歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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勝利の道筋

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「よしよし。サナン、気合入ってるな」
 
 敵が柵を突破して砦内に侵入する。
 しかし、敵は一斉になだれ込むのでは無く、ほんの数名が左右に分かれ、盾で魔王軍を押し留める。
 その背後、堀から土塁にかけて盾の道が作られる。
 
「おお……本当に来ましたね」
「あぁ。あれが勇者の仲間、ゴルドーとソフィアだ」
 
 その盾の道から、二人のスキル持ちが砦に入ってくる。
 そして左右に分かれて、侵入した敵に対処している魔王軍と対峙する。
 
「くらえ! 『斬撃』!」
「仇は私が取る……『ファイアー』!」
 
 二人はスキルを駆使して魔王軍に被害を与える。
 そしてそれはある程度は想定済みだった。
 
「よし! 作戦通りにやれ!」
 
 念話で指示を出す。
 それに反応し、前線では動きがあった。
 
「な……」
 
 魔王軍の想定外の動きにゴルドーは言葉を漏らす。
 ゴルドーの目の前に、木の盾何枚も現れたのだ。
 そしてそれはゴルドーの視界を埋め尽くす。
 ゴルドーの視界には、盾を持つ敵は見えなくなっていた。
 これは、『斬撃』の対策である。
 相手に対して防御力を無視したダメージを与えるという『斬撃』スキル。
 つまり、敵が見えなければその効果は発揮しないのだ。
 
「これは……」
 
 そして、ソフィアも言葉を漏らした。
 ソフィアの目の前には魔族が大きな鉄の盾を持って並んでいたのだ。
 鉄の盾は勿論燃えない。
 分厚い鉄の盾で、『ファイアー』のスキルを無効化するのだ。
 
「よし……大きな被害が出る前に何とかなったな……」
「予め通達しておいて良かったですね。『念話』で指示を出す前から既に準備していたようです」
「あぁ。敵がどちらに来るかわからなかったからな。もし判断を間違えればすべてが無駄になる。……そして、これが一番大事だ。サナン!」
 
 万全の準備を整えて待機していた魔王派の仲間を率いるサナンに合図を出す。
 
「やってやれ!」
「おう!」
 
 サナン達は砦の内部から真っ直ぐ土塁を駆け上がり、第六騎士団によって開けられた柵の隙間に陣取る。
 
「おらおら! 突っ込め! 魔王派として数々の戦いを生き延びてきた俺達が相手だ!」
 
 こちら側の土塁は全て緩やかに作られており、駆け上がるのも駆け下るのも非常に容易になっている。
 それは、この状況を作り出すためである。
 
「これで第六騎士団の本隊は出てこれない……そして、この戦を俺達の勝利で終わらせられる唯一の勝機。まぁ、相手がこの世界の戦のセオリーを無視して突っ込んできたら負けてたんだがな」
 
 弓に矢をつがえ、しっかりと狙いを定めて引く。
 
「スキル持ち……それさえ仕留められれば第六騎士団は戦う理由を無くす」
 
 狙いはゴルドー。
 精神的にも未熟なソフィアは予想外の出来事が起これば簡単に隙を作るだろう。
 しかしゴルドーは場慣れしているという。
 つまり、最初に仕留めるのはゴルドーである。
 
「……俺達の勝利だ」
 
 矢を放つ。
 矢は真っ直ぐゴルドーの元へと向かっていく。
 
(ジョバンニさん……悪いが、勝たせてもらったぞ)
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