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形勢逆転
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「はぁ? 何言ってんだ? 本当に頭おかしくなったのか?」
「いいや正気さ。お前達が馬鹿すぎて笑えるってだけの話でね。気を悪くさせたなら謝るよ。すまない」
「てめぇ……」
「待って剛」
剛が怒りに任せて弓を引くが、薫がそれを止める。
「てことは、あんたにはこの状況から勝てる術があるって事?」
「あぁ。勿論」
真っ直ぐ薫の顔を見つめる。
奴らが俺を殺すつもりなのは間違い無いだろうが、俺の話に興味を持ったのは間違いない。
時間稼ぎにはなる。
「その策とやら、聞かせてもらえる?」
「嫌だと言ったら?」
「今度は確実に殺す。近付いてでもね」
「と言われても、話すわけはないだろ? それに残念だったな。お前は俺に近づけない」
「てめぇ……」
そう言うと剛が我慢の限界を迎える。
「姉貴! もうやっちまっていいよな! こんなのどうせ時間稼ぎだ!」
「おぉ、御名答だ。足りない脳みその割にその答えにたどり着くとはさすがだな」
「は?」
「……馬鹿なの? そんな事を言ったら殺されるというのに……」
「お前らこそ馬鹿なのか? 喋ったって事はもう時間稼ぎの必要が無いってことなんだよ」
すると、一連の流れを聞いていたドルーガが叫ぶ。
「何をしている! 困惑する暇があるなら殺せ! 奴の手のひらの上て転がされて……」
「あなたの相手はこっちですよ!」
「ローム……何度言わせる……貴様の手の内はしれていると!」
ドルーガの目の前にあったロームの姿が消える。
それと同時にドルーガは振り返り剣を構える。
ドルーガはロームが背後に現れると読んだのだ。
しかし。
「な……まさか!?」
後ろにロームの姿はなかった。
すぐさまドルーガは正面に向き直る。
「私の手の内が知れているというのなら、これまでやったことのない戦い方をするまでのことよ」
ドルーガの視界の下の端には背を低くして剣を突き上げる構えのロームの姿が辛うじて写っていた。
「く……」
「はぁっ!」
ロームは思い切り剣を突き上げる。
ドルーガは間一髪、体を仰け反らせる事でそれを躱す。
しかし体勢を崩し、その場に尻もちをついてしまう。
その隙を、ロームは見逃さない。
「勝負あり、です)」
「……成長したな」
すぐさまロームはドルーガの喉元に剣を突きつけ無力化する。
細川姉弟は俺の事など忘れてその戦い様を観ていた。
「……本当に馬鹿だな。ドルーガさんの言う通りに殺しておけば良かったものを」
「あっ! くそっ!」
「もう遅いよ!」
二人のいる玉座の隣、遠くの柱の陰から声がする。
そこに目をやると、そこには弓を引いた見覚えのあるエルフが立っていた。
勿論カルラである。
「あれは……エルフ!? 何でこんなところに……」
「佐切から聞いていた通り、本当に間抜けだね!」
カルラはそのまま弓を放つ。
薫の『拘束』も、標的を変更する余裕はなかった。
矢は勢い良く薫の右手を貫いた。
薫は悲鳴を上げ、右手を押さえる。
おかげで、体の自由は戻った。
「い、痛い……血、血が……止まらない! 剛……助けて……」
「姉貴! そんな事どうでも良いから早くヤツの動きを止めてくれ!」
姉の怪我も気づかえないとは……。
これも洗脳の影響か。
なにはともあれ、体は動く。
そして、そんな剛の姿により一層怒りを覚える者がいた。
「姉の事も気遣えないなんて……家族失格」
「な……」
剛の背後に音もなく迫りくるレナ。
何の迷いもなく、レナは剛の右腕を切り落とした。
「ぐぁぁぁ!」
「これでスキルは使えない。私達の勝ち」
「佐切、間に合ってよかったよ。周囲の敵兵も仲間が制圧した。総本軍と言えど、数は揃ってなかったみたいだね」
「カルラさんとレナのおかげです。それに新しい弓矢、良さそうですね。刀も良いみたいだな」
カルラが放った矢は矢じりが柔く、切れ込みが入っており、突き刺さると同時に肉体の内部で広がる構造になっている。
現代に同じような構造の弾丸があったのを思い出し、それを参考にした。
そのおかげで薫の右手の内側にある魔法陣を崩せたということだ。
それもこれもドワーフの力のおかげだ。
「レナ。ごめんな。危険な役目を負わせて」
「ううん。これぐらいなんてこと無い。これまでもっと難しい事もやってきたから」
忘れかけていたがレナもレナで魔王派の一員である。
それ相応に修羅場をくぐり抜けてきているのだ。
レナの活躍に報いるように頭を撫でる。
「にしても、あんたの『念話』での情報共有が無かったらまずかったかもね。ここまで上手くは進んでいないだろうさ」
「本当、こんなに便利なのに」
「確かにね……私もあんたのアドバイスが無かったらヤバかったわ」
ロームがドルーガに剣を向けつつそう言う。
「そうか……お主のスキルは『念話』……それで拘束されつつも指示を出していたのか……」
「御名答です。まぁ、カルラが来るまでに剛の矢が当たる確率の方が高かったと思いますけどね」
正直、一か八かだった。
賭けが成功したのはやはり二人が馬鹿だったからであろう。
少し頭を使えば弓矢にこだわらず、近付いて刺し殺せば良かったのだ。
すると、ドルーガが残る二人の因縁の対決を観ていた。
「……後はガルンとゴルンだけだな。あ奴らには何も言ってないのか?」
「ええ。いずれ王になるお方です。アドバイスなど不要でしょう」
「……勝てると思う?」
「勝てるさ。あの人ならな」
「いいや正気さ。お前達が馬鹿すぎて笑えるってだけの話でね。気を悪くさせたなら謝るよ。すまない」
「てめぇ……」
「待って剛」
剛が怒りに任せて弓を引くが、薫がそれを止める。
「てことは、あんたにはこの状況から勝てる術があるって事?」
「あぁ。勿論」
真っ直ぐ薫の顔を見つめる。
奴らが俺を殺すつもりなのは間違い無いだろうが、俺の話に興味を持ったのは間違いない。
時間稼ぎにはなる。
「その策とやら、聞かせてもらえる?」
「嫌だと言ったら?」
「今度は確実に殺す。近付いてでもね」
「と言われても、話すわけはないだろ? それに残念だったな。お前は俺に近づけない」
「てめぇ……」
そう言うと剛が我慢の限界を迎える。
「姉貴! もうやっちまっていいよな! こんなのどうせ時間稼ぎだ!」
「おぉ、御名答だ。足りない脳みその割にその答えにたどり着くとはさすがだな」
「は?」
「……馬鹿なの? そんな事を言ったら殺されるというのに……」
「お前らこそ馬鹿なのか? 喋ったって事はもう時間稼ぎの必要が無いってことなんだよ」
すると、一連の流れを聞いていたドルーガが叫ぶ。
「何をしている! 困惑する暇があるなら殺せ! 奴の手のひらの上て転がされて……」
「あなたの相手はこっちですよ!」
「ローム……何度言わせる……貴様の手の内はしれていると!」
ドルーガの目の前にあったロームの姿が消える。
それと同時にドルーガは振り返り剣を構える。
ドルーガはロームが背後に現れると読んだのだ。
しかし。
「な……まさか!?」
後ろにロームの姿はなかった。
すぐさまドルーガは正面に向き直る。
「私の手の内が知れているというのなら、これまでやったことのない戦い方をするまでのことよ」
ドルーガの視界の下の端には背を低くして剣を突き上げる構えのロームの姿が辛うじて写っていた。
「く……」
「はぁっ!」
ロームは思い切り剣を突き上げる。
ドルーガは間一髪、体を仰け反らせる事でそれを躱す。
しかし体勢を崩し、その場に尻もちをついてしまう。
その隙を、ロームは見逃さない。
「勝負あり、です)」
「……成長したな」
すぐさまロームはドルーガの喉元に剣を突きつけ無力化する。
細川姉弟は俺の事など忘れてその戦い様を観ていた。
「……本当に馬鹿だな。ドルーガさんの言う通りに殺しておけば良かったものを」
「あっ! くそっ!」
「もう遅いよ!」
二人のいる玉座の隣、遠くの柱の陰から声がする。
そこに目をやると、そこには弓を引いた見覚えのあるエルフが立っていた。
勿論カルラである。
「あれは……エルフ!? 何でこんなところに……」
「佐切から聞いていた通り、本当に間抜けだね!」
カルラはそのまま弓を放つ。
薫の『拘束』も、標的を変更する余裕はなかった。
矢は勢い良く薫の右手を貫いた。
薫は悲鳴を上げ、右手を押さえる。
おかげで、体の自由は戻った。
「い、痛い……血、血が……止まらない! 剛……助けて……」
「姉貴! そんな事どうでも良いから早くヤツの動きを止めてくれ!」
姉の怪我も気づかえないとは……。
これも洗脳の影響か。
なにはともあれ、体は動く。
そして、そんな剛の姿により一層怒りを覚える者がいた。
「姉の事も気遣えないなんて……家族失格」
「な……」
剛の背後に音もなく迫りくるレナ。
何の迷いもなく、レナは剛の右腕を切り落とした。
「ぐぁぁぁ!」
「これでスキルは使えない。私達の勝ち」
「佐切、間に合ってよかったよ。周囲の敵兵も仲間が制圧した。総本軍と言えど、数は揃ってなかったみたいだね」
「カルラさんとレナのおかげです。それに新しい弓矢、良さそうですね。刀も良いみたいだな」
カルラが放った矢は矢じりが柔く、切れ込みが入っており、突き刺さると同時に肉体の内部で広がる構造になっている。
現代に同じような構造の弾丸があったのを思い出し、それを参考にした。
そのおかげで薫の右手の内側にある魔法陣を崩せたということだ。
それもこれもドワーフの力のおかげだ。
「レナ。ごめんな。危険な役目を負わせて」
「ううん。これぐらいなんてこと無い。これまでもっと難しい事もやってきたから」
忘れかけていたがレナもレナで魔王派の一員である。
それ相応に修羅場をくぐり抜けてきているのだ。
レナの活躍に報いるように頭を撫でる。
「にしても、あんたの『念話』での情報共有が無かったらまずかったかもね。ここまで上手くは進んでいないだろうさ」
「本当、こんなに便利なのに」
「確かにね……私もあんたのアドバイスが無かったらヤバかったわ」
ロームがドルーガに剣を向けつつそう言う。
「そうか……お主のスキルは『念話』……それで拘束されつつも指示を出していたのか……」
「御名答です。まぁ、カルラが来るまでに剛の矢が当たる確率の方が高かったと思いますけどね」
正直、一か八かだった。
賭けが成功したのはやはり二人が馬鹿だったからであろう。
少し頭を使えば弓矢にこだわらず、近付いて刺し殺せば良かったのだ。
すると、ドルーガが残る二人の因縁の対決を観ていた。
「……後はガルンとゴルンだけだな。あ奴らには何も言ってないのか?」
「ええ。いずれ王になるお方です。アドバイスなど不要でしょう」
「……勝てると思う?」
「勝てるさ。あの人ならな」
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