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ファレス籠城戦 軍議
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「敵は二十万。対してこちらは五万。いかに籠城戦とは言え、この数の差では勝ち目はありませんな」
「そうですな……名高き軍師、佐切殿がおれば……あるいはあったやもしれぬが……」
「負け戦、か」
「乗る船を間違えたかのう……」
軍議の場に集まった様々な国の諸将は口々に文句を言う。
しかしその気持ちもフィアナには理解できた。
(私だって不安だ……佐切様には『念話』が通じないし……せめてサナンさんだけでもいてくれたら……でも、恐らくここにいる人達の中でまともに指揮できるのは私だけ……私が頑張らなくちゃ!)
地図の置かれた机を取り囲む将は皆落ち込んでいる。
勝ち目の無い戦だと思い込んでいる。
そして、フィアナ自身も自信をなくしてきていた。
だが思考は止めない。
(でも兵力差は歴然……五万と二十万。要塞を攻めるには三倍の兵力が必要と言うけど……それだとしても足りない。その差を埋めるのなら後二万……ううん、余裕を持たせるのならせめて二万五千は欲しい。けど、新たに兵力は確保できないし……)
数字的に見るだけでも明らかに詰みであった。
しかし、フィアナは諦めない。
「皆様。お集まり頂きありがとうございます」
将は皆フィアナの言葉に耳を傾ける。
もはや負け戦の雰囲気だが、魔王軍に与した彼等が相手に降伏する事は出来ない。
だが希望はある。
フィアナが佐切の弟子としてありとあらゆる戦略を教わったというのは周知の事実であった。
彼等は僅かな望みに希望を託した。
「この世界の戦はスキルの優劣で決まります。ですのでここまでの大軍を動員しての戦はこの世界の歴史には殆どありません。ですが、佐切様の世界には多く事例があります」
フィアナは佐切から多くの歴史の知識を授かっていた。
その知恵は、フィアナを助ける。
「大軍の欠点、それは大軍ゆえに油断していること、そして統率を取るのが難しいと言うことです。その点を突きます」
フィアナは地図を指しながら指示を出す。
「まず、敵がどういう動きをしてくるかはっきりとは分かりません。ですが予測はできます。敵から一番近い南門。そこから攻めてくることはまず想像がつきます」
フィアナは地図を指さす。
そこに、将の一人が口を挟む。
「ならば、南門に全軍を……」
「いえ、そのように単純に攻めてくるとは思えません。敵はわざわざカレン様がいる今を狙ってきました。私達が逃げることが出来る戦い方はしないでしょう。敵は包囲してくるかと。そして私の予測ですが、東西の門に集中して攻めてくるかと」
「南北は? 攻めてこないというのか?」
「はい。普通に考えれば全ての城門に五万ずつ分けると考えますが、それでは数的有利を捨てる事に繋がります。もし私達が全滅覚悟で全軍で討って出れば同数の戦になってしまいますから。ですので、南北の門には敵を逃さない為の抑えの兵……多くて三万程しか置かないでしょう」
「だとすれば、そこを先ほど言ったように討って出れば……」
「いえ、そこには恐らく敵の中での精鋭中の精鋭、優秀なスキル持ち等を多く配するかと。それに守りに入られたらいくら全軍で突撃し、勝てた所でこちらの損害が多くなってしまいます。それではこの先、ザルノール本国への侵攻等夢のまた夢です。なので、東西から来るであろう七万の敵に対処します」
「おぉ……」
フィアナの的確な推測に将からは感嘆の声が上がる。
そして、ジョバンニが話を進める。
「うむ……流石はフィアナ殿。佐切殿の弟子だな。すべてに道理が通っている。しかしそこからどうするというのだ? こちらの兵を均等に配しても数的不利は覆せないし、東西南北を留守にしては逆に攻められるぞ?」
「はい。南北に兵は置かず、旗だけ立てましょう。兵を配していると思わせるのです。東西の数的不利は兵の質でカバーします」
「質?」
「はい。片方は精鋭を集めて兵力を少なくし、もう片方は数で勝負します。」
フィアナはジョバンニとザイルを見る。
「西門はファレス騎士団、ジョバンニさんには魔王派に加わってもらって、西門で魔王派を指揮してもらいます。それと魔王軍の計一万五千で抑えます。東門は残る三万五千で抑えて下さい。時間を稼ぐだけで良いです。恐らく敵は城門を破壊可能な術……スキルか攻城兵器を投入してくるでしょう。可能な限り敵を寄せ付けず、長い時間、兵の損耗を抑えて戦って下さい」
「時間稼ぎか……何か策があるのか?」
フィアナはジョバンニの問いに少し考えてから頷く。
「はい……必勝……とは言えませんが、出来るだけのことはやってみせます」
「そうですな……名高き軍師、佐切殿がおれば……あるいはあったやもしれぬが……」
「負け戦、か」
「乗る船を間違えたかのう……」
軍議の場に集まった様々な国の諸将は口々に文句を言う。
しかしその気持ちもフィアナには理解できた。
(私だって不安だ……佐切様には『念話』が通じないし……せめてサナンさんだけでもいてくれたら……でも、恐らくここにいる人達の中でまともに指揮できるのは私だけ……私が頑張らなくちゃ!)
地図の置かれた机を取り囲む将は皆落ち込んでいる。
勝ち目の無い戦だと思い込んでいる。
そして、フィアナ自身も自信をなくしてきていた。
だが思考は止めない。
(でも兵力差は歴然……五万と二十万。要塞を攻めるには三倍の兵力が必要と言うけど……それだとしても足りない。その差を埋めるのなら後二万……ううん、余裕を持たせるのならせめて二万五千は欲しい。けど、新たに兵力は確保できないし……)
数字的に見るだけでも明らかに詰みであった。
しかし、フィアナは諦めない。
「皆様。お集まり頂きありがとうございます」
将は皆フィアナの言葉に耳を傾ける。
もはや負け戦の雰囲気だが、魔王軍に与した彼等が相手に降伏する事は出来ない。
だが希望はある。
フィアナが佐切の弟子としてありとあらゆる戦略を教わったというのは周知の事実であった。
彼等は僅かな望みに希望を託した。
「この世界の戦はスキルの優劣で決まります。ですのでここまでの大軍を動員しての戦はこの世界の歴史には殆どありません。ですが、佐切様の世界には多く事例があります」
フィアナは佐切から多くの歴史の知識を授かっていた。
その知恵は、フィアナを助ける。
「大軍の欠点、それは大軍ゆえに油断していること、そして統率を取るのが難しいと言うことです。その点を突きます」
フィアナは地図を指しながら指示を出す。
「まず、敵がどういう動きをしてくるかはっきりとは分かりません。ですが予測はできます。敵から一番近い南門。そこから攻めてくることはまず想像がつきます」
フィアナは地図を指さす。
そこに、将の一人が口を挟む。
「ならば、南門に全軍を……」
「いえ、そのように単純に攻めてくるとは思えません。敵はわざわざカレン様がいる今を狙ってきました。私達が逃げることが出来る戦い方はしないでしょう。敵は包囲してくるかと。そして私の予測ですが、東西の門に集中して攻めてくるかと」
「南北は? 攻めてこないというのか?」
「はい。普通に考えれば全ての城門に五万ずつ分けると考えますが、それでは数的有利を捨てる事に繋がります。もし私達が全滅覚悟で全軍で討って出れば同数の戦になってしまいますから。ですので、南北の門には敵を逃さない為の抑えの兵……多くて三万程しか置かないでしょう」
「だとすれば、そこを先ほど言ったように討って出れば……」
「いえ、そこには恐らく敵の中での精鋭中の精鋭、優秀なスキル持ち等を多く配するかと。それに守りに入られたらいくら全軍で突撃し、勝てた所でこちらの損害が多くなってしまいます。それではこの先、ザルノール本国への侵攻等夢のまた夢です。なので、東西から来るであろう七万の敵に対処します」
「おぉ……」
フィアナの的確な推測に将からは感嘆の声が上がる。
そして、ジョバンニが話を進める。
「うむ……流石はフィアナ殿。佐切殿の弟子だな。すべてに道理が通っている。しかしそこからどうするというのだ? こちらの兵を均等に配しても数的不利は覆せないし、東西南北を留守にしては逆に攻められるぞ?」
「はい。南北に兵は置かず、旗だけ立てましょう。兵を配していると思わせるのです。東西の数的不利は兵の質でカバーします」
「質?」
「はい。片方は精鋭を集めて兵力を少なくし、もう片方は数で勝負します。」
フィアナはジョバンニとザイルを見る。
「西門はファレス騎士団、ジョバンニさんには魔王派に加わってもらって、西門で魔王派を指揮してもらいます。それと魔王軍の計一万五千で抑えます。東門は残る三万五千で抑えて下さい。時間を稼ぐだけで良いです。恐らく敵は城門を破壊可能な術……スキルか攻城兵器を投入してくるでしょう。可能な限り敵を寄せ付けず、長い時間、兵の損耗を抑えて戦って下さい」
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