歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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因縁に決着を

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「はぁ……はぁ……」
 
 既にどれほど打ち合っただろうか。
 かなりの時間が経ったかのように感じるが実際はそれほどでも無いのだろう。
 ゴルンの一撃一撃は非常に重く、受け止めるのは難しい。
 うまく受け流すしか無い。
 気が付けば肩で息をするようになってきた。
 対するゴルンは平然としている。
 
「ガルン。そんなものか? やはりこんな軟弱者に王家はまかせられん。さっさと王家の蛍石を渡せ」
「……民の事を考えず、自分の私利私欲のためにこんな事をしでかしたお前に譲る気はない」
 
 幸いにもまだ傷はない。
 しかし、このままでは負けるのは確実。
 潔く王家の蛍石を渡せばこの戦いは終わるだろう。
 しかしそれではここまで頑張ってくれた皆に申し訳が立たない。
 王家の蛍石だけは……。
 ……いや、王家の蛍石、か。
 
「おいゴルン。そんなにこれが欲しいのか?」
 
 首からぶら下げていたネックレスを見せてそういう。
 ロケットのように開けられる構造になっていて、この中に王家の蛍石が入っている。
 一度開ければ眩い光が辺りを覆い尽くすだろう。
 
「あぁ。それをよこせばお前の命だけは助けてやるぞ? ほら、それをこちらに渡せ」
「そうか……」
 
 王家の蛍石の入ったペンダントを握りしめ、覚悟を決める。
 民達よ……許せ。
 
「ん? どうした……それを早くよこせ!」
「なら……望み通りにしてやるよ!」
 
 俺はそれを空高く放り投げる。
 
「な……いや、ハッタリか! 王家の蛍石をそんな粗末に扱う筈が無い! そんな事で俺の注意を引こうなど……」

 ゴルンはこちらへ視線を戻す。
 しかし、俺はゴルンを斬ろうと距離を詰めなどしていない。

「いいや、本当さ」
 
 そして、真上に放り投げた王家の蛍石の入ったペンダントを思い切り斬る。
 ドワーフの技術力で作られた剣は簡単にペンダントごと王家の蛍石を真っ二つにした。
 
「な……」
 
 王家蛍石の入ったペンダントは綺麗に二つに割れ、眩い光が辺りを覆い尽くす。
 皆、あまりの眩しさに目を隠す。
 と、言うのは予想だ。
 何故ならば、俺はあらかじめ目をつぶっており、辺りの状況は何も見えていない。
 
「く……な、何も見えん……」
「そうだろうな。この距離でいきなりあの閃光を浴びれば何も見えなくなるだろうさ。しかし俺はお前の惨めな顔がよく見えるよ。」
 
 俺は目を開ける。
 そこは、既に先程までの明るさとなっていた。
 
「貴様……見えているのか!? 光は!?」
「あぁ。あらかじめ目を瞑っていた」
「し、しかしそれだけでは……」
「それに王家の言い伝えでな、王家の蛍石は他の蛍石と違って割れればその輝きを失う。ほんとかどうか分からない、一か八かの賭けだったが、上手く行ったようだ」
「く……」
「これで終わりだ」
 
 ゴルンは我武者羅に、剣を振る。
 しかし、そんな物が当たるはずが無い。
 
「さらばだ反逆者ゴルン! この戦、俺の勝ちだ!」
「かはっ……」
 
 ゴルンを斬る。
 勝利の証、王家の帰還を示す王家の蛍石は失われたが、勝つことが出来た。
 民のために、王家の蛍石の代わりになる物を探さなくては……いや、地下での暮らしに見切りをつける頃合いか。
 なにはともあれ、決着はついた。
 我々の勝利だ。
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