面々は佐切との面識がある者も少なくない。
そして、それらの面々は皆佐切の才能を知っている。
「最悪ですね……我々は道中、常に気を張っていたせいでかなり疲弊している……それにここは登り道。相手は完全に守りを固めており、道中には罠も大量に仕掛けられている筈……」
「……完全に不利だな」
見た所、出入り口は一つだけ。
そして、底に至る道までに、大量の罠が仕掛けられている筈。
完全に不利な戦である。
「……それに、数でも負けてますよね……これは……」
「……いや、数ではこちらが勝っていると見て良いだろう」
タインが数的不利を口にするが、それを否定する。
「もし数で勝っているのならば、道中構わず仕掛けてきた筈だ。それをしてこなかったということは数的には劣っていたということになる。あの初戦で見せた松明の数や矢の雨も、数的不利をごまかす為のものだったのだろう」
「成る程……しかし道中でそれを判断し、陣形を崩せばそれこそ敵の思う壺だったかもしれない……だからあの陣形のまま進むしか無かったと……」
「あぁ。それこそ、敵の思う壺だっただろうがな。何にせよ、道中で判断する材料は一つもなかった。もし他の方法で進めば、それに対応して攻撃を仕掛けてきた筈だ」
敵の砦を見つつ、口を開く。
「さて……どう攻めるか……」
「さて……どう攻めてくるかな?」
眼前には陣形を整えつつある第六騎士団。
前列に盾を並べ、こちらに見えないように後方で陣を組んでいる。
まだ攻めてくる気配はない。
俺とフィアナは他よりも一段高く積まれた土塁の上から敵の様子を見ていた。
敵の様子を見たフィアナが口を開く。
「とうやら、落とすしか無いと判断したようですね」
「あぁ。待ち受けているこちら側が基本的には有利だ。だが、急ごしらえ……それも非戦闘員が作った砦だ。兵士も少ないし、まともに攻められればひとたまりもない。それに、敵にはスキル持ちもいる。冷静に見れば圧倒的不利なのはこちらだ」
何も手を出さずに終わった第二戦の裏で、非戦闘員にはグンローグ要塞へ離脱してもらっていた。
しかし、最後にこの砦を作ってもらったのだ。
戦闘要員や指揮官クラスの者を数名付き従わせ、急ピッチでこの砦を仕上げてもらった。
堀を掘って、出た土を土塁としてグンローグ要塞側に盛り上げる。
その上に柵を築いたのだ。
(まぁ、異国軍の侵攻を防ぐために築かれた、日本の水城が参考なんだけどな)
日本が朝鮮半島で負けた戦い、六百六十三年に行われた白村江の戦い。
その後、異国の侵攻に備えて築かれた水城を、実は参考にしていたのだ。
「その他にも落とし穴が大量に……それでどれほど削れるか……ですか」
「あぁ。通常、敵の籠もる要塞を攻め落とすには三倍の兵が必要だと言う。ここにいるのは五百。相手は五千。つまり十倍だ。劣勢は端から明らかなんだ」
敵陣を見つつ、キサラとサナンの様子を見る。
両名はそれぞれ砦の両端に配置されている。
それぞれの箇所で防衛に努めているのだ。
「ここが狭い隘路で助かりましたね。もっと広い道だったらこんな砦作れてませんよ」
「そうだな。両側が断崖絶壁だからこそ出来た事だ」
そして、ついに敵に動きが現れる。
盾に身を隠したまま、進んできた。
第二戦で使われたテストゥドで陣形を組み、二列の縦列で進んできている。
「佐切様……来ました」
「あぁ。ここが正念場……グンローグ要塞、搦手攻防戦、最終局面だ!」
翌日も休むこと無く進み続けた。
予想外にも敵の妨害はなく、難なく例の盆地を越え、後少しでグンローグ要塞へとたどり着くという所であった。
しかし最後の登り道、その先にあったのは最後の戦場であった。
「要塞……いえ、砦でしょうか」
「……砦とすらも言い難い、土塁を積み上げた程度の簡素な作りだな……」
目の前にはそこにはないはずの砦。
とは言え、それは丸太で柵が作られ、堀が掘られ、土塁が少々盛られている程度の物だった。
それは、この隘路を防ぐように作られていた。
「……恐らく、反対側は何もないのだろう。こちらから来る軍にだけ対応するための砦か……」
「……これが、佐切殿の最後の策でしょうか」
タインを始め、第六騎士団の面々は佐切との面識がある者も少なくない。
そして、それらの面々は皆佐切の才能を知っている。
「最悪ですね……我々は道中、常に気を張っていたせいでかなり疲弊している……それにここは登り道。相手は完全に守りを固めており、道中には罠も大量に仕掛けられている筈……」
「……完全に不利だな」
見た所、出入り口は一つだけ。
そして、底に至る道までに、大量の罠が仕掛けられている筈。
完全に不利な戦である。
「……それに、数でも負けてますよね……これは……」
「……いや、数ではこちらが勝っていると見て良いだろう」
タインが数的不利を口にするが、それを否定する。
「もし数で勝っているのならば、道中構わず仕掛けてきた筈だ。それをしてこなかったということは数的には劣っていたということになる。あの初戦で見せた松明の数や矢の雨も、数的不利をごまかす為のものだったのだろう」
「成る程……しかし道中でそれを判断し、陣形を崩せばそれこそ敵の思う壺だったかもしれない……だからあの陣形のまま進むしか無かったと……」
「あぁ。それこそ、敵の思う壺だっただろうがな。何にせよ、道中で判断する材料は一つもなかった。もし他の方法で進めば、それに対応して攻撃を仕掛けてきた筈だ」
敵の砦を見つつ、口を開く。
「さて……どう攻めるか……」
「さて……どう攻めてくるかな?」
眼前には陣形を整えつつある第六騎士団。
前列に盾を並べ、こちらに見えないように後方で陣を組んでいる。
まだ攻めてくる気配はない。
俺とフィアナは他よりも一段高く積まれた土塁の上から敵の様子を見ていた。
敵の様子を見たフィアナが口を開く。
「とうやら、落とすしか無いと判断したようですね」
「あぁ。待ち受けているこちら側が基本的には有利だ。だが、急ごしらえ……それも非戦闘員が作った砦だ。兵士も少ないし、まともに攻められればひとたまりもない。それに、敵にはスキル持ちもいる。冷静に見れば圧倒的不利なのはこちらだ」
何も手を出さずに終わった第二戦の裏で、非戦闘員にはグンローグ要塞へ離脱してもらっていた。
しかし、最後にこの砦を作ってもらったのだ。
戦闘要員や指揮官クラスの者を数名付き従わせ、急ピッチでこの砦を仕上げてもらった。
堀を掘って、出た土を土塁としてグンローグ要塞側に盛り上げる。
その上に柵を築いたのだ。
(まぁ、異国軍の侵攻を防ぐために築かれた、日本の水城が参考なんだけどな)
日本が朝鮮半島で負けた戦い、六百六十三年に行われた白村江の戦い。
その後、異国の侵攻に備えて築かれた水城を、実は参考にしていたのだ。
「その他にも落とし穴が大量に……それでどれほど削れるか……ですか」
「あぁ。通常、敵の籠もる要塞を攻め落とすには三倍の兵が必要だと言う。ここにいるのは五百。相手は五千。つまり十倍だ。劣勢は端から明らかなんだ」
敵陣を見つつ、キサラとサナンの様子を見る。
両名はそれぞれ砦の両端に配置されている。
それぞれの箇所で防衛に努めているのだ。
「ここが狭い隘路で助かりましたね。もっと広い道だったらこんな砦作れてませんよ」
「そうだな。両側が断崖絶壁だからこそ出来た事だ」
そして、ついに敵に動きが現れる。
盾に身を隠したまま、進んできた。
第二戦で使われたテストゥドで陣形を組み、二列の縦列で進んできている。
「佐切様……来ました」
「あぁ。ここが正念場……グンローグ要塞、搦手攻防戦、最終局面だ!」
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