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逃げるが勝ち
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「敵の追っ手は!?」
「まだ来ておりません! 我々の撤退はまだ悟られていないようで、敵は王宮へ目指して進軍しております! 各所に設けたバリケードの撤去に手間取り、我々がいない事に気づいておらぬ様子!」
「うむ! 結構! 佐切殿があらかじめ設置していたバリケードかここで役に立つとはな! このまま静かに南部を駆け抜ける! 佐切殿達が来た坑道を抜けて地上に出るぞ!」
「本来なら王宮を奪還しに来るゴルン派の敵との防衛戦を想定したバリケードだったのですが……数が多すぎます。まぁ、時間稼ぎになったのなら良かったですね」
密かに、されど確実に、一兵たりとも見捨てずに撤退を始める。
王宮には防衛戦を想定して作っていたバリケードを、時間の許す限り敵の進軍を遅延させる罠等に作り変え、簡単には突破できないように細工しておいた。
事実、敵は王宮に夢中だ。
拘束してあるドルーガ達と接触するまで俺達の追跡に出る事は無いだろう。
しけし、兵達は不安にかられているだろう。
「勘助。本当にここから皆で出れるの? 坑道の出口、結構小さかったけど……」
「大丈夫だレナ。俺達が入って来た坑道は確かに狭かったけど、封鎖された坑道が数多くあっただろ? 気付いていないかも知れないが、俺達が通って来た途中にかなりの数の分かれ道があったんだ。ほら、あそこにも」
「でも、その封鎖を解除するのはどうするの? どうしてもそこで手間取ると思うけど。まさかとは思うけどジョバンニ達が援軍に来てくれてて……なんてことは無いんでしょ?」
走りながらロームが聞いてくる。
勿論、その辺りも考えてある。
「大丈夫。俺だって軍師です。不測の事態には備えてますよ。残念ながら援軍は厳しかったけど……人手については出来ることはしたと思います」
「でも人手なんて……一体どこから人を集めたのよ」
「……あぁ……成る程ね。佐切、あんたやっぱり大した奴だよ」
どうやらカルラは感づいたようだ。
すると、一連の話を聞いていたガルンが会話に入ってくる。
「どういう事だ? 説明してくれ、佐切殿」
「えぇ。ですが、その必要もないでしょう」
「何?」
「そろそろだと……」
「殿下! 追手が来ました!」
すると、後方から伝令の声が響く。
「王宮に殺到した敵軍、すぐさま状況を察したのかこちらに追手を差し向けてきました!」
「後続は!? どうなっている!?」
「坑道が狭く、最後方の部隊が入りきれておりません! 故に、立ち止まり殿軍を務めると申しております!」
「……すまん。そなたらの奮闘、忘れぬと伝えてくれ」
「……は! 必ず!」
伝令は走り去って行く。
ガルンは今回味方してくれた者達全てに感謝している。
本当ならば捨て駒になどしたくはない筈なのだ。
「しかし……なんとかなりそうですね。幸運か不幸か、殿軍が残ってくれました。これなら脱出できるでしょう」
「そうなのか? 僅かばかりの殿部隊では然程足止めにはならぬと思うが」
「いえ、僅かばかりでは無いので」
すると、目の前に人影が現れる。
それも複数だ。
「何っ!? 先回りされたか!」
ガルンは腰の剣に手をかける。
俺はそれを制止する。
「お待ち下さい」
「何を……」
「彼らは味方です」
すると、目の前の人影は膝をつく。
「第五軍団、軍団長、ゴズン以下、第五軍団総員一万! 遅ればせながらガルン王にお味方致します! 我等第五軍団、身命をとして貴方様のお命をお守り致します!」
「第五軍団だと!? 佐切殿……まさか……」
驚きを隠せないガルンに対して俺は頷く。
「密かに手を回しておいて良かった。この戦、勝ち戦では無いが味方は多い。今は勝てずとも、生き残れば多くの兵がこちらにつきます。あなたを逃がすことこそ、勝ちにつながるのです」
「まだ来ておりません! 我々の撤退はまだ悟られていないようで、敵は王宮へ目指して進軍しております! 各所に設けたバリケードの撤去に手間取り、我々がいない事に気づいておらぬ様子!」
「うむ! 結構! 佐切殿があらかじめ設置していたバリケードかここで役に立つとはな! このまま静かに南部を駆け抜ける! 佐切殿達が来た坑道を抜けて地上に出るぞ!」
「本来なら王宮を奪還しに来るゴルン派の敵との防衛戦を想定したバリケードだったのですが……数が多すぎます。まぁ、時間稼ぎになったのなら良かったですね」
密かに、されど確実に、一兵たりとも見捨てずに撤退を始める。
王宮には防衛戦を想定して作っていたバリケードを、時間の許す限り敵の進軍を遅延させる罠等に作り変え、簡単には突破できないように細工しておいた。
事実、敵は王宮に夢中だ。
拘束してあるドルーガ達と接触するまで俺達の追跡に出る事は無いだろう。
しけし、兵達は不安にかられているだろう。
「勘助。本当にここから皆で出れるの? 坑道の出口、結構小さかったけど……」
「大丈夫だレナ。俺達が入って来た坑道は確かに狭かったけど、封鎖された坑道が数多くあっただろ? 気付いていないかも知れないが、俺達が通って来た途中にかなりの数の分かれ道があったんだ。ほら、あそこにも」
「でも、その封鎖を解除するのはどうするの? どうしてもそこで手間取ると思うけど。まさかとは思うけどジョバンニ達が援軍に来てくれてて……なんてことは無いんでしょ?」
走りながらロームが聞いてくる。
勿論、その辺りも考えてある。
「大丈夫。俺だって軍師です。不測の事態には備えてますよ。残念ながら援軍は厳しかったけど……人手については出来ることはしたと思います」
「でも人手なんて……一体どこから人を集めたのよ」
「……あぁ……成る程ね。佐切、あんたやっぱり大した奴だよ」
どうやらカルラは感づいたようだ。
すると、一連の話を聞いていたガルンが会話に入ってくる。
「どういう事だ? 説明してくれ、佐切殿」
「えぇ。ですが、その必要もないでしょう」
「何?」
「そろそろだと……」
「殿下! 追手が来ました!」
すると、後方から伝令の声が響く。
「王宮に殺到した敵軍、すぐさま状況を察したのかこちらに追手を差し向けてきました!」
「後続は!? どうなっている!?」
「坑道が狭く、最後方の部隊が入りきれておりません! 故に、立ち止まり殿軍を務めると申しております!」
「……すまん。そなたらの奮闘、忘れぬと伝えてくれ」
「……は! 必ず!」
伝令は走り去って行く。
ガルンは今回味方してくれた者達全てに感謝している。
本当ならば捨て駒になどしたくはない筈なのだ。
「しかし……なんとかなりそうですね。幸運か不幸か、殿軍が残ってくれました。これなら脱出できるでしょう」
「そうなのか? 僅かばかりの殿部隊では然程足止めにはならぬと思うが」
「いえ、僅かばかりでは無いので」
すると、目の前に人影が現れる。
それも複数だ。
「何っ!? 先回りされたか!」
ガルンは腰の剣に手をかける。
俺はそれを制止する。
「お待ち下さい」
「何を……」
「彼らは味方です」
すると、目の前の人影は膝をつく。
「第五軍団、軍団長、ゴズン以下、第五軍団総員一万! 遅ればせながらガルン王にお味方致します! 我等第五軍団、身命をとして貴方様のお命をお守り致します!」
「第五軍団だと!? 佐切殿……まさか……」
驚きを隠せないガルンに対して俺は頷く。
「密かに手を回しておいて良かった。この戦、勝ち戦では無いが味方は多い。今は勝てずとも、生き残れば多くの兵がこちらにつきます。あなたを逃がすことこそ、勝ちにつながるのです」
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