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危機の始まり
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少し前。
ドヴェルグ王国へと赴いた佐切達を待つ間、フィアナ達は軍備を増強していたり、奴隷を解放したことによって新たに参入した兵達に戦い方を教えていたりした。
それに、ノージリアだけではなく周辺の小国までもが魔王軍に賛同し、兵がファレスに集まってきていた。
最終的にファレスに集まった兵の数は五万。
数で言えば文句無しだった。
「う~ん……」
「フィアナ殿? どうかしたか?」
「いえ、多数の国の連合軍となった訳ですが、統率が難しくて……」
頭を抱えるフィアナを見てジョバンニは声をかけた。
様々な国の様々な軍規がある。
それ故に統率が非常に難しくなっていた。
佐切ならば、とフィアナは考えた。
(……ダメダメ。私一人でも何とかなるって佐切様を安心させないと……弱気になるな……私!)
佐切がいつ帰って来るかわからない。
皆口にはしないが不安を抱えていた。
ここまで勝利に導いてきた立役者が不在というのは、不安になる物だった。
事実、賛同してくれた多国の将兵は佐切を一目見たいと言ってきた。
それほどまでに彼の名は知れ渡っているのだ。
「……何も焦る必要はありますまい。今すぐに敵が攻めてくるというわけでも無いでしょうし、一つ一つ纏めて行けば宜しいかと」
「そうですね……出来るだけ反発の無いように軍規を作りたいですね……私の言う事に従ってくれるかどうか……」
「ふむ……ならば『念話』で指示を受けたとすればどうですかな? さすれば従うものも多いでしょう」
「でも……それは佐切様の名声を使っているようで……私の実力では……」
あまり前向きになれていないフィアナを見てジョバンニはさらにアドバイスを加える。
「……佐切殿ならば、使えるものは何でも使え、感情に左右されず、最適の行動をとれ、と言うと思いますが」
「……ジョバンニさん……確かにそうですね! そうします!」
フィアナが元気を取り戻し、立ち上がった次の瞬間、執務室の扉が勢い良く開かれる。
「皆おはよう! カレン・ノージリアが来たわよ!」
「女王陛下! もう少し静かに……」
「もう……ザイルは硬いわね。昔みたいに名前で呼んでいいのに」
「いや今はそれどころでは……」
慌ただしい二人が執務室に入ってくる。
その来客に、さすがのフィアナもあわてる。
「か、カレン様!? ノージリアの女王陛下が何故ここに!?」
「何故って……ここは最前線。それが我がノージリアの街なんだから、たまには視察に来ないとね」
「ですが女王陛下……」
「……名前呼びー」
「……カレン様。最前線ですので、どうかお気をつけて」
「分かってるわ。所で佐切はまだなのね?」
「は、はい。少してこずっているようで……」
カレンは佐切の行動も掌握していた。
通常であれば報告を交わしていくところである。
カレンが来たこと以外、いつも通りの風景であぅた。
しかし、平凡な日常は破られる。
「で、伝令!」
「無礼者! 女王陛……カレン様の御前であるぞ!」
先程の忠告を思い出したザイルは訂正するせいで、いまいち締まらなかった。
が、カレンはすぐさま伝令の報告を優先した。
「良いわ。何があったの?」
「は……は! ザルノール軍がここファレスを目指して進軍中! その数二十万!」
その報告に、辺りは戦慄する。
「二十万!? そんな数……私の……ノージリアの全軍でも足りないわ!?」
「王国軍の、殆ど総数では無いか! 第六騎士団にいた時ですらその数の動員はなかったぞ!」
「対してこちらは五万……ファレス騎士団でカレン様だけでもどうか……」
しかしそんな状況の中、フィアナは既に策を練り始めていた。
(必ず……守り抜いて見せなくちゃ)
この日、魔王軍最大の危機が訪れる。
ドヴェルグ王国へと赴いた佐切達を待つ間、フィアナ達は軍備を増強していたり、奴隷を解放したことによって新たに参入した兵達に戦い方を教えていたりした。
それに、ノージリアだけではなく周辺の小国までもが魔王軍に賛同し、兵がファレスに集まってきていた。
最終的にファレスに集まった兵の数は五万。
数で言えば文句無しだった。
「う~ん……」
「フィアナ殿? どうかしたか?」
「いえ、多数の国の連合軍となった訳ですが、統率が難しくて……」
頭を抱えるフィアナを見てジョバンニは声をかけた。
様々な国の様々な軍規がある。
それ故に統率が非常に難しくなっていた。
佐切ならば、とフィアナは考えた。
(……ダメダメ。私一人でも何とかなるって佐切様を安心させないと……弱気になるな……私!)
佐切がいつ帰って来るかわからない。
皆口にはしないが不安を抱えていた。
ここまで勝利に導いてきた立役者が不在というのは、不安になる物だった。
事実、賛同してくれた多国の将兵は佐切を一目見たいと言ってきた。
それほどまでに彼の名は知れ渡っているのだ。
「……何も焦る必要はありますまい。今すぐに敵が攻めてくるというわけでも無いでしょうし、一つ一つ纏めて行けば宜しいかと」
「そうですね……出来るだけ反発の無いように軍規を作りたいですね……私の言う事に従ってくれるかどうか……」
「ふむ……ならば『念話』で指示を受けたとすればどうですかな? さすれば従うものも多いでしょう」
「でも……それは佐切様の名声を使っているようで……私の実力では……」
あまり前向きになれていないフィアナを見てジョバンニはさらにアドバイスを加える。
「……佐切殿ならば、使えるものは何でも使え、感情に左右されず、最適の行動をとれ、と言うと思いますが」
「……ジョバンニさん……確かにそうですね! そうします!」
フィアナが元気を取り戻し、立ち上がった次の瞬間、執務室の扉が勢い良く開かれる。
「皆おはよう! カレン・ノージリアが来たわよ!」
「女王陛下! もう少し静かに……」
「もう……ザイルは硬いわね。昔みたいに名前で呼んでいいのに」
「いや今はそれどころでは……」
慌ただしい二人が執務室に入ってくる。
その来客に、さすがのフィアナもあわてる。
「か、カレン様!? ノージリアの女王陛下が何故ここに!?」
「何故って……ここは最前線。それが我がノージリアの街なんだから、たまには視察に来ないとね」
「ですが女王陛下……」
「……名前呼びー」
「……カレン様。最前線ですので、どうかお気をつけて」
「分かってるわ。所で佐切はまだなのね?」
「は、はい。少してこずっているようで……」
カレンは佐切の行動も掌握していた。
通常であれば報告を交わしていくところである。
カレンが来たこと以外、いつも通りの風景であぅた。
しかし、平凡な日常は破られる。
「で、伝令!」
「無礼者! 女王陛……カレン様の御前であるぞ!」
先程の忠告を思い出したザイルは訂正するせいで、いまいち締まらなかった。
が、カレンはすぐさま伝令の報告を優先した。
「良いわ。何があったの?」
「は……は! ザルノール軍がここファレスを目指して進軍中! その数二十万!」
その報告に、辺りは戦慄する。
「二十万!? そんな数……私の……ノージリアの全軍でも足りないわ!?」
「王国軍の、殆ど総数では無いか! 第六騎士団にいた時ですらその数の動員はなかったぞ!」
「対してこちらは五万……ファレス騎士団でカレン様だけでもどうか……」
しかしそんな状況の中、フィアナは既に策を練り始めていた。
(必ず……守り抜いて見せなくちゃ)
この日、魔王軍最大の危機が訪れる。
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