歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
98 / 155

師匠

しおりを挟む
「……いらっしゃい」
 
 作戦の準備が整い、決起に向けて英気を養っている最中も情報収集は欠かせない。
 それに、最後の仕掛けのこともある。
 ドワーフの国には必ず各方面に酒場がある。
 ドワーフは酒飲みなのか、西部の商業区画にはかなり多くあった。
 しかし現在訪れているのは南部、駐屯地区画の酒場である。
 念の為にフードを深く被って店を訪れた。
 
「すまない。酒は飲めないんだが、何かあるか?」
「あぁ人間か……勿論あるぞ。今日は二人目か……珍しいな」
「二人目?」
 
 店主は目線をカウンターの端のほうへとやる。
 そこには、鎧を着てフードを深く被った騎士がいた。
 かなりガタイが良い。
 座っているからはっきりとは分からないが、立てば二メートル近くありそうだ。
 ……あれが、勇者と共に来たという騎士か。
 俺は少し考えた後、その騎士に近づく。
 
「隣、失礼しても?」
「……あぁ」
 
 俺は許可を得てから隣に座る。
 
「……ここで人間か……噂にある、我々以外にここを訪れたという人間……推測するに魔王軍の関係者か?」
「……御名答ですね」
「……その風貌、この世界の人間では無い……な。異世界の……勇者か。魔王軍の勇者……つまりお前が佐切勘助か」
 
 物凄い洞察力だ。
 ほぼ何も話していないというのに見た目と持っている情報だけでそこまで言い当ててしまった。
 
「……何故話しかけてきた? 儂は敵だぞ?」
「理由は簡単です。さっきのあの距離で敵だからと焦って逃げようとすればあなたに簡単に斬り殺される。実際、そうするつもりだったでしょう?」
「……」
「だったら、話してみて説得する……出来なくても、何も知らずに死にたくはありませんから」
 
 この騎士は只者ではない。
 そして、彼が俺の正体に気付いたのと同じように、彼の正体にもおおよその推測はついた。
 
「それに、あなたも俺と話してみたかったんでしょう? ザルノール王国軍……総大将、ドルーガ殿?」
「……何故……いや、あ奴らか」
 
 ザルノール王国軍総大将、ドルーガ。
 彼はスキルを持たないが、その才覚や忠誠心、武術の腕で認められている。
 そして、ジョバンニとロームに稽古をつけていたこともあり、師匠にあたる存在だと言う。
 二人からザルノール王国軍の中で最も警戒すべき男だと聞いている。
 
「……と言うことは、やはり寝返ったか」
「やはり? あぁそうでしたね。第六騎士団は捕縛されたことになってましたか……それの救助に向かったロームさんも行方不明扱いでしたか……」
「そうだな。あの二人の考え方は儂に似ている。魔王軍に寝返るのも無理は無い」
 
 ドルーガはフードを脱いだ。
 それは、彼なりの誠意の表れだろう。
 なので、こちらもフードを脱ぐ。
 明確に言葉にしなくても洞察し、分かり合える。
 それだけで相手がいかに優れているか分かる。
 これは互いに互いの実力を認め合ったと言うことだ。
 
「お前は話が出来そうだな。佐切勘助」
「ええ、そちらこそ。ドルーガ殿」
 
 店主から飲み物が運ばれてくる。
 俺たち二人は、敵同士ではあったが、乾杯をしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...