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裏切り者
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「ガルン王……お疲れ様でした」
「あぁ。咄嗟の判断で王家の蛍石は失ったが、勝ちを収めることは出来た。ここまでこれたこと、全てお主のおかげだ」
「若! おめでとうございます! これでドヴェルグ王家が……」
ドリンが近付いて来る。
通常であればこのまま勝利を祝う所だ。
しかし、俺は二人の間に割って入る。
刀の切っ先をドリンに向けて。
「佐切殿……? 如何なさいましたか? これは一体……」
「……佐切、お主も気付いたか?」
「おや? 王もですか? でしたら、割って入る必要もありませんでしたね」
俺は刀をしまい、身を引く。
全て分かっているのならば、俺の出る幕ではない。
「ドリン。お前には感謝している」
「……」
「しかし、お前の行いは許せん。裏切り者、ドリンよ」
ガルンはドリンに対して剣を向ける。
「……裏切り者? どういうことですか?」
「これまでの作戦、その殆ど全てにおいて、作戦が漏れているかのように敵の動きが非常に良かった。そして、先のゴルンとの戦いでもお前は俺に退くことでは無く倒す事を望んだ。その前からも、佐切が警戒すべきと言った時、戦の戦況が良いからとこのまま進むように誘導していたな。俺とゴルンの武力の差を周知の上で戦えと言ったしな」
「……全て偶然では?」
「そうかも知れないな。いや、そうであって欲しい……欲しかった」
ガルンはドルーガへと目を向ける。
「戦闘の最中、お前とドルーガが互いに短い時間だが見つめ合い、規則的な瞬きを数回繰り返していた。何か暗号のやりとりをしていたのではないか?」
「それは俺も確認しました。二人が何かしらのやりとりをしていたのは事実でしょう。というか、あんな激しい打ち合いしてたのによく見えましたね」
「立場上、一つのことに囚われるのは危険だからな。常に辺りには気を配っている。さて、どうだ? ドリン。お前の口から聞かせてくれ」
「……」
ドリンは少し考えると、口を開いた。
その言葉は、ガルンが望んでいた答えではなかった。
ガルンは最後の最後まで希望を抱いていたのだ。
「仕方が無い、か……そうだな。確かに俺は内通していた。ドルーガ……いや、ゴルン王にな」
「ゴルン王……か。ドリン、それが本当のお前か」
口調が変わった。
それに、ゴルン王と言った。
ついに本性を表したか。
「何故……裏切った?」
「裏切った? 違うな。オレは最初から……生まれたときからゴルン派だっただけだ。そういう家系だったからな。ゴルンの指示でお前の下に潜り込み、機会を伺っていた」
「……そうか、クーデター時お前の姿が無く、王宮を離脱してから合流したのはそういう事なのか」
ガルンは暫く考えてから、剣を握り掲げて、決断を下す。
「裏切り者は始末する。一切の例外も許さん」
「あぁ。早くやれよ。オレは裏切り者だぞ?」
ドリンは首をトントンと差し出す。
ガルンは中々剣を振り下ろさない。
やはり、躊躇しているのだろう。
「おいおい、俺の忠誠は既にゴルン王へ捧げている。お前に対する場なんて湧いてすらいない。何を戸惑って……」
「く……」
「やはり斬れないか。お前は王の器じゃ……」
「……もう良い、黙れよお前」
ドワーフ特製のミスリル刀を抜き、迷うことなくドリンを斬る。
ミスリル刀はドリンの鎧を紙のように切り裂く。
ドリンは鮮血を噴き出しながら倒れる。
その最後の瞳は、ガルンへと向いていた。
「……ゴ、ゴルン……王……」
ドリンはその場に崩れ落ちる。
ほぼ即死だった。
「ドリン……」
「すみませんガルン王。ですがこれ以上こいつの時間稼ぎに費やす必要はありません。してやられました……それも見越した上での、スパイにこの人選か……ドルーガ殿。あなたはやはりこの世界最高の策士だ。一体何処からあなたの差し金ですか?」
「ふ……答えられぬな。それにしても気付くのが早いな。さしずめ、王宮制圧中の第三軍団長辺りから『念話』で聞いたか?」
俺はドルーガの言葉に対して頷く。
そして、号令をかける。
「全軍撤退! この戦は負けだ! 一人でも多く、この王国を脱出せよ!」
「あぁ。咄嗟の判断で王家の蛍石は失ったが、勝ちを収めることは出来た。ここまでこれたこと、全てお主のおかげだ」
「若! おめでとうございます! これでドヴェルグ王家が……」
ドリンが近付いて来る。
通常であればこのまま勝利を祝う所だ。
しかし、俺は二人の間に割って入る。
刀の切っ先をドリンに向けて。
「佐切殿……? 如何なさいましたか? これは一体……」
「……佐切、お主も気付いたか?」
「おや? 王もですか? でしたら、割って入る必要もありませんでしたね」
俺は刀をしまい、身を引く。
全て分かっているのならば、俺の出る幕ではない。
「ドリン。お前には感謝している」
「……」
「しかし、お前の行いは許せん。裏切り者、ドリンよ」
ガルンはドリンに対して剣を向ける。
「……裏切り者? どういうことですか?」
「これまでの作戦、その殆ど全てにおいて、作戦が漏れているかのように敵の動きが非常に良かった。そして、先のゴルンとの戦いでもお前は俺に退くことでは無く倒す事を望んだ。その前からも、佐切が警戒すべきと言った時、戦の戦況が良いからとこのまま進むように誘導していたな。俺とゴルンの武力の差を周知の上で戦えと言ったしな」
「……全て偶然では?」
「そうかも知れないな。いや、そうであって欲しい……欲しかった」
ガルンはドルーガへと目を向ける。
「戦闘の最中、お前とドルーガが互いに短い時間だが見つめ合い、規則的な瞬きを数回繰り返していた。何か暗号のやりとりをしていたのではないか?」
「それは俺も確認しました。二人が何かしらのやりとりをしていたのは事実でしょう。というか、あんな激しい打ち合いしてたのによく見えましたね」
「立場上、一つのことに囚われるのは危険だからな。常に辺りには気を配っている。さて、どうだ? ドリン。お前の口から聞かせてくれ」
「……」
ドリンは少し考えると、口を開いた。
その言葉は、ガルンが望んでいた答えではなかった。
ガルンは最後の最後まで希望を抱いていたのだ。
「仕方が無い、か……そうだな。確かに俺は内通していた。ドルーガ……いや、ゴルン王にな」
「ゴルン王……か。ドリン、それが本当のお前か」
口調が変わった。
それに、ゴルン王と言った。
ついに本性を表したか。
「何故……裏切った?」
「裏切った? 違うな。オレは最初から……生まれたときからゴルン派だっただけだ。そういう家系だったからな。ゴルンの指示でお前の下に潜り込み、機会を伺っていた」
「……そうか、クーデター時お前の姿が無く、王宮を離脱してから合流したのはそういう事なのか」
ガルンは暫く考えてから、剣を握り掲げて、決断を下す。
「裏切り者は始末する。一切の例外も許さん」
「あぁ。早くやれよ。オレは裏切り者だぞ?」
ドリンは首をトントンと差し出す。
ガルンは中々剣を振り下ろさない。
やはり、躊躇しているのだろう。
「おいおい、俺の忠誠は既にゴルン王へ捧げている。お前に対する場なんて湧いてすらいない。何を戸惑って……」
「く……」
「やはり斬れないか。お前は王の器じゃ……」
「……もう良い、黙れよお前」
ドワーフ特製のミスリル刀を抜き、迷うことなくドリンを斬る。
ミスリル刀はドリンの鎧を紙のように切り裂く。
ドリンは鮮血を噴き出しながら倒れる。
その最後の瞳は、ガルンへと向いていた。
「……ゴ、ゴルン……王……」
ドリンはその場に崩れ落ちる。
ほぼ即死だった。
「ドリン……」
「すみませんガルン王。ですがこれ以上こいつの時間稼ぎに費やす必要はありません。してやられました……それも見越した上での、スパイにこの人選か……ドルーガ殿。あなたはやはりこの世界最高の策士だ。一体何処からあなたの差し金ですか?」
「ふ……答えられぬな。それにしても気付くのが早いな。さしずめ、王宮制圧中の第三軍団長辺りから『念話』で聞いたか?」
俺はドルーガの言葉に対して頷く。
そして、号令をかける。
「全軍撤退! この戦は負けだ! 一人でも多く、この王国を脱出せよ!」
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