歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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対峙

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「よし! 王宮へなだれ込め! 今なら敵は殆ど居ないはずだ!」
「ガルン王も既にたどり着いていたか……第三軍団! 殿下に遅れるな!」
 
 こちらの作戦は単純だ。
 敵軍が陽動で各地に赴いていて王宮が手薄な間に王宮を占拠。
 そして王家の蛍石を台座に設置し王の帰還を世に知らしめる。
 そうすればゴルンへ靡いていた敵もこちらに寝返る。
 そういう手筈だ。
 そうこうしていると王宮の入り口へたどり着く。
 
「やはり思った通り……敵は居ない! 進め!」
「……」
 
 しかし、順調に事が進み過ぎている。
 その順調さ故に不安が募る。
 敵にはあのドルーガ、それに勇者二人が待ち構えている筈。
 まさか三人だけが玉座の間に待ち構えているとは思えない。
 あのドルーガがそんなスキル任せの策を取るとは思えない……。
 しかし……。
 
「進め進め! この戦は勝ち戦だ!」
「王家のために!」
 
 皆の士気は高い。
 玉座の奪還を目の前にいきなり用心して足を止めよ、では士気が落ちかねない。
 そんな不安な気持ちを悟られたのか、ガルンが足を止めて声をかけてくる。
 
「佐切。どうかしたか?」
「……いえ」
 
 一応、忠告はしておこう。
 
「上手く事が進みすぎています。相手には非常に優れた指揮官がいる。気をつけるべきです」
「佐切殿。何を気をつけることがありますか! このまま行けば我々の勝利は確実! 進み続けるべきです!」
「ドリン……うむ。どちらの言い分も正しいな。気をつけつつ進むとしよう」
 
 二人は進み続けた。
 そんな二人を見ていると、後ろからロームに声をかけられる。
 
「何か不安があるの?」
「いえ……あ、そう言えば……」
 
 相手にドルーガがいる事を彼女に伝えていなかった。
 やはり彼女には伝えておいたほうが良いだろう。
 
「実は……」
 
 
 
「お師匠様が!? 何でそれを早く言わなかったのよ!」
「い、いやぁ……すっかり忘れてて……」
「……まずい。これは非常にまずいわ」
 
 ロームは明らかに慌て始める。
 そして、後続の合流したカルラとレナもロームの慌てようを見る。
 
「すぐに撤退するように言わないと! ガルン王は!?」
「一体何を慌ててるんだい? 先頭集団は既に王宮に突入したころだろうさ。王宮は広いし、王宮全体の確保に勤しんでいるだろうね」
「ローム。落ち着く」
「落ち着いてられないわ! あの人が相手の時はうまく行っている時ほど負けるのよ! ほら佐切、行くわよ!」
「え?」
 
 首根っこを掴まれ、気がつけばものすごい速度で移動していた。
 ロームの『神速』のようだ。
 
「よし! 間に合った!?」
 
 止まればそこは王宮の中、玉座の間であった。
 ガルンが玉座に座る恐らくあれがゴルンだろうが、ゴルン対して剣を向けていた。
 ゴルンの側にはドルーガ、そして日本人……男と女の二人の勇者が立っていた。
 こちらはドリンと僅かな手勢のみ。
 ……まずい気がしてきた。
 
「ゴルン! 貴様の命もここまでだ!」
「ガルン……ここまで来たのか……」
 
 二人は因縁の対峙を果たす。
 そして、こちらもこちらで顔見知りがいる。
 
「よぉ佐切。お前よくもそんな臭いドワーフ共と一緒にいられるな?」
「ほんと、オタクにお似合いじゃない?」
「やっぱりお前達か……細川姉弟」
 
 二人は顔が瓜二つ。
 髪の長さこそ男女で違えど背丈や所作も似ている。
 つまり双子なのだ。
 双子の姉、細川薫。
 双子の弟、細川剛。
 二人組の勇者と聞いて、予想が当たった。
 
「魔王軍に寝返ったって聞いてたけど本当だったのね……」
「何で人外とつるんでるんだ? やっぱアホなのか?」
「……見過ごせない言葉を聞いたな。今の言葉、訂正してもらうぞ」
 
 その一方、ロームも自らの師と対峙していた。
 
「ローム。何故そちらにいる?」
「お、お師匠様こそ……何でこちらに?」
 
 ロームは申し訳無さからか少しぎこちない。
 
「あなたがいると知っていればもっと対策してきたんですけどね……」
「ほう? 対策程度で儂に勝てると? 随分と思い上がったものだな」
「いやぁ……稽古つけてもらった時はスキルまだ持ってませんでしたし……」
 
 ロームは覚悟を決めて剣を構えた。
 
「今は装備も充実してる。案外、勝てるかもしれませんよ?」
「そうか。だが、残念ながらチェックだ」
 
 ドルーガは手を挙げた。
 それを合図に大量の敵が現れる。
 ゴルンの総本軍だろう。
 
「若! 皆様! 雑兵は我々が対処します! 援軍が来るまで耐えきりましょう!」
「ふ……既に各所に忍ばせていた者達も、お主の仲間達に攻撃を仕掛けている頃だろう。さて……佐切殿。お主の策はここまてかな?」
「……」
 
 まだまだ、想定の範囲内。
 ここから巻き返す策は……無くは無い。
 何せこんな窮地は初めてだしな。
 ……頑張るとするか。
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