109 / 155
因縁の始まり
しおりを挟む
出会いは必然だった。
この家の関係上、彼との関係は運命と言っても良い。
「君がゴルンか。私はガルン。偶然にも同い年だ。よろしく頼む」
「……あぁ」
ドワーフ王国、王家ドヴェルグとは別に、初代王の弟の家系、建国の立役者とも言われる家系があった。
その家系がゴルンの家系。
所謂名家であり、同じ世代の者は互いに互いを高め合うため、共に軍学や武術を学ぶ習いであった。
そして、軍学においては自分が、武術においてはゴルンが勝っていた。
互いに負けてなるものかと競い高め合った。
互いにライバルと認めあっていたのだ。
「くそ……また負けた……」
「やはり盤上での戦いでは私の勝ちだな」
「ふん……そんな物が何になる。戦は大将が死ねば終わり。お前が軟弱だとは言わないが、そんなでは簡単に討たれてしまうぞ」
「む……確かにそうだが……」
ゴルンとガルンの差はあまり無かった。
家のしがらみが無ければ互いに無い部分を補い合える良い友となったであろう。
しかし、ゴルンの家系には役目がある。
それは、王の影武者、もしくは副王。
つまり、予備の王として存在しているのだ。
ゴルンの役目はガルンの身代わり。
それをゴルンはよく思っていなかった。
「やはり、お前は王に相応しくないな。全てにおいて俺を上回る程じゃければ民に見捨てられるぞ」
「……確かにその通りだな。精進するよ」
「……ふん」
ゴルンはガルンに対して辺りを強くし、仲違いして対立する構造を作りたかった。
だがガルンは人が良く、全てを許す。
自分の劣っているところは認め、直そうと努力する。
そのせいでゴルンの望む対立構造にはなり得なかった。
しかし、状況は一変する。
十数年が経過した頃、ゴルンの下に一人の男が現れる。
「あなたがゴルン様ですな?」
「……何者か? 人間の騎士がこの国に何故入っている……そうか、ザルノールの騎士か……何用だ? 次期国王ガルン王子と勘違いしていないか? 彼なら……」
「いいえ、あなたに用があります」
目の前の大男は不敵な笑みを浮かべる。
「あなたを、王にして差し上げましょう」
夜。
皆が寝静まった頃、王宮の自室で寝ていたガルンの元に側近が駆け込む。
「ガ、ガルン様! 大変です!」
「何事だ。慌ただしいぞ」
「謀反です! ゴルン様が兵を挙げました! ゴルン様お抱えの総本軍と賛同する者が王宮を襲い、父君と母君を……」
「殺したのか!? ゴルンが!?」
側近は頷く。
ガルンは認めたくなかった状況をすぐに飲み込み、涙を我慢した。
父と母を失った悲しみを乗り越え、指示を出す。
「近くの者を叩き起こせ! 皆を集めよ! 王宮を脱出する!」
「し、しかし……既に囲まれております!」
「ゴルンの指揮下の総本軍は少ない! 常に最低限の警戒はしていた私にまで情報が入ってこなかったと言うことは敵の規模は小さい筈だ! 王宮全体を攻略するには兵が足りない筈! 必ず穴はある! 戦える者を可能な限り集めよ! 生きてここを逃げるぞ!」
ガルンはすぐさま動き始めた。
ガルンの的確且つ迅速な指示で、多くの者が脱出した。
非戦闘員を始め、戦いを繰り広げていた近衛兵、側近等を次々と助けて行き数を増やし、無事王宮を脱出した。
騒ぎの収まらない王宮を外から眺め、ガルンは呟く。
「ゴルン……何故だ……」
「そうか。逃がしたか……」
「は……申し訳ありません……」
ゴルンは伝令の言葉を聞き、落胆する。
謀反は成功した。
結果で言えばガルンを逃したが、それは全体で見れば些細な出来事に過ぎない。
しかし、ゴルンからすれば、最大の失態であった。
(奴を仕留め、俺が上だと証明するつもりだった……しかし生き延びたか。まだだ……まだ足りない。政権を掌握した程度では奴を超えた証明にはならない! 必ず探し出し、お前を仕留めて俺が上だと証明してやる……)
しかしゴルンはガルンを仕留めきれず、ガルンは大軍を引き連れて王国を脱出した。
王家の証でもある王家の蛍石も失った。
ドヴェルグの民は大いに惑った。
ドヴェルグ王国の内乱は、まだ収まらない。
この家の関係上、彼との関係は運命と言っても良い。
「君がゴルンか。私はガルン。偶然にも同い年だ。よろしく頼む」
「……あぁ」
ドワーフ王国、王家ドヴェルグとは別に、初代王の弟の家系、建国の立役者とも言われる家系があった。
その家系がゴルンの家系。
所謂名家であり、同じ世代の者は互いに互いを高め合うため、共に軍学や武術を学ぶ習いであった。
そして、軍学においては自分が、武術においてはゴルンが勝っていた。
互いに負けてなるものかと競い高め合った。
互いにライバルと認めあっていたのだ。
「くそ……また負けた……」
「やはり盤上での戦いでは私の勝ちだな」
「ふん……そんな物が何になる。戦は大将が死ねば終わり。お前が軟弱だとは言わないが、そんなでは簡単に討たれてしまうぞ」
「む……確かにそうだが……」
ゴルンとガルンの差はあまり無かった。
家のしがらみが無ければ互いに無い部分を補い合える良い友となったであろう。
しかし、ゴルンの家系には役目がある。
それは、王の影武者、もしくは副王。
つまり、予備の王として存在しているのだ。
ゴルンの役目はガルンの身代わり。
それをゴルンはよく思っていなかった。
「やはり、お前は王に相応しくないな。全てにおいて俺を上回る程じゃければ民に見捨てられるぞ」
「……確かにその通りだな。精進するよ」
「……ふん」
ゴルンはガルンに対して辺りを強くし、仲違いして対立する構造を作りたかった。
だがガルンは人が良く、全てを許す。
自分の劣っているところは認め、直そうと努力する。
そのせいでゴルンの望む対立構造にはなり得なかった。
しかし、状況は一変する。
十数年が経過した頃、ゴルンの下に一人の男が現れる。
「あなたがゴルン様ですな?」
「……何者か? 人間の騎士がこの国に何故入っている……そうか、ザルノールの騎士か……何用だ? 次期国王ガルン王子と勘違いしていないか? 彼なら……」
「いいえ、あなたに用があります」
目の前の大男は不敵な笑みを浮かべる。
「あなたを、王にして差し上げましょう」
夜。
皆が寝静まった頃、王宮の自室で寝ていたガルンの元に側近が駆け込む。
「ガ、ガルン様! 大変です!」
「何事だ。慌ただしいぞ」
「謀反です! ゴルン様が兵を挙げました! ゴルン様お抱えの総本軍と賛同する者が王宮を襲い、父君と母君を……」
「殺したのか!? ゴルンが!?」
側近は頷く。
ガルンは認めたくなかった状況をすぐに飲み込み、涙を我慢した。
父と母を失った悲しみを乗り越え、指示を出す。
「近くの者を叩き起こせ! 皆を集めよ! 王宮を脱出する!」
「し、しかし……既に囲まれております!」
「ゴルンの指揮下の総本軍は少ない! 常に最低限の警戒はしていた私にまで情報が入ってこなかったと言うことは敵の規模は小さい筈だ! 王宮全体を攻略するには兵が足りない筈! 必ず穴はある! 戦える者を可能な限り集めよ! 生きてここを逃げるぞ!」
ガルンはすぐさま動き始めた。
ガルンの的確且つ迅速な指示で、多くの者が脱出した。
非戦闘員を始め、戦いを繰り広げていた近衛兵、側近等を次々と助けて行き数を増やし、無事王宮を脱出した。
騒ぎの収まらない王宮を外から眺め、ガルンは呟く。
「ゴルン……何故だ……」
「そうか。逃がしたか……」
「は……申し訳ありません……」
ゴルンは伝令の言葉を聞き、落胆する。
謀反は成功した。
結果で言えばガルンを逃したが、それは全体で見れば些細な出来事に過ぎない。
しかし、ゴルンからすれば、最大の失態であった。
(奴を仕留め、俺が上だと証明するつもりだった……しかし生き延びたか。まだだ……まだ足りない。政権を掌握した程度では奴を超えた証明にはならない! 必ず探し出し、お前を仕留めて俺が上だと証明してやる……)
しかしゴルンはガルンを仕留めきれず、ガルンは大軍を引き連れて王国を脱出した。
王家の証でもある王家の蛍石も失った。
ドヴェルグの民は大いに惑った。
ドヴェルグ王国の内乱は、まだ収まらない。
0
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる