歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

再興作戦計画

「さて……情報を纏めよう」
　
　俺はドリンから手渡された資料をまとめなおし、ガルン派の主要人員と共に作戦計画を練った。
　
「まず、ご存知の方も多いでしょうが、戦力差を見ましょう。我々ドヴェルグ王家再興軍……今後は再興軍と称しますが、現在東側旧市街区画で戦っている者や各地に潜伏している者達を含めて、約千です」
「それに対して敵はドヴェルグ軍総勢五万、ね……最悪な戦況だね。あんたの初陣の搦手砦の戦いよりも酷いんじゃないかい？」
　
　カルラの言葉の通り、数だけで見れば勝ちの目は無い。
　というか、搦手砦の戦いの詳細も掌握しているとは、流石は情報屋だ。
　
「ですが、軍部全体が敵というわけではありません」
　
　すると、ドリンが説明を始める。
　
「軍全体の指揮権を持つゴルンが自分の手勢でクーデターを起こしたので、他の軍団や部隊はゴルンの指示に従っておらず、敵はゴルンの行動に共感した者達だけでしょう。実質的な敵の数は多く見積もっても一万。最低でも七から八千といったところでしょうか」
「……つまり、四万はどちらつかずというわけか……味方に付けることができればかなり有利になるな……」
「ドワーフ軍の編成は第一軍から第四軍まであります。その他に現在抵抗を続けてくれている近衛兵団、クーデターの本隊となるゴルンの総本軍がありますね。今の所は様子を見ているのか、各軍団長はゴルンの動きに賛同はしておりません。傘下の兵が勝手にゴルンの元へと行っているのです。若が生きていると分かれば各軍団長も王家への忠義を示す者もいるでしょう」
　
　というか、ドワーフだけで五万の兵がいるのか……。
　常備戦力でその数。
　侮れないな……絶対に敵に回らないようにしなくては。
　
「さて……今現在各軍団長が様子を見ているということは忠誠心が高いとは思えない……大々的に王家がまだ生き残っていると言っても馳せ参じるとは思えない。つまり、各作戦を成功させてこちらに乗る利点を示さなくちゃな……」
「利点……我々が計画していた、各地で起こす反乱計画全てを成功させなくてはなりませんね……」
　
　ドリンを始め、残党軍は前々から計画を練っていたらしい。
　それらはドリンから渡された資料の中にあり、それらは全てかなり良い策ばかりであった。
　そして、それを練ったのがガルン自身であるというのだから驚きである。
　
「メインの作戦は旧市街で活動している近衛兵団の背後で少数で騒ぎを起こして撹乱、敵の陣容が乱れた所を親衛隊が攻撃、徐々に残党軍の支配領域を広げて行く……中々良い策ですね。更にその前にこちらの商業区画で活動を活発化させて目を引いておく……どうやらガルン王は相当な軍略家のようですね」
「そうですね……武力にも秀でております。あの王宮から我々や多数の護衛が逃げられたのも若のおかげですね」
　
　……これは中々面白くなってきた。
　優れた王の元に優れた軍略家……まぁ、俺の事で気恥ずかしいが二人の軍略家が揃ったんだ。
　勝ちの目は十分にある、な。