歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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本丸攻防戦 前夜

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「ついに来ましたね……」
「あぁ。まさか第二壁に駆け込んだ途端に本丸まで走れと言われるとは思ってなかったけどな。こちとら病み上がりだぞ?」
「病み上がりの状態で戦に出たのは何処の誰ですか?」
「はい。俺です」
 
 等と下らないやり取りをしているが、目の前には本丸を取り囲む大軍。
 幸いにもこちらの損害は非常に少なく済んだが、それは向こうも同じ。
 本丸で決着をつけられるかどうかにかかっている。
 
「で? 策は? あるんだろ?」
「勿論です。これまでは防衛しなければならない面積が広すぎました。そのせいで手薄な地点に兵を送るのも時間がかかって援軍を送るのは不可能でした。ですが、この規模なら五万の兵で充分に守れます」
「だが、包囲する敵も同じ。取り囲む敵の壁は分厚くなってるな」
「そこは、時間を稼いだおかげでなんとかなりそうです」
「フィアナ殿!」

 すると、ジョバンニが駆け寄ってくる。
 
「準備は万端整っております。後は指示さえあれば」
「ありがとうございます。ここまでの支度、ありがとうございました。ジョバンニさんは前線に戻って指揮をお願いします」
「分かった!」
 
 どうやらフィアナの策の準備をジョバンニが手伝っていたようだ。
 ジョバンニはそのまま走り去っていく。
 
「私は指揮所で指揮を。サナンさんは南門。ジョバンニさんには北門。ザイルさんには西、キサラさんには東門を担当してもらいます。キサラさんには先の戦の結果を鑑みて、魔族と魔族に理解のある部隊をつけました。各方面、それぞれ一万。遊撃隊一万。という編成ですね」
「対する敵は全方面に均等に配してるな。それぞれ五万ずつ。か」
 
 数で見れば相変わらず劣勢。
 しかし、フィアナにはそれを覆す策がある。
 そして、精鋭が揃っている。
 フィアナ達が取れる策は全てやったのだ。
 
「またスキルも使えなくなっているようですし……兵の質が物を言います。後は、相手の行動次第ですね……」
 
 
 
「ふむ……敵の思惑通りに進んでしまったか」
 
 ザルノール軍も、万全の態勢が整っていた。
 第二壁を超えるのに当たり、斥候を出している間に準備を整えていたのだ。
 
「加藤殿。引き続きスキルの妨害を頼む」
「良いのか? 第一壁を攻略した時みたいに短時間だけスキルを解除しても良いが……」
「いや、可能な限りあの男に戦況を伝えられたくない。第一壁ではごく短時間だけ解除した。あの時間では戦況を伝えられる程ではない筈だ」
「……そこまで警戒するほどじゃないと思うけどな……まぁ、俺は指示通りにするだけだ。解除したくなったらいつでも言ってくれ」
 
 加藤はそのまま去っていく。
 加藤のスキル『妨害陣』は敵味方関係なくスキルを封じる。
 それ故に、味方もスキルを使えなくなっていた。
 
「さて……決着をつけるとするか。佐切殿、お主の活躍の場は与えぬぞ」
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