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核実験暴発事件

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「一昨年、アメリカで行われた新型核兵器の未臨界核実験が失敗した事件を知っていますか?」
「あぁ、あれは衝撃的だったな。何でも新型というだけあって予期せぬエラーが発生し、暴発したんだとか。」
「あの事件は俺も良く覚えているが、知っている情報はスミスが言った事くらいだな。その事件がどうかしたのか?」
 
 日本には非核三原則という物がある。
 日本に核が持ち込まれることは無いので、彼女がそれに関わっている訳が無い。
 
「政府の発表では被害者は居ない、という発表でしたがそうではありません。私の妹、まなが実験に参加していたんです。」
「ちょっと待て。お前の妹ということは日本人なんだろう?何故アメリカの核実験に参加している?」
 
 一瞬アメリカの血が入っているのではとも思ったが顔立ちは典型的な日本人そのものだ。
 混血には見えない。
 
「私の妹は核抑止による平和を信じ、アメリカの国籍を取ってアメリカ人になったんです。妹は更に有効な核を作るため、軍に協力して核を開発していました。」
「そして、暴発に巻き込まれた……。」
 
 そんな事が起こりうるのだろうか。
 非核三原則はアメリカも承知の上だろう。
 それ程天才だったのか。
 
「……成る程、日本人が参加していた事を隠す為、犠牲者が居ないと発表したのか。」
「はい。スミスさんの言う通りです。私はそれを聞いて何も出来ませんでした……。」
「……しかし、お前はなんでそれを知ることが出来たんだ?」
 
 犠牲者は居ないと発表され、秘匿されていたというのにどうやって知ることが出来たのか。
 
「私は突如として行方不明となった妹を探すためにありとあらゆる手を使って妹を探しました。そして、核実験の犠牲になった事を知ったのです。」
 
 しかし、彼女一人では到底不可能だろう。
 恐らく、助力した人物がいるはずだ。
 
「ですが、手助けしてくれた探偵も急に行方不明になってしまいました。そして、その探偵から後日これが届きました。」
 
 すると、懐から一枚の手紙を取り出す。
 その差出人の名前は見覚えがあった。
 
「そうか、こいつが……。」
「カイル、知ってるのか?」
「ああ、昔色々と世話になった奴だ。中身を見ても?」
「どうぞ。」
 
 彼女の許可を取り、手紙の中身を読む。
 内容は、これを読んでいる頃にはもう自分は生きては居ないだろうということと、例の妹の事の顛末が書かれており、最後に俺達の紹介文がのっていた。
 そして、証拠や俺達に関する情報が同封されていた。
 
「前々から君の研究の手助けになるかもしれない人達がいると言っていたので、すぐにその事だと気付きました。彼は恐らくCIAに消されたんです。その紹介文も保護してもらえということなのでしょう。」
 
 あいつの最後の頼みというのならば引き受けない訳には行かん。
 それに、その実験も大変気になるものだしな。
 
「改めて俺はカイル。こいつはスミスだ。よろしく頼む。」
「私は柏木れんと言います。どうか宜しくお願い致します。」
 
 俺は握手を交わす。
 これで契約は成立だ。
 実験とやらが難しいものでなければ良いのだが。
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