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師匠
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「……いらっしゃい」
作戦の準備が整い、決起に向けて英気を養っている最中も情報収集は欠かせない。
それに、最後の仕掛けのこともある。
ドワーフの国には必ず各方面に酒場がある。
ドワーフは酒飲みなのか、西部の商業区画にはかなり多くあった。
しかし現在訪れているのは南部、駐屯地区画の酒場である。
念の為にフードを深く被って店を訪れた。
「すまない。酒は飲めないんだが、何かあるか?」
「あぁ人間か……勿論あるぞ。今日は二人目か……珍しいな」
「二人目?」
店主は目線をカウンターの端のほうへとやる。
そこには、鎧を着てフードを深く被った騎士がいた。
かなりガタイが良い。
座っているからはっきりとは分からないが、立てば二メートル近くありそうだ。
……あれが、勇者と共に来たという騎士か。
俺は少し考えた後、その騎士に近づく。
「隣、失礼しても?」
「……あぁ」
俺は許可を得てから隣に座る。
「……ここで人間か……噂にある、我々以外にここを訪れたという人間……推測するに魔王軍の関係者か?」
「……御名答ですね」
「……その風貌、この世界の人間では無い……な。異世界の……勇者か。魔王軍の勇者……つまりお前が佐切勘助か」
物凄い洞察力だ。
ほぼ何も話していないというのに見た目と持っている情報だけでそこまで言い当ててしまった。
「……何故話しかけてきた? 儂は敵だぞ?」
「理由は簡単です。さっきのあの距離で敵だからと焦って逃げようとすればあなたに簡単に斬り殺される。実際、そうするつもりだったでしょう?」
「……」
「だったら、話してみて説得する……出来なくても、何も知らずに死にたくはありませんから」
この騎士は只者ではない。
そして、彼が俺の正体に気付いたのと同じように、彼の正体にもおおよその推測はついた。
「それに、あなたも俺と話してみたかったんでしょう? ザルノール王国軍……総大将、ドルーガ殿?」
「……何故……いや、あ奴らか」
ザルノール王国軍総大将、ドルーガ。
彼はスキルを持たないが、その才覚や忠誠心、武術の腕で認められている。
そして、ジョバンニとロームに稽古をつけていたこともあり、師匠にあたる存在だと言う。
二人からザルノール王国軍の中で最も警戒すべき男だと聞いている。
「……と言うことは、やはり寝返ったか」
「やはり? あぁそうでしたね。第六騎士団は捕縛されたことになってましたか……それの救助に向かったロームさんも行方不明扱いでしたか……」
「そうだな。あの二人の考え方は儂に似ている。魔王軍に寝返るのも無理は無い」
ドルーガはフードを脱いだ。
それは、彼なりの誠意の表れだろう。
なので、こちらもフードを脱ぐ。
明確に言葉にしなくても洞察し、分かり合える。
それだけで相手がいかに優れているか分かる。
これは互いに互いの実力を認め合ったと言うことだ。
「お前は話が出来そうだな。佐切勘助」
「ええ、そちらこそ。ドルーガ殿」
店主から飲み物が運ばれてくる。
俺たち二人は、敵同士ではあったが、乾杯をしたのだった。
作戦の準備が整い、決起に向けて英気を養っている最中も情報収集は欠かせない。
それに、最後の仕掛けのこともある。
ドワーフの国には必ず各方面に酒場がある。
ドワーフは酒飲みなのか、西部の商業区画にはかなり多くあった。
しかし現在訪れているのは南部、駐屯地区画の酒場である。
念の為にフードを深く被って店を訪れた。
「すまない。酒は飲めないんだが、何かあるか?」
「あぁ人間か……勿論あるぞ。今日は二人目か……珍しいな」
「二人目?」
店主は目線をカウンターの端のほうへとやる。
そこには、鎧を着てフードを深く被った騎士がいた。
かなりガタイが良い。
座っているからはっきりとは分からないが、立てば二メートル近くありそうだ。
……あれが、勇者と共に来たという騎士か。
俺は少し考えた後、その騎士に近づく。
「隣、失礼しても?」
「……あぁ」
俺は許可を得てから隣に座る。
「……ここで人間か……噂にある、我々以外にここを訪れたという人間……推測するに魔王軍の関係者か?」
「……御名答ですね」
「……その風貌、この世界の人間では無い……な。異世界の……勇者か。魔王軍の勇者……つまりお前が佐切勘助か」
物凄い洞察力だ。
ほぼ何も話していないというのに見た目と持っている情報だけでそこまで言い当ててしまった。
「……何故話しかけてきた? 儂は敵だぞ?」
「理由は簡単です。さっきのあの距離で敵だからと焦って逃げようとすればあなたに簡単に斬り殺される。実際、そうするつもりだったでしょう?」
「……」
「だったら、話してみて説得する……出来なくても、何も知らずに死にたくはありませんから」
この騎士は只者ではない。
そして、彼が俺の正体に気付いたのと同じように、彼の正体にもおおよその推測はついた。
「それに、あなたも俺と話してみたかったんでしょう? ザルノール王国軍……総大将、ドルーガ殿?」
「……何故……いや、あ奴らか」
ザルノール王国軍総大将、ドルーガ。
彼はスキルを持たないが、その才覚や忠誠心、武術の腕で認められている。
そして、ジョバンニとロームに稽古をつけていたこともあり、師匠にあたる存在だと言う。
二人からザルノール王国軍の中で最も警戒すべき男だと聞いている。
「……と言うことは、やはり寝返ったか」
「やはり? あぁそうでしたね。第六騎士団は捕縛されたことになってましたか……それの救助に向かったロームさんも行方不明扱いでしたか……」
「そうだな。あの二人の考え方は儂に似ている。魔王軍に寝返るのも無理は無い」
ドルーガはフードを脱いだ。
それは、彼なりの誠意の表れだろう。
なので、こちらもフードを脱ぐ。
明確に言葉にしなくても洞察し、分かり合える。
それだけで相手がいかに優れているか分かる。
これは互いに互いの実力を認め合ったと言うことだ。
「お前は話が出来そうだな。佐切勘助」
「ええ、そちらこそ。ドルーガ殿」
店主から飲み物が運ばれてくる。
俺たち二人は、敵同士ではあったが、乾杯をしたのだった。
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