歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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魔王 サティス

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「魔王様、キサラです。例の方々をお連れしました」
「入れ」
 
 声が聞こえる。
 キサラは扉を開け、俺達もその後に続く。
 
「……良くぞ来てくれた。私が、魔王のサティスだ。キサラからの文で事情は理解している。楽にしてくれ」
 
 魔王はこちらに目もくれず、話しながら執務を続けている。
 大量の書類の山に囲まれながら筆を走らせている。
 椅子が用意されていたので、キサラからも促され、俺達はそれに座った。
 
「さて、何処から話を始めるか……」
「失礼します!」
 
 魔王が話し始めようとした。
 すると、戸が勢い良く開けられ、魔王軍の兵士が入ってくる。
 
「定時報告! 敵軍に動きなし! 各兵器、動作点検異常なし! 各部隊、欠員なし! 以上です!」
「ご苦労。下がって休め」
「は!」
 
 伝令の兵は元気に去っていった。
 その報告を聞いている間も魔王は作業を続けていた。
 と、思うと魔王は筆を置いた。
 
「さて……落ち着いたな」
 
 魔王は立ち上がると、先ほどまで作業していた机の前まで出て来る。
 スラリと腰まで伸びた赤い髪。
 服の上からなのではっきりとは分からないが体の線は少し細いように感じる。
 しかし、魔王と言うからには直接戦っても相当強いのだろう。
 ……そして平たい。
 
「勘助。目がやらしい」
「誤解だよ……」
 
 隣に座ったレナに呟かれる。
 
「……ふむ。面白い。対峙した相手をしっかりと観察する。話に聞いていた通り、頭の冴える男のようだ。期待させてもらうぞ……と、言いたいところだが、本当に使えるのか試させてもらいたい」
 
 すると、また扉が開かれ、グンローグ要塞に入る前に引き渡したスキル持ちの二人、ゴルドーとソフィアが縛られた状態で連れてこられる。
 そして、魔王から直接剣を手渡された。
 豪華な意匠が目立つ、素人の俺にも分かるほどの出来の良い剣だ。
 
「これで、この二人を斬れ」
「……」
 
 やはり、魔王とは名ばかりのものでは無いようだ。
 
(……まさか、俺の不安を見抜いているのか……)
 
 俺の不安。
 それは、洗脳が解けた事により、人を殺すこと、戦場に出る事を躊躇うのでは無いかということ。
 無論、覚悟はしている。
 しているが、いざ人の生死を目の当たりにした時、容赦無く決断を下せるか、いつも通りに動けるかというのが心配なのだ。
 
「……」
「どうした。やってみせよ。この二人を斬れば、お前が有用であると認めよう」
 
 恐らく、キサラが報告書を魔王に届けていたその内容に、洗脳について書かれていたのだろう。
 そして、解除についても。
 それを知っていたサティスは俺が使い物になるのか知りたかったのだろう。
 剣を握りしめ、こちらを睨みつける二人を見る。
 
「……」
「やはり、使えぬか」
「魔王様……」
 
 キサラも魔王相手だと流石に助け舟は出せないらしい。
 だが、そんな必要は無い。
 
「……魔王様のご懸念も、最もです。ですが、勿体無い」
「……ふむ、続けよ」
 
 サティスは俺の言葉の続きを待ってくれている。
 つまり、殺す以外の選択肢もあるのだ。
 
「キサラの報告書を読んで、洗脳が解けても尚、自分が使えるか調べたかったのでしょう。されど、その為にこの二人を殺すというのは勿体無い」
「……成る程……勿体無いと来たか……」
「はい。この二人は貴重なスキル持ちです。それに捕虜。この二人の、我が軍にとっての有効な使い方をお教え致しましょう」
 
 ならば、第三の選択肢を示して、有用性を示してやろう。
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