歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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因縁の始まり

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 出会いは必然だった。
 この家の関係上、彼との関係は運命と言っても良い。
 
「君がゴルンか。私はガルン。偶然にも同い年だ。よろしく頼む」
「……あぁ」
 
 ドワーフ王国、王家ドヴェルグとは別に、初代王の弟の家系、建国の立役者とも言われる家系があった。
 その家系がゴルンの家系。
 所謂名家であり、同じ世代の者は互いに互いを高め合うため、共に軍学や武術を学ぶ習いであった。
 そして、軍学においては自分が、武術においてはゴルンが勝っていた。
 互いに負けてなるものかと競い高め合った。
 互いにライバルと認めあっていたのだ。
 
「くそ……また負けた……」
「やはり盤上での戦いでは私の勝ちだな」
「ふん……そんな物が何になる。戦は大将が死ねば終わり。お前が軟弱だとは言わないが、そんなでは簡単に討たれてしまうぞ」
「む……確かにそうだが……」
 
 ゴルンとガルンの差はあまり無かった。
 家のしがらみが無ければ互いに無い部分を補い合える良い友となったであろう。
 しかし、ゴルンの家系には役目がある。
 それは、王の影武者、もしくは副王。
 つまり、予備の王として存在しているのだ。
 ゴルンの役目はガルンの身代わり。
 それをゴルンはよく思っていなかった。
 
「やはり、お前は王に相応しくないな。全てにおいて俺を上回る程じゃければ民に見捨てられるぞ」
「……確かにその通りだな。精進するよ」
「……ふん」
 
 ゴルンはガルンに対して辺りを強くし、仲違いして対立する構造を作りたかった。
 だがガルンは人が良く、全てを許す。
 自分の劣っているところは認め、直そうと努力する。
 そのせいでゴルンの望む対立構造にはなり得なかった。
 しかし、状況は一変する。
 十数年が経過した頃、ゴルンの下に一人の男が現れる。
 
「あなたがゴルン様ですな?」
「……何者か? 人間の騎士がこの国に何故入っている……そうか、ザルノールの騎士か……何用だ? 次期国王ガルン王子と勘違いしていないか? 彼なら……」
「いいえ、あなたに用があります」
 
 目の前の大男は不敵な笑みを浮かべる。
 
「あなたを、王にして差し上げましょう」
 
 
 
 夜。
 皆が寝静まった頃、王宮の自室で寝ていたガルンの元に側近が駆け込む。

「ガ、ガルン様! 大変です!」
「何事だ。慌ただしいぞ」
「謀反です! ゴルン様が兵を挙げました! ゴルン様お抱えの総本軍と賛同する者が王宮を襲い、父君と母君を……」
「殺したのか!? ゴルンが!?」
 
 側近は頷く。
 ガルンは認めたくなかった状況をすぐに飲み込み、涙を我慢した。
 父と母を失った悲しみを乗り越え、指示を出す。
 
「近くの者を叩き起こせ! 皆を集めよ! 王宮を脱出する!」
「し、しかし……既に囲まれております!」
「ゴルンの指揮下の総本軍は少ない! 常に最低限の警戒はしていた私にまで情報が入ってこなかったと言うことは敵の規模は小さい筈だ! 王宮全体を攻略するには兵が足りない筈! 必ず穴はある! 戦える者を可能な限り集めよ! 生きてここを逃げるぞ!」
 
 ガルンはすぐさま動き始めた。
 ガルンの的確且つ迅速な指示で、多くの者が脱出した。
 非戦闘員を始め、戦いを繰り広げていた近衛兵、側近等を次々と助けて行き数を増やし、無事王宮を脱出した。
 騒ぎの収まらない王宮を外から眺め、ガルンは呟く。
 
「ゴルン……何故だ……」
 
 
 
「そうか。逃がしたか……」
「は……申し訳ありません……」
 
 ゴルンは伝令の言葉を聞き、落胆する。
 謀反は成功した。
 結果で言えばガルンを逃したが、それは全体で見れば些細な出来事に過ぎない。
 しかし、ゴルンからすれば、最大の失態であった。
 
(奴を仕留め、俺が上だと証明するつもりだった……しかし生き延びたか。まだだ……まだ足りない。政権を掌握した程度では奴を超えた証明にはならない! 必ず探し出し、お前を仕留めて俺が上だと証明してやる……)
 
 しかしゴルンはガルンを仕留めきれず、ガルンは大軍を引き連れて王国を脱出した。
 王家の証でもある王家の蛍石も失った。
 ドヴェルグの民は大いに惑った。
 ドヴェルグ王国の内乱は、まだ収まらない。
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