歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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さらばドワーフの国

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「くそっ! 何なんだ! ひっきりなしに敵が来る……」
「封鎖された坑道に、少ないが敵が潜んでいる……敵は少ないが何せ坑道の数が多すぎる! 何度も何度も奇襲を仕掛けてくるせいでまともに進めん!」
 
 追手は非常に苦戦していた。
 出口へと続く坑道に入ってからというもの、全くと言って良い程進めていない。
 というのも、再興軍が封鎖された、分かれ道となっている殆ど全ての坑道に潜んでおり、何度も何度も奇襲を受けている。
 そのせいで警戒して殆ど進めずにいる。
 
「くそ……敵はこちらが怯んだと見ればすぐさま撤退する……だからといって追撃すれば別の分かれ道から攻められる……クソ! 誰だこんな蟻の巣みたいな出入り口にした奴は!」
「本来は敵を簡単に王国に入れさせないための構造の筈が……逆手に取られるとはな」
 
 追手の兵達は口々に文句を言う。
 各軍団長こそゴルンに賛同したものの、末端の兵達まで完全に賛同したかどうかは別の話なのである。
 それに。
 
「ゴルン殿も重傷だそうだしな……なぁ、俺達本当にこっちで良いのか?」
「そうだな……噂によればガルン様が生きていて再興軍を率いているそうだし……俺達も向こうに行くか……」
 
 追撃の軍は次第にその数を減らして行く。
 その事に、各軍団長は暗闇や奇襲による混乱もあって気付けずにいたのであった。
 
 
 
「ようやっと出口か……」
 
 長い事走り続け、ようやく明かりが見える。
 坑道に立てかけられて蛍石ではない、本当の太陽の光だ。
 それもこれも第五軍団の助力があってこそだった。
 
「ガルン王。出来る限りここで待って出てくる兵達にそのお顔を見せてあげて下さい」
「うむ。ここまでついてきてくれたにも関わらずこの惨状だ……労ってやらなくてはな」
「いえ。それもありますが違います。ガルン・ドヴェルグここにあり、そう兵達を安心させるのです。それに坑道は声がよく響く。後ろの追撃の軍にもガルン王の存在は喧伝されるでしょう。今敵の士気は低い。離反者も現れるでしょう」
「そうか! なるほどな!」
 
 そう言うとガルンは出入り口に残る。
 
「佐切殿達は逃げてきた兵達の再編成を急いでくれ。ここまで損耗させすぎた。他の坑道からも出てくるであろう味方も助けてやってくれ」
「は!」
 
 これでドワーフの国、ドヴェルグとはおさらばだ。
 次に戻ってくる時はガルン王が正式に玉座を奪還した時だろう。
 
「急ぎ兵をまとめるぞ! 疲れているところ申し訳ないが、すぐに魔王領へ撤退する!」

 後は魔王領へ撤退する。
 ドワーフ王国全体との協力体制は築くことは出来なかったが、援軍として目的を達成することが出来た。
 ひとまずの休息が欲しい。
 そう思った時、坑道から声が響いて来た。

「……ガルン・ドヴェルグ!」
 
 坑道から声が響く。
 憎しみではない。かといって友や家族へ送るような優しい声ではない。
 まるで、ライバルへ送る挑戦状のような声だ。
 この声はゴルンだ。
 意識を取り戻し、追いかけてきたようだ。
 間に合わないと察し、声を上げたのか。
 
「必ず貴様の首を取る! ドワーフの王に相応しいのはこの俺だ! 俺の方が優れていると証明してみせる!」
「ゴルン……」
 
 ガルンもどこか寂しそうな顔をする。
 そして、決意を固める。
 
「さらばだゴルン。そうだな……必ずや、決着をつけてみせる」
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