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ドワーフの技術
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「さて……いよいよ準備は殆ど完璧だな」
あれから数週間。
決起に向けて様々な下準備を進めて来た。
資金調達。
情報収集。
軍備増強。
更には偽報を流して疑心暗鬼を起こさせ敵の連携を乱したりした。
今は決起に向けて自分達の装備を確認していた。
「準備は万全ね……本当だったら前線に立つつもりは無かったんだが、これだけの戦力差なら仕方無い。私も戦うさ」
「カルラ……何で戦うんだ?」
「私はエルフだ。てことは、だ」
カルラはその手に弓を取り出す。
それもただの弓では無い。
素材が木の枝では無く、所々に豪華な意匠が施されている。
「ドワーフの技術で作り上げられた弓だ。製法は知らないが、性能は確かだ。試し撃ちしてみたが……百発百中、当たった的は粉々。これほどよく出来た弓はエルフでも持っていないね」
「にしても……すごい意匠ですね……」
「……なんか私気に入られたみたいでね……無駄に頑張ったらしいよ」
日本の弓に関する言葉に五人張りという言葉がある。
それは、五人がかりでないと弦を張ることが出来ない弓という事で、鎮西八郎とも呼ばれた源為朝がそれを使い一矢で敵を二人倒したとも伝わる。
源為朝の逸話はそれだけではなく、矢一本で敵の軍船を沈め、数十キロも離れたところにまで矢を飛ばすことができたという逸話も残っている。
なにはともあれ、この弓は下手したら十五人張り(そんなものは無いだろうが)レベルよ相当な強弓である。
素人目にもわかるほどだ。
「へぇ……そんなに……私弓は全然だからよくわからないわね……」
「そういうロームさんも良い装備整えてもらったみたいですね。近衛騎士団の装備よりも似合ってますよ」
「そう? いつまでも近衛騎士団の装備のままというわけにも行かないでしょうし、ちょうどよかったわ。あれ、目立ってしょうがないのよね」
ロームの装備は一新されていた。
白く、シンプルなデザインで、機能性に優れているように見える。
近衛騎士団の装備は王家の権力を示すかのように無駄に豪華なのだ。
「これ、軽くて丈夫で最高よ。動きやすいし、私の戦い方に合わせた剣も作ってもらったし……ついでにジョバンニの鎧もね……これでお揃い……」
「……邪念が混ざってるような気もしますけど……まぁ良いか」
「そういう勘助も、刀作ってもらったんでしょ?」
気が付けばレナが近くにいた。
その問いに、腰に刺していた刀を抜いて答える。
これまではサナンから予備を一応もらってはいたがまともに使うことはなかった。
このドワーフに打ってもらった薄っすらと光る刀身を持つ刀は最高峰の出来であった。
「あぁ。かつて魔王派に刀を作ってくれていたドワーフがまだいてな。これまでは普通に上等な鉄を使っていたみたいだったが、ドワーフしか採掘方を知らないミスリルで作られたものらしい。実験品らしいから一振りだけだが、今も作り続けてくれてるとのことだ。出来上がったらフィアナとレナ……魔王派の皆にも分けてあげたいな」
「ん……私も戦える。最近前線に立てて無いから……頑張る」
レナの頭を撫でてやる。
すると、レナも刀を見せてくる。
「これも新しく打ってもらった。ミスリルじゃないけど……良い刀」
「そうだな……よかったな、レナ」
頭を撫でながらそう言う。
この装備が魔王軍全体に行き渡ればかなり戦いやすくなるな……。
「……」
「どうかした?」
レナの顔を見る。
彼女のような幼い子が戦場に立つ事などあってはならない。
それを言うならば俺も高校生だが、子供が前線に立つのは避けなければならない。
「いいや、なんでもないさ。勝とうな。この戦」
「うん!」
なんとしても勝たなければ。
あれから数週間。
決起に向けて様々な下準備を進めて来た。
資金調達。
情報収集。
軍備増強。
更には偽報を流して疑心暗鬼を起こさせ敵の連携を乱したりした。
今は決起に向けて自分達の装備を確認していた。
「準備は万全ね……本当だったら前線に立つつもりは無かったんだが、これだけの戦力差なら仕方無い。私も戦うさ」
「カルラ……何で戦うんだ?」
「私はエルフだ。てことは、だ」
カルラはその手に弓を取り出す。
それもただの弓では無い。
素材が木の枝では無く、所々に豪華な意匠が施されている。
「ドワーフの技術で作り上げられた弓だ。製法は知らないが、性能は確かだ。試し撃ちしてみたが……百発百中、当たった的は粉々。これほどよく出来た弓はエルフでも持っていないね」
「にしても……すごい意匠ですね……」
「……なんか私気に入られたみたいでね……無駄に頑張ったらしいよ」
日本の弓に関する言葉に五人張りという言葉がある。
それは、五人がかりでないと弦を張ることが出来ない弓という事で、鎮西八郎とも呼ばれた源為朝がそれを使い一矢で敵を二人倒したとも伝わる。
源為朝の逸話はそれだけではなく、矢一本で敵の軍船を沈め、数十キロも離れたところにまで矢を飛ばすことができたという逸話も残っている。
なにはともあれ、この弓は下手したら十五人張り(そんなものは無いだろうが)レベルよ相当な強弓である。
素人目にもわかるほどだ。
「へぇ……そんなに……私弓は全然だからよくわからないわね……」
「そういうロームさんも良い装備整えてもらったみたいですね。近衛騎士団の装備よりも似合ってますよ」
「そう? いつまでも近衛騎士団の装備のままというわけにも行かないでしょうし、ちょうどよかったわ。あれ、目立ってしょうがないのよね」
ロームの装備は一新されていた。
白く、シンプルなデザインで、機能性に優れているように見える。
近衛騎士団の装備は王家の権力を示すかのように無駄に豪華なのだ。
「これ、軽くて丈夫で最高よ。動きやすいし、私の戦い方に合わせた剣も作ってもらったし……ついでにジョバンニの鎧もね……これでお揃い……」
「……邪念が混ざってるような気もしますけど……まぁ良いか」
「そういう勘助も、刀作ってもらったんでしょ?」
気が付けばレナが近くにいた。
その問いに、腰に刺していた刀を抜いて答える。
これまではサナンから予備を一応もらってはいたがまともに使うことはなかった。
このドワーフに打ってもらった薄っすらと光る刀身を持つ刀は最高峰の出来であった。
「あぁ。かつて魔王派に刀を作ってくれていたドワーフがまだいてな。これまでは普通に上等な鉄を使っていたみたいだったが、ドワーフしか採掘方を知らないミスリルで作られたものらしい。実験品らしいから一振りだけだが、今も作り続けてくれてるとのことだ。出来上がったらフィアナとレナ……魔王派の皆にも分けてあげたいな」
「ん……私も戦える。最近前線に立てて無いから……頑張る」
レナの頭を撫でてやる。
すると、レナも刀を見せてくる。
「これも新しく打ってもらった。ミスリルじゃないけど……良い刀」
「そうだな……よかったな、レナ」
頭を撫でながらそう言う。
この装備が魔王軍全体に行き渡ればかなり戦いやすくなるな……。
「……」
「どうかした?」
レナの顔を見る。
彼女のような幼い子が戦場に立つ事などあってはならない。
それを言うならば俺も高校生だが、子供が前線に立つのは避けなければならない。
「いいや、なんでもないさ。勝とうな。この戦」
「うん!」
なんとしても勝たなければ。
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