歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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魔王軍の危機

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「……ん? 何だ? 騒がしいな」
「おはようございます。ガルン王。何か良い夢でも見ていましたか? ……ですがいきなりで申し訳ありません。状況はあまり芳しくないかもしれません」
 
 ドヴェルグ領からファレスへと向かう道中。
 ドヴェルグを出立してから既に数日が経過していた。
 進軍を続けるドワーフ軍の馬車の中で状況は変化する。
 ファレスからドワーフ王国までは数日でたどり着いたが、帰りは大軍である。
 その数二万五千。
 第三、第五軍団その他親衛隊や離反した敵等で約二万五千になった。
 それだけの数でファレスへ帰るとなると、それなりの日数を要する。
 そんな状況で、事が起こってしまったようだ。
 
「ファレスにいる仲間達に『念話』が通じません。これまでこんな事はなかったのですが……」
「ふむ……いきなり全滅したとは考えにくいな。何かあればお主に知らせが行くだろう」
「と言うことは……何か妨害系のスキルね」
 
 話を聞いていたのか、馬車を動かしていたロームが話に加わる。
 
「世の中には妨害系のスキルが沢山あるわ。その性能は様々だけど……あなたの同級生にそんなスキル持ちはいなかった?」
「確か……」
 
 記憶を探る。
 確か、そんなスキルを得た男が居たはずだ。
 
「……加藤、か……加藤和也。奴のスキルはまさに『妨害陣』。効果はその名の通り範囲を指示出来るタイプの相手のスキルを妨害出来るスキルだな」
 
 陣、とつくタイプのスキルは範囲を指示出来るタイプのスキルで、基本的には上位のスキルと認識されている。
 勇者には『陣』を持つ者が多い。
 そして、今回は加藤和也。そいつの仕業だろう。
 そして、妨害スキルのみで行動はさせないはず。
 最低でももう一人敵がいるはずだ。
 
「無事であれば良いんだが……ガルン王。軍を少し急がせても?」
「うむ。魔王軍が全滅していては元も子もない。皆には辛い思いをさせるが、急がせるとしよう」
 
 
 
「まさか……ここまでとは……」
 
 要塞街ファレス。
 鉄壁の防御を誇るファレスが敵の突破を許した事は無かった。
 これまでの戦でも、三重の防壁の内、一番外側の第一防壁のみが仕事をしていた。
 そして、その第一防壁が、今まさに破られようとしていた。
 
「フィアナ殿。どうなさる?」
「……撤退します」
 
 一番内側、本丸ともいえる第三壁の内側にフィアナ達指揮官は居た。
 
「このままではいたずらに兵を失うばかりです。我々の兵力で広大な第一壁を守れば必ず兵は薄くなります。ならば門がまだ生きているうちに第二壁へと兵をひきます。必ず佐切様の援軍が来ます。それまで、何としてでも耐えます!」
 
 魔王軍、最大のピンチが訪れる。
 
「敵の数は二十万……何としてでも守り抜かなくちゃ」
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