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窮地
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「くっ……」
「ほらほらどうした佐切! 逃げないと死ぬぞ!」
「ま、私の『拘束』を抜けられるはずは無いんだけどね」
体が動かない。
その理由は分かっている。
細川薫のスキル『拘束』だ。
それ単体では敵を文字通りその場に拘束するだけだが、もう一人のスキルと合わさると厳しい。
細川剛のスキルは『必殺』。
単純な名前だがその名の通りに当たれば必ず殺すというものだ。
等と考えていると足元に矢が突き刺さる。
「ちっ……また外した……」
「ちょっと、ちゃんと当ててよね」
「仕方無いだろ? 慣れてないんだから」
薫は武器を持っていない。
剛の方は弓でこちらを狙っている。
玉座の隣という安全圏から一方的にこちらを狙ってきているが、弓の扱いに慣れていないのか、当てられていない。
なにはともあれ、俺は出来ることがない。
矢が外れるのを祈るしか無いのだ。
だがまぁ、俺自身は出来ることは無いがやれることはある。
「でもこいつら相手には……神頼み、か。最悪だな」
戦況は最悪だ。
あの後すぐに敵兵が周囲から現れ後続と分断された。
ドリンが部隊を指揮して敵兵を押し留めているが、ガルンは孤立してゴルンと一騎打ちを繰り広げている。
「くっ!」
「どうしたガルン! そんなものか!」
武力ではゴルンの方が一枚上手らしい。
ガルンが若干押されている。
「くそ……」
「若! ここでゴルンを仕留めれば我々の勝利です! なんとしてもここで……」
「分かっている! お前はお前の仕事をしろ!」
「は、はい!」
しかしガルンは押されている。
ドリンの言葉に集中を乱されている様子もある。
……やはり、そういう事なのだろうか。
見張っていなければならないが、自分自身は動けない。
向こうは……。
「はぁっ!」
「甘いわ!」
ロームが『神速』でドルーガの背後から斬りかかる。
がしかし、ドルーガはそちらに振り返らずまるで見えているかのように難なくいなす。
「な……」
「スキルに頼りすぎている! お主は名がしれていてスキルの詳細も知られている。そのことを肝に銘じよ! 対策なぞ腐る程用意してきたわ! 今のお主なぞ脅威でも何でもない!」
ドルーガが勢い良く剣を薙ぐ。
ロームは間一髪の所で『神速』でそれを躱した。
「く……」
「お主に剣を教えたのは儂なのだ。戦い方、考え方、手に取るように分かるわ」
「でも、私もお師匠の弟子です。あなたに教えてもらっていたんですから、舐めてると足をすくわれますよ」
「ふっ……ならばすくってみせよ!」
ロームのスキルならば負ける事は無いだろう。
勝つことも無いが、時間は稼いでくれる筈だ。
後は体力の問題か。
ならば……。
「何油断してんだよ!」
「っ!」
顔の横スレスレを矢が通り過ぎていく。
これは、後少しで死んでいたな。
「くそっ! 惜しい!」
「ちゃんと狙ってよ!」
「わかってるよ!」
「……ふ」
二人のやり取りを見て思わず笑みをこぼしてしまう。
それに気付いた二人は、やはり怒りを覚えたようだ。
「てめぇ……何笑ってやがる!」
「死を間際にしておかしくなったの? こんな窮地は初めて?」
「あぁ。おかしいな。本当におかしい」
体は動けなくとも、目は動く。
二人を真っ直ぐ見つめ、こう言った。
「もう勝ったつもりでいるなんて、本当に笑えるな」
「ほらほらどうした佐切! 逃げないと死ぬぞ!」
「ま、私の『拘束』を抜けられるはずは無いんだけどね」
体が動かない。
その理由は分かっている。
細川薫のスキル『拘束』だ。
それ単体では敵を文字通りその場に拘束するだけだが、もう一人のスキルと合わさると厳しい。
細川剛のスキルは『必殺』。
単純な名前だがその名の通りに当たれば必ず殺すというものだ。
等と考えていると足元に矢が突き刺さる。
「ちっ……また外した……」
「ちょっと、ちゃんと当ててよね」
「仕方無いだろ? 慣れてないんだから」
薫は武器を持っていない。
剛の方は弓でこちらを狙っている。
玉座の隣という安全圏から一方的にこちらを狙ってきているが、弓の扱いに慣れていないのか、当てられていない。
なにはともあれ、俺は出来ることがない。
矢が外れるのを祈るしか無いのだ。
だがまぁ、俺自身は出来ることは無いがやれることはある。
「でもこいつら相手には……神頼み、か。最悪だな」
戦況は最悪だ。
あの後すぐに敵兵が周囲から現れ後続と分断された。
ドリンが部隊を指揮して敵兵を押し留めているが、ガルンは孤立してゴルンと一騎打ちを繰り広げている。
「くっ!」
「どうしたガルン! そんなものか!」
武力ではゴルンの方が一枚上手らしい。
ガルンが若干押されている。
「くそ……」
「若! ここでゴルンを仕留めれば我々の勝利です! なんとしてもここで……」
「分かっている! お前はお前の仕事をしろ!」
「は、はい!」
しかしガルンは押されている。
ドリンの言葉に集中を乱されている様子もある。
……やはり、そういう事なのだろうか。
見張っていなければならないが、自分自身は動けない。
向こうは……。
「はぁっ!」
「甘いわ!」
ロームが『神速』でドルーガの背後から斬りかかる。
がしかし、ドルーガはそちらに振り返らずまるで見えているかのように難なくいなす。
「な……」
「スキルに頼りすぎている! お主は名がしれていてスキルの詳細も知られている。そのことを肝に銘じよ! 対策なぞ腐る程用意してきたわ! 今のお主なぞ脅威でも何でもない!」
ドルーガが勢い良く剣を薙ぐ。
ロームは間一髪の所で『神速』でそれを躱した。
「く……」
「お主に剣を教えたのは儂なのだ。戦い方、考え方、手に取るように分かるわ」
「でも、私もお師匠の弟子です。あなたに教えてもらっていたんですから、舐めてると足をすくわれますよ」
「ふっ……ならばすくってみせよ!」
ロームのスキルならば負ける事は無いだろう。
勝つことも無いが、時間は稼いでくれる筈だ。
後は体力の問題か。
ならば……。
「何油断してんだよ!」
「っ!」
顔の横スレスレを矢が通り過ぎていく。
これは、後少しで死んでいたな。
「くそっ! 惜しい!」
「ちゃんと狙ってよ!」
「わかってるよ!」
「……ふ」
二人のやり取りを見て思わず笑みをこぼしてしまう。
それに気付いた二人は、やはり怒りを覚えたようだ。
「てめぇ……何笑ってやがる!」
「死を間際にしておかしくなったの? こんな窮地は初めて?」
「あぁ。おかしいな。本当におかしい」
体は動けなくとも、目は動く。
二人を真っ直ぐ見つめ、こう言った。
「もう勝ったつもりでいるなんて、本当に笑えるな」
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