歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

文字の大きさ
97 / 155

ドワーフの技術

しおりを挟む
「さて……いよいよ準備は殆ど完璧だな」
 
 あれから数週間。
 決起に向けて様々な下準備を進めて来た。
 資金調達。
 情報収集。
 軍備増強。
 更には偽報を流して疑心暗鬼を起こさせ敵の連携を乱したりした。
 今は決起に向けて自分達の装備を確認していた。
 
「準備は万全ね……本当だったら前線に立つつもりは無かったんだが、これだけの戦力差なら仕方無い。私も戦うさ」
「カルラ……何で戦うんだ?」
「私はエルフだ。てことは、だ」
 
 カルラはその手に弓を取り出す。
 それもただの弓では無い。
 素材が木の枝では無く、所々に豪華な意匠が施されている。
 
「ドワーフの技術で作り上げられた弓だ。製法は知らないが、性能は確かだ。試し撃ちしてみたが……百発百中、当たった的は粉々。これほどよく出来た弓はエルフでも持っていないね」
「にしても……すごい意匠ですね……」
「……なんか私気に入られたみたいでね……無駄に頑張ったらしいよ」
 
 日本の弓に関する言葉に五人張りという言葉がある。
 それは、五人がかりでないと弦を張ることが出来ない弓という事で、鎮西八郎とも呼ばれた源為朝がそれを使い一矢で敵を二人倒したとも伝わる。
 源為朝の逸話はそれだけではなく、矢一本で敵の軍船を沈め、数十キロも離れたところにまで矢を飛ばすことができたという逸話も残っている。
 なにはともあれ、この弓は下手したら十五人張り(そんなものは無いだろうが)レベルよ相当な強弓である。
 素人目にもわかるほどだ。
 
「へぇ……そんなに……私弓は全然だからよくわからないわね……」
「そういうロームさんも良い装備整えてもらったみたいですね。近衛騎士団の装備よりも似合ってますよ」
「そう? いつまでも近衛騎士団の装備のままというわけにも行かないでしょうし、ちょうどよかったわ。あれ、目立ってしょうがないのよね」
 
 ロームの装備は一新されていた。
 白く、シンプルなデザインで、機能性に優れているように見える。
 近衛騎士団の装備は王家の権力を示すかのように無駄に豪華なのだ。
 
「これ、軽くて丈夫で最高よ。動きやすいし、私の戦い方に合わせた剣も作ってもらったし……ついでにジョバンニの鎧もね……これでお揃い……」
「……邪念が混ざってるような気もしますけど……まぁ良いか」
「そういう勘助も、刀作ってもらったんでしょ?」
 
 気が付けばレナが近くにいた。
 その問いに、腰に刺していた刀を抜いて答える。
 これまではサナンから予備を一応もらってはいたがまともに使うことはなかった。
 このドワーフに打ってもらった薄っすらと光る刀身を持つ刀は最高峰の出来であった。
 
「あぁ。かつて魔王派に刀を作ってくれていたドワーフがまだいてな。これまでは普通に上等な鉄を使っていたみたいだったが、ドワーフしか採掘方を知らないミスリルで作られたものらしい。実験品らしいから一振りだけだが、今も作り続けてくれてるとのことだ。出来上がったらフィアナとレナ……魔王派の皆にも分けてあげたいな」
「ん……私も戦える。最近前線に立てて無いから……頑張る」
 
 レナの頭を撫でてやる。
 すると、レナも刀を見せてくる。
 
「これも新しく打ってもらった。ミスリルじゃないけど……良い刀」
「そうだな……よかったな、レナ」
 
 頭を撫でながらそう言う。
 この装備が魔王軍全体に行き渡ればかなり戦いやすくなるな……。

「……」
「どうかした?」
 
 レナの顔を見る。
 彼女のような幼い子が戦場に立つ事などあってはならない。
 それを言うならば俺も高校生だが、子供が前線に立つのは避けなければならない。
 
「いいや、なんでもないさ。勝とうな。この戦」
「うん!」
 
 なんとしても勝たなければ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

のほほん素材日和 ~草原と森のんびり生活~

みなと劉
ファンタジー
あらすじ 異世界の片隅にある小さな村「エルム村」。この村には魔物もほとんど現れず、平和な時間が流れている。主人公のフィオは、都会から引っ越してきた若い女性で、村ののどかな雰囲気に魅了され、素材採取を日々の楽しみとして暮らしている。 草原で野草を摘んだり、森で珍しいキノコを見つけたり、時には村人たちと素材を交換したりと、のんびりとした日常を過ごすフィオ。彼女の目標は、「世界一癒されるハーブティー」を作ること。そのため、村の知恵袋であるおばあさんや、遊び相手の動物たちに教わりながら、試行錯誤を重ねていく。 しかし、ただの素材採取だけではない。森の奥で珍しい植物を見つけたと思ったら、それが村の伝承に関わる貴重な薬草だったり、植物に隠れた精霊が現れたりと、小さな冒険がフィオを待ち受けている。そして、そんな日々を通じて、フィオは少しずつ村の人々と心を通わせていく――。 --- 主な登場人物 フィオ 主人公。都会から移住してきた若い女性。明るく前向きで、自然が大好き。素材を集めては料理やお茶を作るのが得意。 ミナ 村の知恵袋のおばあさん。薬草の知識に詳しく、フィオに様々な素材の使い方を教える。口は少し厳しいが、本当は優しい。 リュウ 村に住む心優しい青年。木工職人で、フィオの素材探しを手伝うこともある。 ポポ フィオについてくる小動物の仲間。小さなリスのような姿で、実は森の精霊。好物は甘い果実。 ※異世界ではあるが インターネット、汽車などは存在する世界

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...